更新日: 2021.09.02 その他暮らし

10代から90代が学ぶ「夜間中学」ってどんなところ?

執筆者 : 柴沼直美

10代から90代が学ぶ「夜間中学」ってどんなところ?
かつて夜間中学といえば、終戦後の混乱のなか中学校に通えなかった人に対する学びの機会を提供する場、というイメージがありました。
 
しかし、戦後70年あまりがたった2021年では、本国で義務教育を終えずに来日した外国籍の人や、学業期にけがや病気、不登校などで義務教育を受けられなかった人たちなど、さまざまな事情をもった人のための「学びの場」となっています。
 
この記事では、今の「夜間中学」について詳しく見ていきたいと思います。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

全国に36カ所の夜間中学で10~90代の人が学ぶ

2021年4月現在で、12都府県に36カ所設置されている夜間中学は、昼間は通常の公立中学の校舎を使って実施されています。義務教育未終了者は2015年12月現在で、少なくとも12万人以上いるといわれています。
 
かつてのように、就学の時期に戦争で勉強の機会を失ってしまった、という理由だけでなく、さまざまな理由で実質的に十分な教育を受けることができないまま卒業した人や、外国籍の人などにも義務教育未修了の学齢超過者等の就学機会の確保の場として重要な役割を果たしています。
 
2017年7月現在で、夜間中学で学ぶ1687人を年齢別で見ると、60歳以上の生徒が456人(27.0%)、15~19歳の生徒が342人(20.3%)となっています。卒業後の進路は「高等学校への進学」約45%で、なかには大学等の高等教育機関に進学する人もいます。
 
また、中学校卒業資格があれば、職業訓練校に入って就職に役立つ知識や技術を学んだり、調理師や介護福祉士などの国家資格の取得を目指したりすることも可能となります。
 

授業は週5日、17:00~21:00が原則

授業は週5日、17:00~21:00で昼間の公立中学と同じ科目を勉強します。教員免許を持った公立中学の教員が担当します。18:00頃には給食の時間も設けられ、先生と生徒が家族のような打ち解けた雰囲気の中、各生徒の理解度に合わせてきめ細やかな授業が行われています。
 
通常の教科書を使用しますが、場合によっては補助教材を使うなど、小学校からの学び直しの場合など状況に応じて柔軟に対応してもらえます。
 

入学の時期や受け入れ人数など詳細は、近くの行政機関に問い合わせ

新入生の入学時期や人数は、学校ごとに異なりますが、年度の途中から入学できる場合もあります。学校説明会や授業見学、体験入学などを行っている学校もあります。地元市区町村の役所に問い合わせましょう。
 

「学びたい」という気持ちさえあれば大丈夫

場合によっては、中学校ではなく小学校の学習もきちんとこなす状況になかったという生徒もいます。教員が各生徒の状況に応じて指導していくので「学びたい」という気持ちさえあれば大丈夫です。
 
在学のきっかけになった声をきくと、「役所で自分の住所や名前を記入することもままならない」という人や「まともに勉強したという経験がないので、もう一度しっかり学び直したい」という人、「海外から来日したけれど、中学卒業程度の勉強を終えて仕事に生かしたい」という人など、さまざまです。
 
また卒業後は多くの生徒が高等学校に進学しています。勉強するのに、「遅い」はありません。「学びたい」と思った今が始め時です。一歩前に踏み出してみましょう。
 
出典
文部科学省「夜間中学の設置促進・充実について」
文部科学省「夜間中学のご案内 あなたも通ってみませんか?」
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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