更新日: 2021.09.17 その他暮らし

自然災害の被災時には、復旧への行動を早く

執筆者 : 西村和敏

自然災害の被災時には、復旧への行動を早く
毎年のように全国各地で「数十年に一度の降水量を記録」などと報道されています。土砂崩れや堤防の決壊で住まいが流されるような災害が頻発しています。南海トラフ巨大地震等の地震・津波への警戒も怠ることはできません。
 
いざ、自分たちが住む地域が自然災害で被害を受けた場合に金銭的な支えとなるのが損害保険金です。加入しているだけではなく保険金の請求を早く行い保険金を受け取り、復旧への行動を早く行うことが重要です。
西村和敏

執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)

ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士

くらしとお金のFP相談センター代表 
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。

2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。

全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。

東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。

自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。

2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。

学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。

保険金は立ち直りの命綱

私は2011年の東日本大震災時に宮城県仙台市で被災しましたが、自分自身や家族の被害は軽微で沿岸部の津波被災地に通い被災者のサポートに努めていました。
 
さまざまな被災者の被害実態を知るにつれ、被災者が家族の命・住まい・仕事(生きがい)・お金これら4つのほとんどを失うと、立ち直りがとても難しくなると感じました。予期せぬ自然災害で失われた家族の命や住まいは元に戻せません。
 
せめてお金だけでも残して、生活再建のきっかけになるように火災保険・地震保険への加入の大切さを痛感しました。
 

悲しみの中でも保険金の請求は速やかに

災害発生直後は、被災したショックで何も手につかない場合はもちろん、行方不明の家族の捜索、がれきでいっぱいの自宅の片づけ、水や食糧の確保など目の前のことで精いっぱいになります。
 
しかし、火災保険・地震保険に加入しているならすぐに保険金の請求を行うことがとても大切です。東日本大震災時はそもそも電話がつながらない状況が何日も続きましたが、電話がつながるのであればすぐに事故の報告・保険金の請求を保険会社にすべきです。
 
きちんとした保険会社なら被災状況の記録のために、自宅を片づけたり壁の汚れを掃除したりする前に写真を撮って記録を残すようにアドバイスをしてくれます。
 
被災者から事故の報告・保険金の請求があれば、保険会社は実際の被害状況の確認・調査のための手配を行います。保険会社もスムーズに保険金を支払うために早く手配をしようとしますが、調査のための人員には限りがあります。請求が後になればなるほど、被害状況の確認を行う順番が後になり、保険金の支払いが遅くなってしまいます。
 
災害の規模によっては、請求自体は早く行っても、被災地まで行く道路が復旧していないため、道路が復旧している地域を優先して調査が後回しになるようなこともあり得ますが、まず速やかに請求をすることで少しでも保険金の支払いが早くなります。
 

復旧への行動を早く

保険金の請求をして復旧資金のめどが立ったら、復旧への行動は「早い者勝ち」です。大勢いる被災者同士の「早い者勝ち」というのはとても心苦しいところですが、ありのままお伝えします。
 
住まいが全壊した被災者が別の場所に中古戸建や土地を購入する場合、条件の良い物件は早く決まってしまいます。大規模な災害であれば時間がたつと一時的に復旧工事に使う材料や設備が品不足で高騰してしまい復旧費用が高くなります。
 
また、被災地の近くで復旧工事を依頼できる業者の数は限られています。個人の自宅よりも公の施設や道路やライフラインなど優先すべき工事はたくさんあり、新規の依頼を断らなくてはならなくなります。
 
復旧への行動が遅くなってしまい、近くで復旧工事を頼める業者が見つからないからといって、よく分からない業者に依頼するのも怖いことです。一日でも早く元の家で暮らしたいという気持ちの被災者をターゲットにした悪質な工事業者が遠く離れた土地から被災地にやって来ているかもしれません。
 

500万円未満の工事は建設業許可が無くとも受注できる

建設業法第3条1項・建設業法施行令第1条の2から、軽微な建設工事である500万円未満の工事は建設業許可が無い業者が受注しても違法ではありません。
 
極端な話、何の経験が無い個人が突然個人事業主として工事を受注することもできてしまいます。建設業許可が無い業者=悪質業者とは限りませんが、何の実績もないのに突然被災地に現れた工事業者に依頼するには十分注意をしなければいけません。
 
悪質な業者はもちろんのこと、経験不足のために工事内容がずさんで余震やその後のちょっとした災害で再び被害に遭ってしまうかもしれません。せっかく受け取った保険金や大事な貯金が無駄になってしまうのは、とてもつらいことです。
 

冷静な判断に基づいて、復旧への一歩を早くする

東日本大震災のような広域で大規模な災害は頻繁には起こらないかもしれません。
 
しかし、大雨に関連する災害は日本全国の皆さんの目の前に迫っているかもしれません。ぜひ、災害時にはすぐに復旧のための行動を起こすことが大切であることを知っておいてください。
 
また、自宅・被災地の近くで復旧のアドバイスやサポートをしてくれる人との付き合いがあるとより安心です。被災者が混乱している状況でも冷静な判断をしてくれて、悪質業者から大切な資産や保険金を守り、復旧への確実な一歩を踏み出す力になります。
 
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
 

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