更新日: 2021.10.18 その他暮らし

国が認める救済制度で借金を減額できるって聞いたんですが本当ですか?

国が認める救済制度で借金を減額できるって聞いたんですが本当ですか?
新型コロナウイルスの影響で経済的に苦しい状況となり、借金の返済が困難となっているケースは少なくありません。そんなときに最優先されるべきなのは、借入先の金融機関などに相談することです。
 
そして、このような状況で避けるべきことは、借金返済のために新たに別の貸金業者などから借金を重ねてしまうことです。場合によっては多重返済状態となって、さらに返済が困難となってしまうことも十分にあり得ます。
 
ここでは、どうしても借金の返済が困難となった場合に国が認める救済制度である「債務整理」について、その概要を確認してみたいと思います。
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

延滞する前に、まずは借入先に相談

借金の返済を延滞し、そのままの状態を続けていると、さまざまな悪影響が発生します。
 
まず大事なのは、返済を延滞する前に借入先の金融機関などに相談することです。新型コロナウイルスの影響を考慮し、金融庁も各金融機関に対して、借入条件の変更などの申し入れに関しては柔軟な対応を求めるとの要請を出しています。
 
例えば、住宅ローンについて住宅金融支援機構は「今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりご返済が困難になっているお客さまへ」として、返済特例(返済期間の延長)、中ゆとり(一定期間、返済額を軽減)、ボーナス返済の見直しの3つの返済方法の変更メニューを提示しています。
 
さらに、機構団信制度の特約料の支払いについても払込期限の猶予措置(最長9ヶ月間)が用意されています。また、日本学生支援機構では、家計が急変した方への支援として、奨学金の返還について「減額返還」や「返還期限猶予」などの制度を利用することができます。
 

それでも解決しない場合は債務整理の選択も

どうしても借金の返済が困難な場合に、債務を整理して借金を減らすことができる「債務整理」という国が認める救済制度があります。
 
その手続きには、(1)特定調停手続、(2)再生手続、(3)破産手続の3つがありますが、いずれも裁判所を利用する手続きであるため、通常は弁護士や司法書士に依頼して進めることになります。
 
ここでは、それぞれの概要について確認しておきたいと思います。
 

特定調停手続とは?

裁判官と専門的な知識・経験がある民事調停委員(調停委員会)の仲介で、債務者(借金している方)と債権者(借金の借入先)が借金の減免や返済方法などについて話し合い、将来の返済計画を決める手続きを「特定調停手続」といいます。
 
当事者同士の話し合いによる債務整理手続であることから、簡易かつ速やかに柔軟な解決を図れます。話し合いによって合意に達し、調停成立となった場合、債務者はその内容に従って借金を返済していきます。
 
逆に合意できない場合や調停が成立する見込みがない場合、裁判所は民事調停委員の意見から当事者の公平性を考慮し、適切と思われる返済方法を決定できます(調停に代わる決定)。
 
この決定に対して当事者から異議がない場合は、決定した内容で確定し、債務者はそれに従って借金を返済することになります。特定調停手続を採用する目安としては、借金総額の元本を3~5年程度で完済できるケースが想定されます。
 

再生手続とは?

債務者の借金の額を確定した上で、今後の借金の支払計画(再生計画)を定め、返済を行いながら事業や生活の再建を図る手続きを「再生手続」といいます。
 
再生計画が裁判所で認可決定されると、借金の返済が一部免除されるなど、借金を大幅に減額することができます。
 
個人の再生手続には、自営業やフリーランス、歩合制の仕事のように収入に変動がある人が対象の「小規模個人再生手続」と、会社員など変動が少ない安定した収入がある人を対象とする「給与所得者等再生手続」の2種類があります。
 
また、住宅ローンに抵当権が設定されている場合に、住宅を手放すことなく再建を図ることができるように特則が設けられており、その条件を含めた再生計画が認められると、住宅を手放さずに借金の返済をしていくことができます。
 

破産手続とは?

全ての財産を清算した上で借金の支払義務を免除し、借金をゼロにするのが「破産手続」です。
 
借金の支払義務を免除することを免責といいますが、浪費やギャンブルによる多額の借金であったり、裁判所などの調査に協力しない場合には、免責不許可となるケースがあります。
 
破産手続の開始時に債務者が所有している財産は、換価の対象として債権者への配当に充てられますが、手続開始後も債務者が生活を継続できるように一定の財産(自由財産)については換価の対象外となります。
 

まとめ

債務整理を行う場合には、弁護士などの専門家に相談した上で、その後のさまざまなデメリット(影響)について十分に理解しておく必要があります。
 
例えば、信用情報に事故情報が登録されるため、一定期間は新たな借り入れやクレジットカードの作成ができないこと、再生や破産の場合には官報に住所や氏名が掲載されること、一時的に職業規制や資格制限を受ける場合があること、高価な資産を清算のために手放す場合があることなど、多くのデメリットが挙げられます。
 
また、裁判所への手続費用や弁護士などへの報酬も考慮しなくてはなりません。
 
出典
法務省 新型コロナウイルス感染症の影響により借金等の返済が困難となった方へ
住宅金融支援機構 今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりご返済が困難になっているお客さまへ
日本学生支援機構 返還が難しくなった場合
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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