借金が返せない!……でも、マイホームは手放したくない。そんな時の解決策は?
配信日: 2021.10.19
そのため、分割払いを続けるのが難しければ、自己破産を検討することになります。その場合には返済から解放されるものの、マイホームを手放さなくてはなりません。
負債を返すことができない場合、他に選択肢はあるのでしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
個人再生
個人再生とは、自己破産などと同じく裁判所で手続きを行います。自己破産と異なるのは、負債がゼロになるわけでないことと、マイホームを残すことができるという点です。
また、自己破産に比べると、個人再生を利用できる人は限られています。では、どのように限られているのでしょうか?
裁判所に個人再生の申し立てができるのは?
個人再生には「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の2種類があります。
小規模個人再生手続の申し立てができるのは、個人商店主など小規模な事業を営んでいる方が対象です。住宅ローンを除いた負債の総額が5000万円以下で、将来にわたり継続して収入を得る見込みのある方です。
一方で、給与所得者等再生手続はいわゆる会社員が対象で、住宅ローンを除いた負債の総額が5000万円以下、また将来にわたり継続して収入を得る見込みがあり、その収入が給料で金額が安定していることです。
つまり、個人再生の申し立てができる人は、零細企業の社長か個人事業主、そして会社員のいずれかに限られていて、いわゆる非正規雇用(パートやアルバイト、そして派遣社員)などは対象外です。
例えば、「住宅ローンを組んだ時は正社員だったけれど退職し、現在は派遣社員で働いているため、住宅ローンの返済が厳しい」という方は、個人再生の申し立ては難しいでしょう。
個人再生は、負債をどの程度減らすことができるのか?
では、個人再生では、負債をどの程度減らすことができるのでしょうか? 先述のとおり、負債をゼロにはできません。また、養育費や滞納している税金なども、個人再生における負債には含まれず、減らすことはできません。
まず、小規模個人再生手続の場合、住宅ローンを除いた負債の額に応じて、以下が返済額の目安となりますが、保有している財産の状況によっても変わってきます。
■100万円未満=負債の額がそのまま返済額になる
■100万円以上500万円以下=100万円
■500万円を超え1500万円以下=負債総額の5分の1の額
■1500万円を超え3000万円以下=300万円
■3000万円を超え5000万円以下=総額の10分の1の額
では、続いて給与所得者等再生手続の場合の返済額です。
上述の「小規模個人再生手続での返済額」と「ご自身の可処分所得(収入から税金・社会保険料と最低限の生活費を差し引いた額)×2年分」を比べて、どちらか多い金額が返済額となります。
個人再生の手続き後、返済期間は?
個人再生の手続きを行った後の返済期間は、原則3年間です。
例えば、負債の総額が5000万円の場合、個人再生の手続き後の負債の額は10分の1の500万円です。この500万円を3年かけて返済するとなると、返済額は毎月13万8888円が目安となります。人によっては、これに別途住宅ローンが加わります。
個人再生の手続きにおいて、住宅ローンはどうなるのか?
先述のとおり、個人再生の手続きを行う場合、その負債の額に住宅ローンは含まれませんので、個人再生では住宅ローンの残債を減らすことはできません。
小規模個人再生手続、または給与所得者等再生手続の申し立ての際に、住宅ローンについての特則を付け加えることで、マイホームを手放さなくてすみます。
住宅ローンについての特則を付け加える場合、個人再生の申し立ての前に、銀行など住宅ローンの債権者に相談しておかなくてはなりません。
個人再生の申し立てで、裁判所に払う費用
個人再生を裁判所に申し立てる場合、裁判所に費用を払います。弁護士に個人再生の申し立てを依頼する場合、裁判所に払う費用は3万円程度です。しかし、弁護士に依頼せず、自ら個人再生の申し立てを行う場合は21万5000円程度となります。
弁護士に申し立てを依頼しない場合、裁判所は個人再生委員を選任します。つまり個人再生委員の選任の有無が、費用の違いになります。
まとめに代えて
個人再生の申し立て・手続きが始まると、債権と財産をそれぞれ調査し、調査に基づき再生計画を作成し、債権者に意見を聞きます。弁護士に依頼しない場合は、これらすべてを自ら行わなくてはなりません。裁判所で再生計画が認可されれば、その後3年にわたり返済します。
個人再生の申し立ては、個人情報機関いわゆるブラックリストに載ります。また官報にも載ります。マイホームを手放さなくてすむというメリットがあるかもしれませんが、制度を正しく理解したうえで慎重に検討する必要があります。
個人再生・自己破産・任意整理、いずれもメリット・デメリットを比較したうえで、手続きを選んだほうがよいでしょう。いずれの選択肢も「一時」のことではなく、数年におよぶことなのですから。
出典
裁判所 仙台地方・家庭裁判所「個人再生手続利用にあたって」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役