更新日: 2021.10.20 子育て

学ぶ意欲のある子どもを支える!奨学金制度とは?

執筆者 : 高畑智子

学ぶ意欲のある子どもを支える!奨学金制度とは?
親が生まれてくる子どもを選ぶことができないように、子どもも生まれてくる家庭を選ぶことはできません。子どもの数が減っているにもかかわらず、虐待されて保護される子どもや貧困により満足に食べることができず、望む教育が受けられない子どももいます。一方では、“お受験”で毎月何十万もの教育資金を払う家庭もあります。
 
家庭環境は人・家庭により異なり、教育資金の考え方も千差万別です。教育の環境もまた、人・世帯によってまったく違ったものになります。貧困などにより満足に教育が受けられない、子どもが望んでいる教育を諦めざるをえない……そのようなことにならないように、国は支援制度を用意しています。また、奨学金という選択肢もあります。
 
今回は、学歴と生涯賃金の関係性がわかるデータを参考に経済的側面からの教育の重要性を考えるとともに、奨学金について考えてみましょう。
高畑智子

執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者

学歴と生涯賃金

学歴によって生涯賃金が変わるというデータがあります。
 
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況」の学歴別にみた賃金(※1)をみると、男性では、大学・大学院卒が400.5千円、高専・短大卒が314.9千円、高校卒が292.9千円となっています。女性では、大学・大学院卒が296.4千円、高専・短大卒が260.6千円(同0.9%増)、高校卒 が214.6千円となっています。
 
以下の学歴別に賃金カーブをみると、男女いずれも大学・大学院卒の賃金カーブの傾きが大きくなっており、男性は女性に比べてその傾向が大きくなっています。
 

 
高学歴=生涯賃金が増える、とは一概にはいえません。生涯賃金はその人の働き方や働く環境などにより大きく変わるからです。ただし、あくまでこのデータからは、日本の社会は高学歴のほうが生涯賃金を比べると多くなる可能性があることを示しています。
 
しかし、貧困世帯などにおいては、日常的に食べることが難しい状況にあったり、勉強よりも家賃や食品などの生活必需品が優先されたりして、高校や大学などに入学できず、教育の機会を逃してしまう子どもがいるのも事実です。
 
学ぶ意欲があるにもかかわらず、生まれ育った環境により教育の格差が生まれてしまうことは、あってはならないことです。貧困などによって望む教育が受けられない子どものために、国はあらゆる支援策を用意しています。
 
年に3回、児童手当(※2)が支給されるものの、これは子どもの適切な養育環境の維持を目的として支給されるため、それだけでは教育資金が足らないということもあるでしょう。悩んだらまず、お住まいの市・区役所などに相談してください。対象となる要件にあてはまれば、さまざまな支援を受けることができるかもしれません。
 
また、教育資金を用意する方法として奨学金という選択肢もあります。以下で詳しく見てみましょう。
 

奨学金制度

奨学金は学校が独自で制定しているものと、公的な奨学金があります。学校が制定しているものは成績優秀者を対象にしていることが多く、返済義務がない場合も多いため、もし奨学金の利用を考えるなら、まずそちらを確認していただくのがよいと思います。
 
公的な奨学金は、日本学生支援機構が実施している奨学金制度です。この奨学金制度は、経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度です。世帯収入の基準を満たし、学ぶ意欲があれば、成績だけで判断されることなく、支援を受けることができます。
 
奨学金には、「貸与型」の奨学金と「給付型」の奨学金があります。また、「貸与型」は利子の付かない第一種奨学金と、利子の付く第二種奨学金があります。貸与型は将来返済義務があるため、社会人になってからの返済のことも考えて借りるようにしましょう。
 
子どもの貧困や教育の格差は、親・家庭だけではなく、社会全体の問題として取り組むべきことです。貧困世帯などの学ぶ意欲のある子どもを支える支援策は、現在ある制度だけではなく新たに施行される可能性もありますので、最新情報を確認することもお勧めします。
 
出典
(※1)
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況/(3)学歴別にみた賃金」
(※2)
児童手当とは……
<対象>
中学卒業まで(15歳の誕生日後は最初の3月31日まで)の児童を養育している方
<支給額>
3歳未満:一律1万5000円
3歳以上小学生修了前:1万円(第3子以降は1万5000円)
中学生:一律1万円
(*)児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5000円を支給
(*)「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育をしている児童のうち3番目以降のこと
 
以上、内閣府「児童手当制度のご案内」より引用
内閣府「国における子供の貧困対策の取組について」(平成29年3月2日)
 
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者

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