育休中はいつまで厚生年金の支払いが免除される?
配信日: 2021.10.22
そこで今回は、育児休業を取得している間の社会保険料(健康保険と厚生年金保険)について、その取り扱いを見ていくことにしましょう。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
そもそも育児休業の制度ってどのような制度ですか
厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について(令和元年7月3日)」(※1)によると、平成30(2018)年度において育児休業を取得している人の割合は、女性は82.2%、男性は6.16%でした。
この割合についてさまざまな意見があると思いますが、まずはこの制度について簡単に触れておきます。
(1)制度について
育児休業はそもそもいつまで取得できるのかについてはご存じの人も多いかもしれませんが、原則子が1歳まで(一定の条件のもと最長2歳まで)となっています。
(2)対象者
・日雇いは認められません
・雇用保険に加入していること
・1年以上継続雇用されていること
・子が1歳半になるまで、労働契約期間が満了や不更新にならないこと
・労使協定の育児休業の対象外となる条件に該当しないこと
(3)育児休業給付
原則休業開始時の賃金の50%となっています。休業開始後6ヶ月間は67%です。
育児休業中に経済的に助けてもらえること
先ほど述べた「育児休業給付」は生活や家計を助けてもらえることの一つですが、ほかにも以下のような措置があります。
・育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除
次節で詳しく説明します。
・育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の特例
育児休業終了後に育児などが理由で給与が低下した場合、標準報酬月額を低下後の額に改定する。
・3歳未満の子を養育する期間についての年金計算額特例
3歳未満の子を養育する期間中の給与が養育する前の給与より低下した場合は、3歳未満の子を養育している間は、その養育期間前の給与水準と同じであるとする。
育児休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の免除
育児休業期間中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、事業主からの届出により、事業主負担分、被保険者(本人)負担分が免除されます。
免除期間は育児休業を開始した日の属する月から育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までです(例:育児休業期間4月15日~9月30日であれば、4月~9月分の保険料が免除されます)。(※2)(※3)
(1)
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)期間について、被保険者は、事業主へ申出を行い、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
(2)
申出により、健康保険・厚生年金保険の保険料は被保険者・事業主両方の負担が免除されます。
(3)
この申出は、被保険者が次のア~エの育児休業等を取得する度に、事業主が手続きします。また、この申出は、現に、申出に係る休業をしている間に行わなければなりません。
ア.1歳に満たない子を養育するための育児休業
イ.保育所待機等特別な事情がある場合の1歳6カ月に達する日までの育児休業
ウ.保育所待機等特別な事情がある場合の2歳に達する日までの育児休業
エ.1歳(上記イの場合は1歳6ヶカ月、上記ウの場合は2歳)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業
(4)
保険料負担が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。免除期間中も被保険者(本人)資格に変更はなく、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられます。
(引用:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業を取得・延長したときの手続き」)
事業主との打ち合わせが鍵となる
育児休暇は、勤務先の制度が不十分だったり休みが取りづらい状況だったり、と普及しているとは言い切れません。しかしながら、徐々に広がりつつある制度であり、今後もさまざまな改定をされながら広がっていく制度であってほしいと考えます。
そのため、常に最新の情報を確認し、いざ使うときに正しく手続きできるようにしておきたいものです。困ったときは近くの日本年金機構事務所や社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナーなど専門家に相談してください。
出典
(※1)厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」
(※2)日本年金機構「育児休業中の厚生年金保険の保険料はどうなるのですか。」
(※3)日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業を取得・延長したときの手続き」
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士