手術で高額な医療費が…「高額療養費制度」で自己負担はどれくらい抑えられる?
配信日: 2021.10.26
日本には、医療制度が確立されており、筆者はその医療制度のおかげで負担金額もある程度抑えられて手術を受けることができました。
日本は国民皆保険制度が導入されているため、最大でも自己負担率は3割です。しかし、3割負担でも月額で支払総額を見た場合、医療への支払いが大きくなることがあります。それを救済するために高額療養費制度があります。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
高額療養費制度
「高額療養費制度」は医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担をさらに軽減する仕組みも設けられています。
以前は、入院した場合の診療において事前に「認定証」を提示すれば、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要はありませんでしたが、外来診療では、窓口負担をそのまま支払う必要がありました。現在は、その外来診療においても「認定証」などを提示すれば、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要はなくなりました。
この取り扱いを受けるには、事前に「認定証」を入手する必要があります。
自己負担額と自己負担限度額
自己負担額は世帯で合算できます。これを世帯合算といいます。世帯で複数の方が同じ月に病気やけがをして医療機関で受診した場合や、1人が複数の医療機関で受診したり、1つの医療機関で入院と外来で受診したりした場合は、自己負担額は世帯で合算することができ、その合算した額が自己負担限度額を超えた場合は、超えた額が払い戻されます。
ここでいう世帯とは、協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者です。70歳未満か70歳以上かで計算方法が変わります。70歳未満の方の合算できる自己負担額は、2万1000円以上のものに限られます。70歳以上の方は自己負担額をすべて合算できます。
自己負担額の基準は医療機関ごとに計算します。同じ医療機関であっても、医科入院、医科外来、歯科入院、歯科外来に分けて計算します。医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合は、薬局で支払った自己負担額を、処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。
自己負担額を合算した後、自己限度額により計算された金額以上の分について高額療養費制度の対象になり、支払いが抑えられることになります。自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定されています。所得が高い人ほど自己負担限度額が高く設定されており、所得に応じた負担となりますが、実際に医療費が高額になった場合は、非常にありがたい制度といえます。
例えば、70歳未満の場合の例をあげると以下のような計算になります。
標準報酬月額53万~79万円の場合、1ヶ月の上限額は
16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%
標準報酬月額28万~50万円の場合1ヶ月の上限額は
8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
標準報酬月額26万円以下の場合、1ヶ月の上限額は5万7600円
このように年収に応じて、自己負担上限額が設定されており、その上限額を超えた金額に対して、補助が行われます。
個人で入院保険や医療保険に加入している方も多くいらっしゃると思いますが、国の健康保険制度において高額療養費制度があることなども理解したうえで、保険加入を検討されることをお勧めします。
出典
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者