更新日: 2021.11.04 子育て
18歳はもう大人? 2022年4月の民法改正で知っておきたいこと
成人ということは、「結婚できるの?」「お酒が飲めるようになるの?」「成人式の日程が変わるの?」などと身近な質問が浮かぶかもしれませんが、今回の改正は、子どもにとってとても大きな法改正です。
18歳に成人年齢が変わることで、注意しておくべきことを考えてみましょう。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
民法改正。成人が18歳になるってどういうこと?
国民生活センターによると、これまで18・19歳からの相談よりも、成人後すぐ20歳代前半の相談事例の数が増加していたそうです(※1)。ところが法改正によって、18・19歳の方も消費トラブルに巻き込まれる可能性が増えるかもと警鐘を鳴らしています。
未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた未成年者取消権によってその契約を取り消すことができますが、成年になって結んだ契約は未成年者取消権の行使ができなくなります。どんな法改正なのか、法律の要点を見てみましょう。
1 成年年齢の引下げ(民法第 4 条)
(1) 1人で有効な契約をすることができる年齢
(2) 親権に服することながなくなる年齢
いずれも 20 歳から18 歳に引き下げ
「成年」と規定する他の法律も18 歳に変更
2 女性の婚姻開始年齢の引上げ(民法第 731条)
(現行法)男性 18 歳 女性 16 歳 女性の婚姻開始年齢を18 歳に引き上げ
婚姻開始年齢は男女とも18 歳に統一
3 施行までの周知期間
若者のみならず、親権者等の国民全体に影響
消費者被害の防止等の観点から、周知徹底が必要 2022 年 4 月1日から
(出典:法務省「2022年4月1日から、成年年齢は18歳になります。」)
成年年齢の引き下げによって、18歳や19歳でも、さまざまな契約をすることができるようになるということが1番のポイントです。
例えば、携帯電話を購入する、1人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入する、などこれまで親が同意しないとできなかったたくさんのことが、自分1人の意思でできるようになります。
もちろん、親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所や、進学や就職などの進路について、自分の意思で決めることができるようになります。こう挙げていくと、成人になることがいかに責任重大なことかがわかるでしょう。
“あるある”3事例
消費者庁が挙げているトラブル事例(※3)をいくつかご紹介しましょう。
<事例1>
動画投稿サイトの広告を見てお試し300円のダイエットサプリメントを購入。頼んだ覚えのない2回目の商品発送連絡があり、4ヶ月分まとめて4万円の請求があった。
<事例2>
美容外科クリニックで施術を受けたが、顔全体が内出血を起こし腫れが引かず生活に支障が出た。
<事例3>
先輩の知り合いに「簡単にもうかる」と誘われて、ホームページのアクセス数を増やすことで簡単に稼げる情報を記載した90万円の情報商材を契約したが、まったくもうからない。その後、友だちを誘えばボーナスが入るといわれた。
いかがでしょうか。これは20歳成人のこれまでに、実際にあったトラブル事例として挙げられていますが、いずれも明らかな「詐欺」といわれる内容ではありません。
スマホで簡単にネットショッピングもできますし、「お試し」で軽く「ポチッ」としてしまった経験をお持ちの方も多いでしょう。ところが、お試しでも、実はその後の定期購入が決まっており、わざわざ契約解除をしなければならなかったということに気づくのは遅れがちです。
また、先輩や友人など、周囲の人から実際にもうかった実話を聞くと、「あの人がそういうなら」と簡単に信用してしまうという気持ちもわかります。身近なところで手軽にもうけられるのであれば、「自分もやりたい」という心理は当然でしょう。
ただ、未成年であれば親や未成年後見が契約を取り消しできます。いくら軽い思い付きでの行動であったとしても、自分の行動には自分が責任を取る必要があるのが成人です。
トラブルに遭わないために
自分で自分のことを決定できない子どもが18歳になったからといって、いきなり自分で契約を結ぶというのはなかなか慣れないものです。未成年になりたてで、警戒心が育っていない子どもを特に狙ってくる業者もいます。
20歳成人になりたての若者に対するトラブルが、今後は18歳に引き下がってくることが予想できる以上、日常生活でできるだけ親子で契約の話をするなど、まじめな話を少しでも多くしていく機会はとても貴重な経験となることでしょう。
耳に痛い話でも、話しておかないと損をするのは子ども自身です。「失敗から学べばよい」とおっしゃる保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、暗号資産などのもうけ話は、仲の良い友人知人を失ってしまうことにもなりかねませんし、損をする金額が大きくなりがちです。
消費者庁もTwitterで、18歳から大人の特設サイトを公開しています(※4)。トラブルが避けられないことだとしても、その傷を最小限に抑える努力は、ぜひ子どもたちのためにしていただければと思います。
これまでの人生で、大なり小なり「損をしたことはない」という方はいないでしょう。お金の専門家といわれるファイナンシャルプランナーにとっても同様です。そのくらい周囲にはお金のトラブル事例が転がっているのです。
「恥ずかしい」「自分は大丈夫」と思わず、契約する際には即決しない、周囲の話を聞きながら再度の確認をするなど、普段からしている行動を親が子どもに語る機会を多く持っていただきたいものです。
出典
(※1)国民生活センター「狙われる!?18歳・19歳「金(かね)」と「美(び)」の消費者トラブルに気をつけて!」
(※2)法務省「2022年4月1日から、成年年齢は18歳になります。」
(※3)国民生活センター「若者の消費者トラブル」
(※4)消費者庁「18歳から大人」 Twitterツイート
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。