更新日: 2021.11.04 その他暮らし

法人のお客さまとの取引。「支払サイト」はどのように決めたらよいの?

執筆者 : 田久保誠

法人のお客さまとの取引。「支払サイト」はどのように決めたらよいの?
個人事業主やフリーランスの方に限らず、商売をしていると個人のお客さまばかりではありませんね。
 
例えば、小売業や飲食店の店舗の運営ですと、現金払いの場合お客さまは商品を購入するのと同時に代金を払ってくれますね。しかし、その取引の納入業者への支払いは1月分など、一定期間分をまとめて払うシステムになっています。
 
今回は支払サイトとその決め方について見ていきます。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

支払サイトって何?

会社員の方も事業をされている方も、一度は聞いたことがあるかもしれない「支払サイト」。この取引代金の締め日から代金を支払うまでの期間のことをといいます。
 
一般的に事業者同士の取引は「掛取引(後払いの取引)」で行われます。なぜなら都度取引代金を請求すると請求回数が増えますし、入金の確認の手間も増えます。支払いの場合もその都度支払うことで振り込み回数が増えたりして、どちらも特に経理部門の手間が増えてしまいます。そのため取引代金の支払いに関する締め日を設けて、取引することになります。
 
その際に、「いつ代金を支払うか」を契約(取り決め)する必要があるのですが、そこで定める支払日までの猶予期間のことです。耳にすることもあるかもしれませんが、「月末締め翌月末払い」の場合、月末にその月の売上を締めて(まとめて)請求書を出し、その請求書の支払いは翌月末までに行う、という契約です。
 

支払サイトはなぜ大事?

支払サイトは、事業を行う上で最も大事な資金繰りの問題に直結します。どんなに売上を上げていたとしても、入金がなければ資金繰りは悪化してしまいます。いわゆる「勘定合って銭足らず」の状態の1つで黒字倒産の原因ともなりえます。よって入金と支払いとのバランスを考えた上で支払サイトを決定しましょう。
 
いうまでもないですが、支払サイトは売る側である「代金を受け取る側(債権者)」の立場からすれば、支払サイトを短く設定することによって、早く現金が自身の手元に入るため、仕入れや人件費、経費などの費用等の支払いを余裕をもってすることができる上、自社の資金繰りも安定します。
 
また買う側である「代金を支払う側(債務者)」の場合は、決済までの時間が長い方がその間に他の入金があれば支払いまでに現金を用意しやすくなります。
 

支払サイトの決め方は

上記でも述べたとおり、「支払いは遅く、入金は早く」が重要なのですが、価格への気遣いに比べてどうしても優先順位が後手になったり、相手方の言いなりになったりしてしまうことがあります。
 
スポットの取引であればそれほど問題ありませんが、継続取引の場合、最初に決めたサイトを変えることは難しいので、継続取引前の契約の時には支払サイトについてはよく協議し、できるだけ自身の有利になるような条件で契約することが望ましいでしょう。
 

支払サイトを有利にするにはどうすればよいの?

できるだけ自身の有利になるような条件でといいましたが、実際に取引先から「社内の決まりだから」といわれ諦めることもあるようです。
 
しかし、交渉の余地がないわけではありません。例えば、ご自身が商品を納入する側の場合、値引きを求められることがあります。その際に値引きの条件を受け入れると同時に、サイト短縮を申し入れれば、受け入れられる可能性は上がるかもしれません。また、商品を購入する側であれば、これまで以上に商品を購入するから支払サイトをもらえるよう、交渉して延ばしてもらうことも可能かもしれません。
 

利益と同じように大切に考えましょう

商売をしていると、どうしても売上や利益を重視しがちです。しかし、売上や利益というのは実際の入金の有無とは別問題です。
 
先ほども申したようにどんなに利益が上がっても「黒字倒産」ということも考えられます。売った商品の代金を回収するまでが一連の流れですので、できるだけ早く入金してもらい完結することが大切です。そうしていくことによってキャッシュフローが改善されていくのが感じられますし、「入金がなかったらどうしよう」といった余計な不安も減ります。
 
このような事態を避けるためにも、ご自身の資金繰りに目を向けて、最初の取引時に行う契約の支払サイトには十分注意し、また既存の取引先であっても可能であれば支払サイトを見直すことを行ってみてはいかがでしょうか。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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