更新日: 2021.11.22 その他暮らし

借金解決の選択肢、特定調停とは?

執筆者 : 大泉稔

借金解決の選択肢、特定調停とは?
特定調停とは、簡易裁判所で行うことができる借金解決の手続きです。簡易裁判所で行うのですから「弁護士の助けが必要」と思いきや、裁判所の窓口に備え付けのひな型を利用して、自分で申し立てを行うことができるのが特徴です。本稿では特定調停について見ていきましょう。
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

特定調停の効果とは?

特定調停では、どのような効果を得ることができるのでしょうか?
 
まず、特定調停とは、債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生を図るため、特定債務者が負っている金銭債務に関わる利害関係の調整を行う手続きです。これは、経済的に破綻するおそれのある債務者であれば法人、個人、あるいは事業者か否かを問わず誰でも利用できます。
 
手続きの後、合意が成立し、これを調書に記載すると、それは確定判決と同一の効力がありますので、それ以降債務者としては、これに従って弁済すればよく、それ以上の取り立てを受けることがなくなるというものです。
 
調停委員が特定債務者の生活や事業の実情・借金の状況をヒアリングし、利息制限法に基づいて計算し直した上で、返済義務のある債務額を確定できます。この引き直しは借り入れ当初から再計算しますので、元利金が減る可能性もありますし、過払い金が生じることもあるようです。
 
また、調停成立日から完済までの間、利息が付かないように、調停委員から債権者に依頼します。
 
元利金が減る可能性(場合によっては過払い金)と将来利息の免除の2点が特定調停で得ることができる効果ですが、特定調停はあくまでも話し合いです。債権者(貸金業者などのこと。以下同じ)が話し合いに応じなければ、その効果を得ることはできません。
 
しかし、特定調停が成立すれば、裁判の判決と同じ効力を得ます。
 

特定調停のメリットとは?

特定調停には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
 
冒頭に述べたとおり、弁護士の力を借りる必要がありません。また、裁判所に払う手数料も債権者1社につき、500円(収入印紙)+予納郵便切手代です。ただし、借金の元本が166万6666円を超える場合には、手数料の算出方法が異なります。
 
債権者との話し合いは調停委員が行いますので、債権者と直接、関わることはありません。
 
そして、自己破産とは異なり、官報に載ることもなければ、調停は非公開、調停委員には守秘義務があるので、プライバシーを守られます。
 

特定調停に必要なこと

特定調停は申し立てから成立まで、2ヶ月程度を要します。また、2度は簡易裁判所に出向くことになります。
 
必要な書類のうち、裁判所に備え付けのものは以下のとおりです。

特定調停申立書・・・債権者1社につき1枚
陳述書、家計収支表、債権者一覧表

自分で用意する書類は以下のとおりです。

住民票、給与明細書のコピー(直近の3ヶ月分)、源泉徴収票または所得証明書

以下は、手元にあれば、債権者ごとにまとめて、古い順にコピーします。

契約書、請求書、領収証

 

まとめに代えて

特定調停は、実は誰もが手続きをできるわけではありません。特定調停が成立すれば返済が始まります。ですので、返済を続けていくことのできる収入のある人が申し立てできます。また返済にあたり、その期間があまりに長期におよぶ場合も、特定調停の手続きを続けることが難しくなります。
 
弁護士の助けを借りることなく、裁判所で手続きができるのは魅力的ですが、他の選択肢も視野に入れて検討するようにしましょう。
 
出典
裁判所「特定調停申立てQ&A」
裁判所「特定調停の申立てについて」
裁判所「特定調停手続」
日本調停協会連合会「「特定調停で解決」しませんか?」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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