これから受験本番の高校3年生、受験費用の資金繰りに気を付けて!
配信日: 2021.12.07
一般受験を選択する受験生と保護者の多くは、大学入学共通テストの出願が済んだ時期ですね。さあここからが受験本番、そんな中、受験費用は地味に家計にひびいてきます。
これからのスケジュールを前もって知っておくことで、お金の準備をし、不安の1つを取り除いておきましょう。
執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士
アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。
受験スケジュールと受験料
共通テストを利用した受験は私立大学でも行われていますので、共通テストの受験者は、国公立希望の受験生だけではありません。
共通テストの受験料は、2科目受験で1万2000円、3科目以上受験で1万8000円、さらに、成績結果通知を希望する場合は手数料800円がプラスされます。これまで公立で過ごした方は特に、「結構かかるな」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
国公立入試の多くは、共通テストの他に個別の二次試験があり、その出願時にも1万7000円程度の受験料がかかります(出願時期:1月下旬~2月初旬)。
前期日程、後期日程を受験する受験生が多く、1.7万円×2校=3万4000円は必要ですし、公立大学が中心の中期日程との併願も可能なので、中期日程の受験を入れると5万円以上かかってきます。
また、一般的な私立大学の受験料は3~3万5000円、歯学系・医学系では4~6万円と、大学により一律ではありません。出願時期は大学により異なりますが、12月下旬ごろから始まります。
共通テスト利用の場合は、1学部1万5000円~1万8000円程度ですが、それでも1校で複数学部を受験する場合もあり、どのような受験プランにするかによって、受験料総額は大きく変わります。
最近はネット出願を実施しているところもあり、一部の国公立を除き、受験料もクレジット決済が可能です。
手続きが簡略化されている反面、出願時に、学部選択を多くしてしまいがちで、共通テスト利用も含め、例えば7学部以上出願することになると、およそ20~30万円になります。だいたい同じ時期に出願するので、そのクレジット決済が、2~4月ごろに一気にやってきます。
受験当日にかかる費用
近距離の受験でも、複数受験するとなると、大学までの交通費もかかります。いつも通っている学校の通学定期券外であることが多く、また受験の時期は高校が自由登校になっており、通学定期を持たないかもしれませんので、別途交通費が必要になります。
遠距離の受験で、受験時に宿泊が必要になる場合は、さらに宿泊費と、飛行機や新幹線代がかかります。東京-大阪間の往復交通費は約3万円、1人1泊約8000円とすると、決して少ない金額ではありません。
遠距離受験の場合は、複数校の受験をまとめて1回の移動で済ませようとすると、数日滞在するため宿泊費がかかる、同じホテルで連泊がとれない、など受験日と合わせて早めに検討する必要があります。高校生をホテルに1人で宿泊させるのは心配、と思うと、保護者の宿泊費も必要です。
この費用もクレジット決済可能なものが多いのですが、決済がまとめてやってくることに注意が必要です。近年私立大学の中には、地方会場、地方受験を設けている大学もあり、それを利用して受験をすると、これらの受験費用が節約できるでしょう。
合格したらかかる費用、支払時期に注意して資金繰りを!
晴れて合格、本当にうれしいものです。何より本人がグッと成長する感じがします。保護者もホッとしますが、忘れてはいけないのが「手続き」です。いわゆる「滑り止め」だとしても、入学手続きを行わないと、入学資格は無効になります。
合格後に払うお金には、大きくわけて入学金と前期授業料がありますが、多くの大学は、合格発表後、一定期間のうちに入学金を収めることになっています。それにより、入学資格が得られ、「席が確保」されるのです。
私立大学の入学金は1校20~30万円ほどです。なかには、国公立大学合格発表後まで、入学金の納付を待ってくれる大学もあります。これらは学部や利用する入試制度によっても変わります。
延納・分納の手続きが必要な場合と、必要でない(もともと締め切りが遅い)場合があるので、要項でよく確認しておきましょう。
また入学金と前期授業料を同時期に収める場合もありますが、後日、他校の合格を受け、入学を辞退する場合には、前期授業料は返還されます。ただし、入学金は返還されませんので、受験スケジュールには入学金の納付締切日も加味できるとよいのです。
といっても、受験をして進学するのは受験生本人なので、本人の希望があってのことにはなりますが、この入学金の納付締切時期が前後したことで、筆者は過去に合計90万円ほど、入学しなかった学校に支払いした経験があります。なんとも悔やまれる金額です。
また入学金や授業料は、クレジット決済ではなく、銀行振込がほとんどですので、銀行口座に現金を用意する必要があります。定期預金や各種保険の解約時期を合わせて、現金を用意しておきましょう。
半年ごとの授業料、奨学金の入金時期との差に注意!
大学入学後は、半期ごとに授業料の引き落としがあります。授業料を期日までに支払わないと、履修ができない、単位が認定されない、つまり卒業ができなくなります。
本人の口座から授業料が引き落とされる場合、保護者は本人の口座に全額振り込んでいたとしても、万が一本人が使いこんでしまうと、期日に引き落としされません。
クレジットカードと同じで、1円でも不足していると、銀行決済はできませんので、授業料が引き落とされたかどうかは、必ず確認しましょう。
「奨学金を借りているから大丈夫」と思っている方も、奨学金は、予約採用(高校を通した申し込みをして採用された)の場合で、大学入学後に「進学届」を提出し、1~2ヶ月後に振り込みが開始されます。
毎月振り込まれるのですが、奨学金を授業料に充てる予定の場合は、授業料引落日まで使わずにとっておく必要があります。生活費も含めて借りている場合は、授業料分を使いこまないように注意しましょう。
大学進学にかかる費用は、国立大学文系(4年間)で250万円ほど、私立大学文系(4年間)で500万円ほどです(文部科学省「子どもの学習費調査」より)。
理系はそれ以上かかりますし、修士課程に進むことも少なくありません。薬学系は6年間ですし、歯学・医学系も6年間となると、文系学部(4年)と比較して2倍・3倍とかかってきます。
これらはあくまで平均ですが、少なくないお金がかかることは間違いなく、かかる金額と支払時期を事前に知っておくことで、資金繰りを考えた進学プランをたてることが可能です。直前になって慌てないためにも、早めに計画しておきましょう。
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士