更新日: 2022.02.02 子育て

経済的な理由で修学困難なときに利用できる「公的な貸付制度」。どんなものがある?

経済的な理由で修学困難なときに利用できる「公的な貸付制度」。どんなものがある?
「子どもを学校に通わせたい」と、親であれば誰しもが思うのではないでしょうか。しかし、教育費は人生の3大費用といわれるくらいお金が掛かります。「子どもを育てるのに1人当たり1000万円は掛かる」というのを聞かれたことがあるかもしれません。
 
経済的な理由で子どもの修学を諦める前に、公的な貸付制度について知っておくのはいかがでしょうか。なお、本記事では「修学」と「就学」を区別しており、修学=在学(進学)、就学=入学としています。このため、入学資金については詳しく触れていませんので、あらかじめご了承ください。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

代表的なのは奨学金と教育ローン

教育資金の公的な貸付制度といえば、奨学金と教育ローンを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。内容もご存じかもしれませんが、奨学金と教育ローンについて、以下で確認してみましょう。
 

奨学金

奨学金は、学生が貸与を受ける公的な貸付制度です。
 
日本学生支援機構の奨学金には返済不要の「給付奨学金」と返済が必要な「貸与奨学金」があります。貸与奨学金には「国内の奨学金」と「海外留学のための奨学金」があります。以下では、貸与奨学金のうち、国内の奨学金について紹介します(以下では単に「奨学金」といいます)。
 
この奨学金には無利子で借りる「第1種奨学金」と有利子で借りる「第2種奨学金」があります。それぞれの申込資格、学力基準、家計基準、貸与月額は以下のとおりです。
 

第1種奨学金 第2種奨学金
申込資格 ・正科生
・経済的理由により修学に困難で優れた学生等
・正科生
・経済的理由により修学に困難で優れた学生等
学力基準 本人の属する学部(科)の上位3分の1以内 出身学校または在籍する学校における成績が平均水準以上
特定の分野において、特に優れた資質能力を有すると認められる
学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる
家計基準 生計維持者の収入・所得金額に基づき選考
※大学種別、収入形態、通学形態、世帯人員によって異なる
生計維持者の収入・所得金額に基づき選考
※大学種別、収入形態、通学形態、世帯人員によって異なる
貸与月額 1万円~12万2000円
※大学種別、通学形態により異なる
2万円~15万円
※大学種別、通学形態により異なる
利率の種類 (1)利率固定方式
(2)利率見直し方式

※独立行政法人日本学生支援機構のホームページより筆者作成
 
第1種奨学金と第2種奨学金では、申込資格に差異はありません。しかし、その他の条件については第1種奨学金の方が第2種奨学金よりも厳しいものとなっています。
 

教育ローン

奨学金は、学生が貸与を受ける公的な貸付制度です。教育ローンの利用条件などは以下のとおりです。
 

対象 融資の対象となる学校に入学・在学している学生の保護者
世帯年収(所得)の上限額 子どもの人数により異なる
・1人:790万円(600万円)
・2人:890万円(690万円)
・3人:990万円(790万円)
※子どもが2人以内の場合、上限額が緩和される制度あり
融資限度額 1人につき350万円以内
(一定の要件を満たすと450万円以内)
金利(令和3年11月1日時点) 年1.65%(固定金利)

※日本政策金融公庫のホームページより筆者作成
 
奨学金と教育ローンは併用することも可能です。
 

その他の公的制度

その他の公的な貸付制度として、生活福祉資金貸付制度の「教育支援資金」があります。教育支援資金には教育支援費(低所得世帯に属する者が高等学校、大学または高等専門学校に修学するために必要な経費)を支援するものと就学支度費(低所得世帯に属する者が高等学校、大学または高等専門学校への入学に際し必要な経費)を支援するものがあります。
 
また、貸付制度ではありませんが、支援制度(給付)として以下のようなものがあります。

●高等学校等就学支援金制度:高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯(※年収約910万円未満の世帯)の生徒に対して、授業料に充てるための資金を支援する制度
 
●就学援助制度:経済的理由によって小学校または中学校への就学が困難な児童・生徒の保護者に対して、学用品費・給食費・医療費などの費用を援助する制度
 
●高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金):「授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)」と「給付型奨学金の支給」を組み合わせた制度

 

まとめ

経済的な理由で修学が困難な場合、公的な貸付制度を利用することも検討してみてはいかがでしょう。公的な貸付制度の代表的なものとして、奨学金と教育ローンがあります。
 
奨学金と教育ローンの一番の大きな違いは、誰がお金を借りるのかということです。奨学金は子どもが、教育ローンは保護者がお金を借ります。また、奨学金と教育ローンは併用もできます。返済計画をきちんと立てた上で、制度を上手に利用してください。
 
出典
独立行政法人 日本学生支援機構 「奨学金制度の種類と概要」
独立行政法人 日本学生支援機構 「貸与奨学金(返済必要)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「第一種奨学金(無利子で借りる)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「第二種奨学金(有利子で借りる)」
日本政策金融公庫 「教育一般貸付 (国の教育ローン)」
日本政策金融公庫 「ご利用条件」
日本政策金融公庫 「金利・ご返済方法」
厚生労働省 「生活福祉資金貸付条件等一覧(教育支援資金)」
社会福祉法人 東京都社会福祉協議会 「教育支援資金のご案内」
文部科学省 「高等学校等就学支援金制度」
東京都教育委員会 「就学支援事業のお知らせ」
文部科学省 「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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