更新日: 2022.02.08 暮らし

預託法改正、何がどう変わる?

執筆者 : 林智慮

預託法改正、何がどう変わる?
令和3年6月16日、『消費者被害の防止及びその回復の促進を図る為の特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律』が公布されました。特定商取引法・預託法の改正により、消費者が安心して商品やサービスの取引ができるよう、消費者被害の防止や取引の公正が図られます。
 
それに伴い、消費者裁判手続き特例法が改正され、被害回復裁判に資するために、特定適格消費者団体に対し、特定商取引法および預託法の行政処分に関して作成した書類の提供が可能になります。
 
特定商取引法における、いわゆる送りつけ商法についての改正は令和3年7月6日に施行されていますが、ほとんどの改正については令和4年6月1日に施行されます(契約書面交付の電磁的方法を除く)。
 
では、預託法改正について、その背景から見てみましょう。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

販売預託商法とは

預託取引は、消費者の持っている物や権利を業者に預託し、業者はそれを運用または第三者にレンタル等をして得た収益を、本来の持ち主である消費者に分配するものです。そして一定年後返却する、または業者が買い取りをします。
 
販売預託商法とは、消費者が預託する物を、まずその業者から買い取らせます。消費者から代金を受け取りますが、現物は渡さずそのまま預かります。つまり、現物がなくても代金を受け取ることができてしまいます。現物を見せる場合でも数個あれば使い回しができます。
 
配当金も、後から購入した人から受け取った代金を、配当金として支払っていれば消費者から苦情は出ません。実際に事業をしていなくても、お金を集めることができます。その手法は、まさに、ポンジ・スキームそのものです。
 

被害の実態

では、実際にどんな被害があったか、法改正に至った背景を見てみましょう。昭和60年の豊田商事事件は、金地金を販売した業者が商品を預かって年率10%で運用し、5年後に時価で買い戻すという契約のものでした。
 
契約上は購入商品の預託ですが、実際はほとんど金を保有せず、結局は破綻します。被害総額は約2000億円。1人あたり平均600万円もの被害額となりました。
 
この事件により、特定商品の特定商品等の預託等取引契約に関する法律が制定されました。対象となるのは、貴石や真珠や貴金属、装飾用調度品、盆栽や人が飼育する動物他の「政令で定められた特定商品」、ゴルフ会員権他の「政令で定められた施設の利用権」が対象です。
 
しかし、対象外の商品による被害や、動物や植物に出資し生産物を受け取るオーナー制度による被害も発生し、近年では磁気治療機器のジャパンライフ事件(被害額約2000億円)が社会問題になりました。
 
1人あたりの平均被害額も約2857万円と高額であり、被害者の86%が60歳代以上で、少しでも配当収入を得て生活の足しにしようとする高齢者がだまされて生活資金を失ってしまったのです。
 

預託法改正

後を絶たない被害を受け、預託法が改正されます。
 
(以下、消費者庁「消費者被害の防⽌及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の⼀部を改正する法律の概要」より引用)
 

1 販売預託の原則禁止

・販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、違反した者に罰則を規定
・原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度の創設

 
ここで、預託等取引契約とは、「3ヶ月以上の期間にわたり物品の預託を受けること及び当該預託に関し財産上の利益の供与を約するもの」のことをいいます。販売を伴う預託は原則禁止ですが、厳格な手段の下、消費者庁が個別に確認された場合のみ、例外的に認められます。
 
これにより、代金だけ支払って物が受け取れないことはなくなり、また、他の人が新たに購入された物の代金が、既存の顧客の配当に回ることも防げます。
 

2 預託法の対象範囲の拡大

・現行の預託法の対象の限定列挙が廃止され、すべての物品等が対象とされます。
 
これまでは、特定商品のみが預託法の対象で、それ以外は抜け道とされてきましたが、すべての商品が対象となることで抜け道がなくなります。
 

3 消費者利益の擁護増進のための規定の準備

・行政処分の強化等が行われます。
 
法改正により、これまでで対応しきれない部分にも行政の対応がされます。しかし、法ですべての消費者を守ることには限界があります。トラブルを回避するために、消費者自身も「うまい話」に飛び付くことを避けましょう。
 
出典
消費者庁「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の⼀部を改正する法律の概要」
e-gov 法令検索「預託等取引に関する法律」
e-gov 法令検索「特定商品等の預託取引契約に関する法律施行令」
消費者庁「特定商取引法・預託法等の改正について」
消費者委員会「いわゆる「販売預託商法」に関する消費者問題についての建議」 令和元年8月30日
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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