更新日: 2022.02.14 その他暮らし
最近よく聞く「リースバック」と「リバースモーゲージ」の違いとは?
両者ともに、自宅などの不動産を活用して生活費などの資金を調達する方法です。このような方法が注目される背景には、本格的な高齢化社会の到来や、高齢者の単身世帯の増加などがあると思われます。
ここでは、両者の特徴や注意点について確認してみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
リースバックとは?
リースバックとは、自宅を売却して一括で売却代金を得られる方法です。自宅の売却によって不動産の所有権は買い主(リースバック業者)に移転しますが、その上で業者と賃貸借契約を締結することで、売却後も住み慣れた自宅にそのまま住み続けることができます。
リースバックの場合は、不動産の売却、賃貸借契約という不動産取引を行うことになります。売却により比較的大きな金額の現金を一括で得ることができ、その資金の使途は限定されませんので、自由に使うことができます。
場合によっては残っている住宅ローンの返済や生活費のみならず、子どもの教育費や親の介護費用などに利用することも可能です。ただし、売却後は賃貸借契約に基づき、賃料を負担する必要があります。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、自宅などの不動産を担保として金融機関などから融資を受ける方法のことをいいます。
前述のリースバックとの大きな違いは、リースバックは不動産の売却、賃貸などの不動産取引であるのに対して、リバースモーゲージは不動産を担保とした金融機関などからの融資であるという点です。
また、リバースモーゲージの場合、契約者本人が生きている間は不動産の所有権は移転しません。一般的には、自宅を担保とした借入枠の上限金額を、年金の形式で少しずつ融資を受けることになります。
そして不動産の所有者は、生存中には融資に対する利息分のみを負担し、所有者が亡くなった時点で担保である不動産を売却して融資を一括返済することになります。そのため、所有者が亡くなった時点で所有権は買い主に移転します。
また、リースバックは不動産を担保とした融資であることの性質上、得られた資金の使途が生活費やリフォーム費用などに限定されたり、対象となる不動産物件に対する制約も多くなるという特徴があります。
両者の比較と利用する際の注意点
リースバックとリバースモーゲージの特徴をまとめると、以下のようになります。
※筆者作成
両者に共通することは、いずれかの時点で不動産の所有権が移転することです。リーバックの場合は売却時点で、リバースモーゲージの場合は死亡時(将来)に不動産を売却して所有権が移転します。そのため、対象の不動産は契約者本人が亡くなった時点での相続財産とはなりません。
将来、相続人となる予定の配偶者や子ども、直系尊属などにはその事実を伝えておくことが望ましいと思われます。特に、対象不動産の制約が多いリバースモーゲージについては、「所有者の推定相続人全員の同意」が利用条件として必要な場合もあります。
また、一般的にはリースバックの方が利用できる不動産の範囲が広いといわれています。例えば、リースバックは個人所有の一戸建や分譲マンションでも利用できますし、法人所有の工場や事務所、駐車場や一棟ビルなど、幅広い不動産で利用できます。
一方で、リバースモーゲージの場合は利用できる不動産の制約が多く、基本的には分譲マンションでは利用できないケースがほとんどでした。一部マンションも対象とする商品もあるようですが、不動産価値の高い都市圏の物件に限られるなど、依然として利用範囲は限定される傾向にあります。
まとめ
最近では、住宅金融支援機構の「リ・バース60」という商品も注目を集めています。
これは満60歳以上の方を対象とした住宅ローンで、生存中は利息分のみを負担し、死亡時に一括で返済する仕組みとなっています。使用使途として住宅の建設、購入、リフォーム、借り換えに利用することができます。
今回ご紹介したリースバックとリバースモーゲージについては、さまざまな会社が取り扱っており、その利用条件なども個々に異なります。実際に検討する際には、それぞれの商品内容の詳細をしっかりと理解し、複数の商品を比較した上で利用することをお勧めします。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー