更新日: 2022.02.16 その他暮らし

利用しない預貯金口座は解約を。手数料負担や口座消滅の危険

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

利用しない預貯金口座は解約を。手数料負担や口座消滅の危険
多くの人が何気なく利用している預貯金の口座。スマホ決済などが進み環境が変わったとはいえ、開設をしたままほとんど利用せず放置された口座はないでしょうか。
 
特に転勤などで移動が多い方は、転勤時に開設した口座がどうなっているのか、長期間利用していない預金口座がないかを、確認しておきたいものです。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

未利用の預金口座に手数料が

入金や出金の記録もない状態で、預貯金口座を長期間放置していると、ATMなどでの預金の引き出しができなくなることがあります。特に10年以上にわたり入金や出金がない、利用の意思を銀行側に伝えていない、などの条件に該当する口座は、金融機関のほうで「休眠口座」に指定し、通常の口座とは別の扱いになります。
 
必要な手続きをしないかぎり、お金が引き出せません。休眠口座に指定されないためには、(1)残高は1万円以上にする、(2)金融機関から利用の意思確認する通知を受け取る、(3)金融機関に口座継続の意思を伝える、といった対応を、預金者側でとる必要があります。
 
休眠口座とは別に、2年以上取引のない口座を「未利用口座」に指定し、手数料を課す銀行も増えてきました。
 
三菱UFJ銀行、三井住友銀行などのメガバンクをはじめ、いくつかの地方銀行でも、未利用口座から手数料をとる動きが広まっています。
 
各銀行によって条件は多少異なりますが、多くの銀行では、(1)2年以上取引がない口座、(2)預金残高が1万円未満の口座、(3)年間1000~1200円(税別)の手数料を取る、というルールが一般的です。
 
ただし多くは、2020年以降に開設された口座が対象のため、これから影響が出てくると思われます。またマネーロンダリング(資金洗浄)防止という観点からも、未利用口座に手数料を取る動きは、他の金融機関にも今後広がると思われます。また2020年以前に開設された、従来の口座を対象とする動きも出てきそうです。
 

口座を放置し続けずに解約を

預金口座を開設したことを長期間失念し、預金残高も数千円ほど、金融機関からの通知も見ていない、といった状態であれば、「休眠口座」に指定されます。
 
転居や転勤のたびに新たに預金口座を開設したが、その後利用せずに放置していた方もいらっしゃると思いますが、使わなくなった預金口座は、解約することをお勧めします。
 
実際に「休眠口座」と認定された口座の預金残高は、預金保険機構から決められた組織を通して、NPO法人などの助成や貸し付けなどに有効活用されます。金融機関以外の場所で活用されるメリットもありますが、預金者のお金であることには変わりありません。
 
そのため預金者が、口座のある金融機関の窓口で、通帳やキャッシュカードを提示し必要な手続きをすれば、引き出すことができます。
 
実際には、預金者本人に限定されるだけでなく、預金者が亡くなり相続人となった方でも、引き出すことができます。しかし実際には、本人が口座の存在自体を忘れている、残高が少額なので金融機関にわざわざ出向かない、といったケースが見受けられます。
 
「未利用口座」についても、今後は預金者側の対応が求められます。少額預金に対して毎年手数料が課せられるわけですから、場合によっては預金額がほんのわずかでも、手数料を支払うはめになります。
 
そうであれば、預金口座を持ち続けるメリットはありません。銀行側からの解約を促すサインが出ている、と理解すべきでしょう。実際に、銀行が手数料を預金者の口座から自動的に引き落とすケースが、今後増えると推定されます。そして残高がゼロになった時点で、自動解約という措置になります。
 
機会を見つけて、利用頻度の少ない口座の解約をお勧めします。以前に比べ、金融期機関の解約手続きも簡素化が進み、押印などの行為も省略される傾向で、簡単に解約ができます。
 

預けたお金が全額戻らない?

休眠口座であっても、手続きをすれば預けたお金を引き出すことができます。特に最近預けたお金であれば、問題なく引き出せます。
 
しかし長期間放置し続けたために、お金が戻らなくなるレアな事例が実際にあります。30年以上前に預けたまま放置した「郵便貯金」が、それに該当します。
 
このお金の戻らない特別なケースは、2007年の郵政民営化以前に、当時の郵便局(現在のゆうちょ銀行)に預けた「定額郵便貯金」「定期郵便貯金」「積立郵便貯金」「教育積立郵便貯金」などが該当します。これらの貯金は、旧来の「郵便貯金法」に基づいて運用されているため、満期日から20年以内に解約の手続きを取らないと、預けた郵便貯金が全額消滅する制度になっています。
 
例えば、1990年に10年満期の定額貯金などを郵便局に預けた方が、2000年時点で満期を迎え、そのまま20年放置したまま2020年を過ぎると、権利が消滅してしまうのです。
 
現在の利息の少ない数千円規模の普通預金を放置していたのとは異なり、当時は高金利の時代でした。郵便局には多くの貯金が集まり、非常に高い利息の「定額貯金」に数十万円あるいは数百万円単位で加入すると、10年後には約2倍に残高が増えていました。これらのお金が消滅してしまうのです。2007年以前に預け、満期になっても放置している方はご注意ください。
 
満期時点で引き出しておけば何ら問題はないのですが、預金者が失念し解約していない、本人が亡くなり相続した人も解約していない、といった事情で長い間放置されたままの滞留資金が存在しています。最終的に未解約で残った郵便貯金は、国庫に納付されます。驚くべきことに、ここ数年を見ても、年平均で50億円以上が国庫に納付されました。
 
いずれにせよ、ご自分の口座を常に確認し、長期にわたり利用せずに放置することは、ぜひとも避けるようにしたいものです。
 
出典
三菱UFJ銀行ホームページ
三井住友銀行ホームページ
総務省 郵政事業
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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