更新日: 2022.03.03 子育て
2022年4月に行われる育児・介護休業法の改正目前! 育児休業中からの今後の復職。休業を続けるか、延長するかの判断は?
ワクチン接種をしていない子どもからの家庭内感染や、保育園などのクラスターの発生。子どもを預ける先がなければ、働き続けることはできません。
今回は2022年4月の育児・介護休業法改正を目前にして、復職しようか迷う労働者の疑問にお答えします。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
保育所への登園自粛を要請された場合に育児休業の延長をできるかどうか
市区町村等から保育所への登園自粛の要請を受け、子どもを保育所に預けるのを控えるよう依頼された方もいらっしゃる中、場合によっては、育児休業中の労働者が復職を望むのは難しいかもしれません。
「育児休業から復職しようとしたけれど、やっぱりそのまま休業したい」と勤務先に伝えようか迷うところでしょう。そんな時の育児休業の延長は認められるのでしょうか。
結論からいうと、これを認めるかどうかは、子どもの年齢次第です。最長1歳までは、事由を問わず育児休業の終了予定日の繰り下げ変更は認められます。
法令上の繰り下げ変更は1回までとされていますが、「2回以上の変更を認めることは差し支えない」と、厚生労働省のホームページにも記載されています。会社が認めてくれさえすれば、さらに育児休業を延長できることもあります。
また、育児休業から一度復帰している方から再度の休業の申し出があった場合も、最長1歳までは、休業は認められます。
なお、繰り下げした場合でも、雇用保険上の条件(※1)を満たせば、再度の育児休業期間についても、申請すれば雇用保険から育児休業給付金は支払われます。
育児休業は1歳まで!? なんだか分かりにくい育児休業の定義とは
育児休業は、原則的に1歳までといわれていますが、実はさまざまな長さの育児休業期間が存在します。
両親がともに育児休業をする場合、「最長1歳2ヶ月」まで取得できる、パパ・ママ育休プラスといわれる育児休業。その他、保育園に入園できないなど、家庭で保育できない理由が必要な「1歳6ヶ月」もしくは「2歳」までの育児休業という定義があります。
それぞれ、1歳から1歳6ヶ月までの休業、1歳6ヶ月から2歳までの休業と、とても分かりにくい表現になっていますが、1歳以降に育児休業をするためには、単に休んでいるという条件だけでなく、保育所に入所できないなど、育児休業を延長する何らかの理由が必要になるというわけです。
1歳以降の期間については、「子が1歳に達する日において、労働者本人、または配偶者が育児休業をしている場合」と「保育所に入所できない等、1歳を超えても休業が特に必要と認められる場合」という2つの条件を満たす必要があります。
育児休業を続ける場合に考えておきたいこと
育児休業中は、賃金全額の保証はありませんから、当然収入が下がります。
雇用保険から支給される育児休業給付は賃金額の67%(育児休業開始後は50%/注)が目安となります。
(注)
1支給単位期間ごとの給付額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(ただし、育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%)」
ただ、保育園に通うことができるのに、「自主的に」休業するケースでは、育児休業給付の対象とはなりません。
ちなみに、復職後に子どもが感染した場合は濃厚接触者となりますから、出勤停止となり、自主療養となるでしょう。この療養期間については10日か14日かというのが難しいところです。
東京都のホームページでは、以下のような記載があります。
濃厚接触者の方は、新型コロナウイルス感染症患者と最後に接触があった日の翌日から7日間(※)は、発症する可能性があります。
この間のPCR検査の結果が陰性であっても、健康観察期間の終了日は変わりません。不要不急の外出は自粛し、健康観察をお願いします。
健康観察期間中は、感染拡大防止にご協力お願いします。
(※)
オミクロン株感染拡大をふまえた対応の場合。変異株スクリーンの結果、L452R変異株(デルタ株)患者の濃厚接触者の場合は14日間です。
(出典:東京都福祉保健局 東京都多摩府中保健所「濃厚接触者の方へ」)
本人が発症していなければ傷病手当金の対象とはなりません。ただ、育児休業や自主療養などをしていたことで収入が下がり、「副業でもしてみよう」と思うこともあるかもしれませんので、その際の注意点もご説明します。
副業禁止規定をなくす会社もありますが、依然として、そのまま副業禁止を掲げている会社もあります。
副業を始めようと考えている場合には、問題ないかを勤め先に確認をしておいたほうがよいでしょう。また、一定以上の収入になってしまった時には、確定申告が必要です。その際、収入をそのまま加算するのではなく、図表1を参考に、経費部分を控除できます。
【図表1】
(出典:国税庁「副収入などがある方の確定申告」(※2))
副業がある場合の確定申告については、国税庁のホームページ(※2)でも確認できます。
育児休業中だからこそ、知っておきたいこと、できることはたくさんあります。
子どもの教育費は人生の3大資金のひとつです。子どもがいるから大変なことも多いかもしれませんが、ぜひ有意義な育児休業期間を過ごしていただきたいものです。
出典
(※1)厚生労働省 Q&A〜育児休業給付〜
(※2)国税庁 副収入などがある方の確定申告
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。