更新日: 2022.03.08 その他暮らし

賃貸と持ち家、どっちがお得? 比較するならこの3つは忘れずに

執筆者 : 酒井 乙

賃貸と持ち家、どっちがお得? 比較するならこの3つは忘れずに
今まで慣れ親しんだ住まいを離れ、新たな住まいを探すときは誰でも悩むもの。「広さ」「アクセス」など考えることはたくさんありますが、悩ましいものの1つに「賃貸にすべきか、持ち家にすべきか」という問題があります。 
 
果たしてどちらが得なのか、この答えは簡単ではありません。それだけに、手っ取り早く結論を出すと後悔することにもなりかねません。
 
そこで比較の際、注意すべき3つのポイントを本記事でまとめました。
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

賃貸、持ち家のメリット・デメリット

まずは、賃貸、持ち家の主なメリットとデメリットを整理してみましょう。 
  

●賃貸のメリット

なんといっても引っ越しのしやすさ、必要なときに新たな物件に移ることができることが大きなメリットです。
 
また、住宅ローンという負債を抱えなくてよい安心感(とはいえ毎月の家賃も負担ですが)や、給湯器や水道管など設備の修理を、自分の過失でなければ大家さんが負担してくれる点も挙げられます。 
 

●賃貸のデメリット

いくら家賃を払い続けても、その住まいは自分のものにはなりません。そのため、自分の好みで自由にリフォームをすることはほとんどの場合できません。
 
また、退去時には住まいを「原状回復」する必要があるので、例えば床に大きな傷があった場合、自費で修理しなければなりません。
 

●持ち家のメリット

家が自分の持ち物ですから、リフォームや売却など、住まいに関するすべてを自由に決めることができます。
 
さらには住宅ローンを借りることで減税できる「住宅ローン控除」や、父母などからの住宅取得資金の贈与が一定額まで非課税になる制度など、税制面での優遇措置も見逃せません。
 

●持ち家のデメリット

気に入らないからといってすぐに売ってほかの場所へ、というわけにはなかなかいきません。
 
また、住宅ローンを抱えているという資金面や心理面での負担が完済までずっと続くこと、設備が壊れても自己資金で直さなければならないなど、要は賃貸のメリットの裏返しが、持ち家のデメリットといえるでしょう。
 
このように、持ち家、賃貸どちらにもメリット、デメリットがあります。
 
どちらかに決めるためには、何を優先するかを明らかにすることが大切ですが、やはり大きな決め手となるのは「いくらかかるのか」という点です。
 
そこで賃貸と持ち家の「いくら」を比較する際の注意点を3つみてみましょう。
 

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1.持ち家は将来売れる

賃貸と持ち家を比較する際に注意すべき1つ目のポイントは、「持ち家は将来売れる」ということです。当たり前に聞こえますが、実は意外と忘れてしまうことが(筆者に寄せられる相談などに)あります。 
 
例えば、こんなケースを考えてみましょう。
 
ある土地付き物件が5000万円で売られているとします。さて、購入するか、それともこの額に見合った家賃で別の物件を借りるか、どちらが得でしょうか?
 
この比較をするには「物件を購入することでかかる総費用と、今後支払う家賃(+諸経費)の総額が同じになる毎月の家賃はいくらか?」を計算します(話を単純にするために、購入物件にかかる諸費用や税金、時間価値は無視します)。
 
さて、家賃はいくらになるでしょうか。
 
物件を購入する場合の資金を全額35年住宅ローン(金利1%/年)、返済期間を35年間と仮定します。この場合、総支払額(元本+金利)は、約5928万円です(元利均等弁済、ボーナス払いなしの場合)。
 
この金額を毎月の家賃に直してみましょう。5928万円を35年×12ヶ月=420ヶ月で割ると、約14.1万円/月となります。
 
この結果、「そうか、もしこの5000万円を賃貸物件に回せば、月14.1万円で借りることができるのか」と考えてしまいがちです。 
 
しかし、これは間違いです。この物件はよほどのことがなければ将来売れるのですから、仮に将来2000万円で持ち家を売ることができるとすると「もしこの5000万円を賃貸にまわせば」の部分は、「3000万円(5000万円-2000万円)を賃貸にまわせば」とシミュレーションできます。
 
ただし、「将来いくらで売れるのか」は、将来の土地価格や建物の性能、材質、そして「いつ売るか」によって変わるため、予想が難しいところです。
 

2.家賃には利益が含まれる

実は、先ほどの例にはもう1つ大きな勘違いがあります。それは家賃に「大家さん」の利益が含まれていないことです。
 
先ほどの計算の続きをしてみましょう。
 
将来持ち家を2000万円で売却できると仮定すると、賃貸に回せる予算は3000万円でした。これを毎月の家賃に直すと3000万円÷420ヶ月で約7.1万円/月。しかしこれは、単純に持ち家にかかる総費用を月単位に直したにすぎません。 
 
持ち家とは、言い換えれば自分で自分に貸している家ともいえます。当然、利益を得る必要はありません。
 
しかし賃貸ではそうはいきません。大家さんは人に物件を貸すことで、建設費や維持管理コストなどを回収した上で、さらに利益を得なければリスクを冒してわざわざ人に貸すことをしません。
 
ですから、算出した7.1万円/月に大家さんの利益を上乗せしなければ、そもそも比較にならないのです。
 
それではいったいいくらの利益が含まれるものなのでしょうか? 
 
これも物件によってさまざまではありますが、中小企業庁の「中小企業実態調査」から不動産業の総利益率を算出すると、法人企業で約42%、個人企業では約92%となっています(※1)。
 
あくまで統計値、とお断りした上で、少なくとも家賃にはこれだけの利益が含まれている、と考えるべきでしょう。
 

3.保有中に大きなコストが発生する

賃貸と持ち家を比較する際に見逃しやすい3つ目のポイントは、持ち家、特に戸建てを所有している間に発生する大きなコストです。
 
持ち家で代表的なものは、戸建てなら壁の塗り替えや内装、外装のリフォーム、そして建て替え費用です。 
 
国土交通省の統計値(※2)によると、住宅の増築には平均で約564.2万円、一部改築では約280.2万円、改装や改修には約111.9万円がかかります。
 
特に、家族が今後増える方、これまで別居していた親と同居する方、中古物件を購入した方などは、比較の際に忘れないようにしましょう。
 
なお、賃貸であれば改修費用を一度に負担することはありませんが、建物を改修しなければならないことは同じですので、将来家賃が上がるリスクがあります。これも比較の際に考慮すべき点です。 
 

安易な比較をせずしっかりリサーチを

ここまで、持ち家と賃貸を比較する上で忘れてはいけないポイントをご紹介しました。
 
やはり賃貸か持ち家かを比較する際は、予算のことは避けて通れません。 くれぐれも大切なわが家を選ぶ際には安易な比較を避け、しっかりリサーチをしてください。
 
出典
(※1)中小企業庁 中小企業実態基本調査 令和2年確報(令和元年度決算実績)
3.売上高及び営業費用 (1)産業別・従業者規模別表 エクセル表より、「不動産業、物品賃貸業」の「法人企業計」と「個人企業」の売上総利益から売上高を割って売上総利益を算出したもの。

(※2)国土交通省 建築物リフォーム・リニューアル調査(2020年)
エクセル表より、年表1-2、「住宅」の各項目の受注高を受注件数で割って算出したもの。

 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。