更新日: 2022.03.22 子育て
入学辞退者にも返金されない私立大学の入学金。その総額とは?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
入学しない私立大学へ入学金を支払うのはなぜ?
一般的に入学金とは授業料以外に大学へ支払うお金を指す言葉です。名前からして入学と同時に、あるいはその直前に支払うもので、入学をしなかった場合は一部ないし全額が返ってくると思われるかも知れません。しかし、現在の日本の私立大学において一度支払われた入学金は、入学を辞退しても返金されないのが通常です。
判例においても、入学金は合格者が大学へ入学する権利を取得するための対価として扱われるため、大学側に入学金の返還義務はないものとされています。
私立大学の入学金納付は入学よりもかなり早く、遅くとも2月中や3月初旬頃までの支払いが求められます。これは国立大学の合格発表よりも早いスケジュールです。
すると、本命は国立や公立で私立は滑り止めで受けている学生や、既に合格した私立とこれから合格発表がある国立と悩んでいる学生であっても、選択肢として私立大学への入学を残すのであれば必然的に入学金の支払いが必要となるのです。まさに、入学金は入学する権利を保有するための対価となります。
入学金について、日本私立大学協会長(玉川大学長)の小原芳明氏は、合格者の入学の意思の有無は、大学側が合格通知を出した段階では不明である。そのため、入学意思の確認として入学金の支払いを設けており、それによって過不足なく学生を集めるようになっている、と入学金の存在意義について述べています。
入学しない私立大学へ支払う入学金などの総額は1人当たりどれくらい?
「2021年度保護者に聞く新入生調査概要報告」によれば、国公立大学に入学した学生が入学しなかった学校に支払った入学金などの総額は平均で27万8700円、私立大学に入学した学生が入学しなかった学校に支払った入学金などの総額は平均で29万6400円となり、実に30万円近くも入学しない学校に入学金などを支払っていることになります。30万円といえば、家庭によっては月の収入を上回る支出となるなど、決して安い費用であるとは言い切れません。
入学しない大学への入学金は度々問題となり、経済状況によっては入学金が払えず進学の選択肢が狭まったり、進学自体を諦めざるを得ない状況になったりということも起こっているようです。
2021年には大学生のグループが入学金の返金がされない現状は問題であることを呼びかける記者会見を文部科学省にて行うなど、入学金の取り扱いについての問題はコロナ禍による経済格差の拡大もあってか年々大きくなっているといえます。
この大学生グループが行った署名活動ではわずか1ヶ月で3万人分も集まるなど、入学金について世間の関心の高まりがうかがい知れます。
入学しない大学へ支払う入学金などは30万円を目安に
私立大学に合格した後、実際に入学資格を得るためには入学金の支払いが必須となります。一般的な学生が合格した私立大学に支払う、入学金を含めた費用の総額は30万円程度が目安になりそうです。
一度支払った入学金はその後入学を辞退しても戻ることはないため、今後この問題が経済格差の拡大と共に広がっていくこともあり得ます。将来を担う学生の未来が少しでも広がるよう、大人である私たちも大学生の入学金問題についてしっかりと考えていかねばならないでしょう。
出典
全国大学生協連 「2021年度保護者に聞く新入生調査概要」報告
朝日新聞DIGITAL (フォーラム)行かない大学に入学金
NHK “入学しないのに入学金”大学生たち 3万人署名集め改善求める
執筆者:柘植輝
行政書士