不妊治療の保険適用 どのくらい経済的負担が軽くなる?

配信日: 2022.03.23

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不妊治療の保険適用 どのくらい経済的負担が軽くなる?
自分たちの子どもを授かりたいと不妊治療に取り組むカップルは、年々増加する傾向が見られます。不妊治療にかかる費用は、家計にとって大きな負担となっていましたが、2022年4月から不妊治療において公的医療保険が適用されるようになります。
 
今回は、どのような条件の場合に保険が適用され、どのくらい経済的負担が減るのかを確認していきましょう。
下中英恵

執筆者:下中英恵(したなかはなえ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。

富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”

新たに保険適用となる不妊治療

今まで不妊治療では、費用の一部について助成を受けることができましたが、申請書類の用意をはじめ、助成金の受け取りまでに時間を要するなど、患者の負担が大きいものでした。
 
しかし、2022年4月から不妊治療のうち、以下の治療について公的医療保険が適用されるようになります。

・人工授精(排卵時期に合わせて精子を子宮内に注入する)
・体外受精(精子と卵子を採取して受精させる)
・顕微授精(注射針などを使って卵子に精子を注入する)

また、体外受精や顕微授精において受精卵の培養を行う費用、受精卵を子宮に着床する前の状態まで培養した胚の凍結保存費用、さらに胚を体内に戻す胚移植にかかる費用なども、保険の適用対象になる予定です。
 

保険適用の条件

不妊治療で保険が適用されるためには、年齢に条件があります。例えば体外受精や顕微授精では、治療を始める時点で女性の年齢が43歳未満であることを条件としています。
 
また、体外受精や顕微授精の胚移植については、女性の年齢が40歳未満の場合は子ども1人につき最大6回まで、40歳以上43歳未満の場合は最大3回までとなっています。
 
条件を満たさない場合でも治療は可能ですが、保険適用はされず、全て自己負担となります。
 

実際に支払う金額

不妊治療の保険適用により、治療費負担が実際にどのくらい軽減されるのかを確認していきます。
 
今までは、治療費は病院ごとに自由に決められており、統一されていませんでした。2022年4月からは、治療に合わせて保険点数によって治療費が決められるようになるため、病院によって大きく異なるということが少なくなるでしょう。
 
厚生労働省によると、人工授精と体外受精の治療を行った場合の1回の平均費用は、それぞれ3万166円、50万1284円となっています。
 
この平均費用を基にした場合、2022年4月以降の保険適用後に患者が支払う金額は、以下のように3割負担となります。

<人工授精>

保険適用前:1回 3万166円
保険適用後:1回 9050円

<体外受精>

保険適用前:1回 50万1284円
保険適用後:1回 15万385円

不妊治療は、1回の治療で結果が出るとは限りません。1~2年続けている方は多く、5年以上の長期に及ぶケースもあります。
 
例えば、体外受精を5回行った場合の費用は、全負担額では平均を基にすると250万円以上になりますが、3割負担では75万円程度です。不妊治療の保険適用により、大幅に自己負担額を抑えることが可能となります。
 
もちろん、保険が適用されても不妊治療には引き続き、ある程度の費用がかかります。どうしても子どもがほしいと考えている方は、家計の状況を確認し、費用の総額がいくらまでなら治療を続けることができるのか、マネープランを見直していくことも大切です。
 
また、可能ならば妊娠率が少しでも高まるように、そして治療期間や費用を最小限に抑えることができるように、早めに早めに治療に取り組むといいでしょう。
 

まとめ

今まで経済的な問題を理由に不妊治療をあきらめていた方にとって、不妊治療の保険適用は大きな支えとなります。不妊治療による妊娠を希望する方は、経済的な面でも計画的に治療を進めていきましょう。
 
出典
厚生労働省 不妊治療の実態に関する調査研究について
 
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

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