更新日: 2022.04.25 その他暮らし

加入要件が緩和された? 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

加入要件が緩和された? 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?
2022年1月より新設された雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の企業で勤務する65歳以上の従業員が特定の要件を満たす場合、特例的に雇用保険に加入できる制度です。本記事では、制度の概要や手続きの流れ、注意点などを総合的に解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?

少子高齢化による労働力不足や年金支給年齢の引き上げなどを背景として、高齢者の雇用を確保する政策が進められています。厚生労働省によると、2021年には高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保が努力義務化されたことに伴い、開始されたのが「雇用保険マルチジョブホルダー制度」です。
 
厚生労働省によると、これまで雇用保険に加入するには、

・主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上
・31日以上の雇用見込み

等といった要件を満たす必要がありました。
 
雇用保険マルチジョブホルダー制度では、以下の要件を全て満たすと特例的に雇用保険に加入できます。

・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
・2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・2つの事業所におけるそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

 
例えば、A事業所で1週間の所定労働時間が6時間、B事業所で1週間の所定労働時間が14時間といったケースでは、これまでの雇用保険制度では加入対象とはなりませんでした。しかし、雇用保険マルチジョブホルダー制度では合計の週所定労働時間が20時間となるため、加入の対象となります。65歳以上の労働者に関しては、雇用保険の加入要件が緩和されたといえるでしょう。
 

雇用保険マルチジョブホルダー制度の加入手続き

厚生労働省によると、通常、雇用保険の資格取得や喪失の届出は事業主が行います。しかし、雇用保険マルチジョブホルダー制度を使って雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となるためには、本人が居住地のハローワークに申し出る必要がある点に注意が必要です。
 
雇用の事実や所定労働時間などを証明する書類の発行を事業主に依頼します。制度の適用を受ける2社分の必要書類を用意し、ハローワークで申請を行いましょう。
 
なお、事業主には協力義務があるため必要書類の発行には速やかに応じなければなりません。事業主の協力が得られない場合にはハローワークを通じて確認が行われます。雇用保険マルチジョブホルダー制度利用の申し出をしたことを理由に解雇や雇い止め、労働条件の不利益変更など、不利益な取り扱いをするのは禁止されています。
 

失業時の給付金額は?

厚生労働省によると、マルチ高年齢被保険者が失業した場合には、高年齢求職者給付金を一時金として受け取れます。
 
離職の日以前の6ヶ月に支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額のおよそ5~8割を「基本手当日額」として算出します。被保険者であった期間が1年未満の場合は基本手当日額の30日分、1年以上の場合は50日分が実際に給付される金額です。
 
なお、算出の基礎となる賃金は離職した事業所の分のみが対象です。離職していない事業所の賃金については計算に含みません。
 

雇用保険マルチジョブホルダー制度は任意加入

厚生労働省によると、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、本人が申し出を行った日から被保険者となります。申出日より前にさかのぼって被保険者となることはできず、資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生します。
 
また、3つ以上の事業所に勤めている場合は、雇用保険に加入する事業所を2つ選択する必要があります。一度手続きをすると、加入する事業所を任意で切り替えることはできないため注意しましょう。
 
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、要件を満たした場合でも必ず加入しなければならないわけではありません。あくまで任意加入の制度となっているため、よく検討したうえで申請をしましょう。
 
出典
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
厚生労働省 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します
厚生労働省 Q&A~雇用保険マルチジョブホルダー制度~
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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