更新日: 2022.04.29 その他暮らし

万が一のための「緊急予備資金」とは? 災害ときに備えるため、今、確認しておくべきこととは

万が一のための「緊急予備資金」とは? 災害ときに備えるため、今、確認しておくべきこととは
日本では、地震災害が頻繁に発生します。ニュースを見て、「自分の住んでいる地域に大きな地震がくるのではないか」と不安な人も多いでしょう。南海トラフ地震や首都直下地震は、30年以内の発生予測確率が70%程度とされており、大きな被害が予想されています。
 
地震のほかにも、火災や病気、事故や失業など、予期せぬ事態が起こる可能性は十分にあり得ます。新型コロナウイルスの流行で、不測の事態への備えの大切さを実感した人も多いのではないでしょうか。
 
いざというときのために準備しておくべきお金(緊急予備資金)と、お金を準備する上で確認しておくべきことをまとめました。
勝川みゆき

執筆者:勝川みゆき(かつかわ みゆき)

ファイナンシャルプランナー2級・AFP

緊急予備資金とは?

緊急予備資金とは、「もしものときのために準備しておくお金」のことです。生活防衛資金とも呼ばれます。何かあったとき、生活を立て直すまでの間の生活資金と考えます。
 
一般に、会社員の人で生活費の3~6ヶ月分、個人事業主の人なら1年分程度を準備しておくとよいとされています。個人事業主の場合は、公的な補償が薄く収入が不安定になりがちであるため、多めに準備しておいた方がよいということです。
 
例えば、主たる生計維持者が会社員の世帯で、毎月の生活費が30万円の場合で考えてみましょう。ぜいたくをせず何とか切り詰め、1ヶ月で25万円あれば生活できるなら、緊急予備資金は25万円×3ヶ月で、最低75万円となります。25万円×6ヶ月で150万円あれば、とりあえずは安心といえるでしょう。実際には、家族構成や職種、生活スタイルによっても違いますが、ある程度のお金は用意しておくと、万が一の際にも当面の生活を維持する見通しが立ちます。
 
ただし、株式や投資信託は、緊急予備資金としてはあまりふさわしくありません。預貯金と比べると、すぐに現金化しにくいからです。すぐに使えるよう、緊急予備資金は預貯金の中から用意しておきましょう。
 
また、災害直後には現金が必要になります。5日~1週間、困らない程度の現金を、非常用持ち出し袋(避難所生活に必要なものをリュックに詰め、すぐに持ち出せるようにしたもの)に入れ、家に置いておくとよいでしょう。
 

緊急予備資金の準備方法 ライフプランに照らし合わせながら行う

安心した生活を送るためには、何が起きても立て直すことができる、強い家計づくりが大切です。緊急予備資金は、その一助となるものです。
 
緊急予備資金を正しく準備するためには、まず現状を把握しましょう。
 

ライフプラン作成

自分の人生のライフプランを立て、いつ、どれくらいのお金が必要になるのかを考えましょう。緊急予備資金は、人生の大きなライフイベントである結婚・出産や、子どもの教育資金、老後資金とは、分けて考えます。
 
考え方としては、ライフイベントは、ある程度お金が必要となる時期が予測できるのに対し、緊急予備資金は、使うときが来るかも分からず、時期も予測できない性質だと捉えてみましょう。そのうえで、必要な資金をどのように捻出するかを考えましょう。
 

資産・負債の把握

自分の資産がどの程度あるのか、負債はいくらあるのかを普段から、できるだけ正確に把握しておくことは、安定した家計管理だけでなく、災害時にも心の平安を保つ上でも役に立ちます。
 
現金や預貯金、株式や投資信託などの金融資産がどれくらいあるのかを、手帳などにまとめておきましょう。預け先の金融機関についても一緒にまとめておくと、いざというときにもすぐに現金を準備できます。
 
住宅ローンや自動車ローン、カードローンなどの負債がある人は、ローンの残高や、毎月いくらの返済があるのかを把握しておきましょう。もしものときには、ローンを返す余裕があるか、返済の猶予はできるかなどを検討する上で、必要な情報です。
 

公的な支援制度を確認しておく

公的な支援制度がどのようになっているかも把握しておくと役立ちます。
 
例えば、国による被災者生活再建制度があります。自然災害により住宅が全壊するなどした場合には、最大で300万円が(金額は世帯人数が複数の場合、単身世帯の場合はその3/4相当の金額)が支給されます。
 
また、自然災害により家族が死亡、または重い障害が残ったをおった場合には、市町村が実施する「災害弔慰金(生計維持者が死亡した場合、最大500万円)」や「災害障害見舞金(生計維持者が障害をおった場合、最大250万円)」が支払われることもあります。
 
大災害時には、企業も被災します。このことが影響して仕事を失う場合もありますが、雇用保険に入っていると失業等給付を受けられる特例措置が実施される場合があります。企業などが被災したことで休業を余儀なくされ、賃金を支払うことができなくなった場合に、労働者が実際には離職していなくても、失業給付を受けることができる措置です。一時的な離職の場合も、対象になります
 
このほか、自然災害が発生したことが原因で、仕事中や通勤中に被災してけがをしたときは、労災が認められる可能性もあります。
 

保険の確認と見直し

万が一のときのために保険に加入していても、保障が受けられる内容を的確に把握していなければ、必要なときに役立てられない恐れがあります。生命保険(死亡や病気、けがに備える保険)や、損害保険(火災保険、地震保険など)は、いくら保障されるのかを確認しておきましょう。
 
その上で、本当に家計にとって必要なのかを見直し、場合によっては選択し直す必要があります。代わりに浮いたお金で、緊急予備資金として確保しておくことをおすすめします。
 

万が一の備えとして、必要最低限を

緊急予備資金は、万が一のときの備えです。したがって、家電の買い替えや旅行などの娯楽のための貯金、住宅購入のための資金や教育費などとは別で準備しておきましょう。
 
万が一の備えがあることで、緊急時に慌てずに済みます。精神の安定にもつながります。もしものとき、とりあえず生活できる準備があるだけで、心の支えとなるでしょう。
 
必要最低限の緊急予備資金を準備した上で、少しでも余裕があれば、そのほかの貯蓄や資産運用のための投資に回し、資産を増やすことをおすすめします。
 

出典

内閣府 防災情報のページ みんなで減災 地震災害
内閣府 防災情報のページ みんなで減災 公的支援制度について
日本FP協会 災害に備える くらしとお金の安心ブック
 
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP

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