更新日: 2022.06.04 子育て
「朝課外」が続々廃止。「教師の働き方」と「学生生活」お互いに「助かる」?
「朝課外」を廃止することで、教職員や生徒・保護者の生活はどのように「助かる」のでしょうか。詳しく説明します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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朝課外とは
九州地方の高校で朝課外が始まったのは1960年代後半で、大学進学率を上げる目的のもとPTA主体で始められました。朝課外が始まった背景には地域特有の事情もあります。1960年代には都市部にこそ大学予備校はありましたが、九州地方の多くでは浪人をすると家を離れて都市部にある予備校に通う必要がありました。
浪人するとなると大学入学を断念せざるを得ない家庭も多かったのです。また、九州地方では九州大学あるいは地元の国公立大学に進学するのが良しとされてきました。
このような土地柄から、学校が始まる前や学校が終わった後の課外授業を充実させて、現役で大学に進学するための取り組みが行われてきたのです。九州地方以外の地方でも、朝課外に似た取り組みが行われているところはあります。近年では朝課外を廃止する動きも出ている一方で、PTAや保護者の要望から朝課外を存続するのを選んでいる学校も少なくありません。
朝課外の負担
公立高校の場合、朝課外はカリキュラムの範囲外で行われているため、国や各自治体の教育委員会は明確な指針を出していません。教職員には時間外手当として1分あたり70円程度がPTA会費から支払われていますが、準備が大変など教職員の負担は大きいものです。
文部科学省では2019年に自発的な勤務を含めた在校時間について、超過時間が年間360時間以内になるようガイドラインを策定していますが、それを超えて学校に滞在する教職員の割合も多いです。一方で、慣習化していることや進学率の向上につながると信じられてきたことから、断りたくても断れないという事情がありました。
PTAから手当を得る兼業のため教員の通勤時の事故に公務災害を適用できないことからPTAが保険に加入することもあるといいます。朝課外の負担は教職員だけではありません。PTA主体で行われているため本来ならば任意参加なのですが、実質強制参加となっています。
中には朝課外の時間を使って授業が進められるケースもあるようです。高校生の中には登校時間が早いため睡眠が十分に取れず集中力が保てないとの声が上がりました。朝課外が高校生にとって負担になっている問題は、2017年に福岡県議会でも取り上げられ、福岡県教育委員会は参加の意思確認をするよう公立高校に通達を出しました。
朝課外を見直した高校では
多くの学校では、学校長の判断で朝課外の廃止や運営のしかたを決めています。福岡市にある県立の進学校では、朝課外を強制ではなく任意とした結果、生徒が必要なときだけ朝課外を受けるように変化が見られました。朝課外を廃止する高校も増えてきています。福岡県のある県立高校は、遠方から通学する生徒が多いことを理由に2019年度から朝課外の全廃を決め、本来の授業を充実させるようにしました。
この学校の2019年度の大学入試結果と2022年度の大学入試結果を比べますと、九州大学の合格者こそ14人から12人となっていますが、北九州市立大学への合格者は30人から34人へと増えています。朝課外の廃止によって大学合格実績が大きく下がったということはうかがえませんでした。
私立高校でも朝の時間の使い方を見直したところがあります。ある高校では2021年度試験的に朝の登校時間を遅らせる試みをしたところ、生徒だけでなく教職員からも有効的に時間を使うことができるといった声が上がりました。
教育環境の変わる中、再考する時期かも
朝課外は予備校などが少ない地方に住む高校生の進学を支えてきた一方で、高校生や教職員の体力的な負担が大きいものでした。予備校や塾などの経済的負担は増えるかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインでの学習環境が整い、2020年度からは大学入試改革が行われる中、朝課外の存在だけでなく、学習のしかたや時間の使い方についても再考すべき時期に来ているようです。
出典
公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン【概要】
熊本県第1回働き方改革検討委員会 議事録
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部