更新日: 2022.06.21 子育て
奨学金は「併用」できる? 2つ同時に利用する場合は「将来の返済」についても要注意
本記事では、奨学金を同時に借りる「併用貸与」をめぐる実情と活用する際のポイントについて、日本学生支援機構(JASSO)の調査結果をもとに解説します。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
目次
JASSOで複数の奨学金は併用可能だが利用基準があるので注意
JASSOは、奨学金を2つ組み合わせて利用する「併用貸与」を認めています。併用貸与によって奨学金を受け取る方法には「給付奨学金と第一種奨学金の併用」と「第一種・第二種奨学金の併用」の2つのパターンがあります。
ここで、給付奨学金、第一種/第二種奨学金の違いを整理しましょう。
●給付奨学金:返済の必要がなく、授業料や入学金が免除または減額される奨学金
●第一種奨学金:返済の必要がある奨学金だが、貸与された金額に利子がつかない奨学金
●第二種奨学金:返済の必要がある奨学金で、貸与された金額に利子がつく奨学金
3つの奨学金を併用するためには、申込資格を満たす必要があります。例えば第一種奨学金と第二種奨学金を併用貸与する場合、学力基準や世帯の家計基準は第一種奨学金の要件に準じる必要があります。
このように、奨学金を併用すること自体は制度上可能ですが、資格要件を満たすハードルが高くなるため、生活状況などによっては併用できない可能性もあります。
JASSOは奨学金と併用してもOK
JASSOの調査では図表1の通り、大学や地方公共団体が独自で提供している奨学金制度の約9割がJASSOと併用可能です。
併用貸与を検討する際は、利用しようとしている制度が併用を認めているかどうか、事前に確認しておきましょう。
JASSOとそれ以外の奨学金を借りている人の割合
JASSOと他の団体からそれぞれ奨学金を借りる併用貸与の割合は図表2の通り、短期大学と大学院(専門職学位)を除くと増加傾向にあります。
奨学金の併用が増えている要因として、単一の奨学金だけでは学費の負担をカバーできていない実態があると考えられます。私立大学における併用割合が高いことからも、学費の高さが奨学金の併用率に結び付いていることが伺えます。
奨学金を併用している割合は増加しているが出口戦略は明確にしておく
行政は学生が奨学金を利用しやすいようさまざまな施策を打ち出していますが、奨学金を利用する際には、将来的に返済できなくなるリスクにも目を向けなければなりません。奨学金の延滞を経験した人の割合は約2割にのぼり、そのうち奨学金を延滞した理由で最も多かったのは「本人の低所得」となっています。
奨学金は教育費の負担を減らす有効な選択肢の1つですが、奨学金に頼る割合を少しでも減らすことができるよう、できるだけ早い段階から計画的に教育資金を準備しておくことが望ましいでしょう。
出典
独立行政法人 日本学生支援機構 令和元年度奨学事業に関する実態調査報告
独立行政法人 日本学生支援機構 平成28年度 学生生活調査結果
独立行政法人 日本学生支援機構 平成30年度 学生生活調査結果
独立行政法人 日本学生支援機構 令和2年度 学生生活調査結果
独立行政法人 日本学生支援機構 令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー