更新日: 2022.06.27 その他暮らし

【サラサラ!】選挙の投票に使われる「ユポ紙」って? 実は「紙じゃない」って本当?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

【サラサラ!】選挙の投票に使われる「ユポ紙」って? 実は「紙じゃない」って本当?
選挙の投票に使われる用紙の種類を知っていますか?サラサラしていて字を書きやすく、気になっている人も多いのではないでしょうか。
 
この投票用紙は「ユポ紙」と呼ばれ、「紙」と呼んではいますが、実は紙ではないのです。ユポ紙とはいったい何でできているのでしょうか。そこで今回は、ユポ紙の秘密に迫ってみます。
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実は紙じゃない?ユポ紙とは

ユポ紙とは、1969年に当時の王子製紙と三菱油化の合弁で設立した合成紙メーカー「ユポ・コーポレーション」(東京・千代田区)が独自開発した合成紙です。
 
ウッドチップや古紙等を原料とする一般的な「紙」とは異なり、ユポ紙は「フィルム法合成紙」という種類に分類されます。「紙」の原料は木材ですが、ユポ紙の原料はポリプロピレン樹脂と天然鉱物の無機充填(じゅうてん)剤です。
 
この主原料に添加物を加えて特殊な製造過程を経ることで、まるで紙のようなフィルムが完成するというわけです。
 

紙以上の書き心地!ユポ紙の特長

ユポ紙の特徴は、とにかく強靭(きょうじん)であるということです。製造過程で「ミクロボイド」と呼ばれる微細な穴が開けられ、この無数の穴がユポ紙特有の耐久性と耐水性を支えています。
 
また、高い耐久性能を持ちながら、紙に近いしなやかさがあることもユポ紙の特徴です。この強靭性としなやかさを併せ持つことで、ユポ紙は選挙の投票表紙以外にもさまざまなシーンで活用されています。
 
例えば、電車のつり革や車内広告、ホームの案内板など、駅を利用していれば一度は見たことや触ったことがあるものにも実はユポ紙が使われています。また、飲食店のメニュー表やタペストリー、ポスター、紙袋や地図にも使われるなど、現代人の生活にとってユポ紙はとても身近な存在となっています。
 

なぜ投票用紙にユポ紙が使われるようになったの?

ユポ紙は既に多様な場所で使われていますが、その存在を世に知らしめたのはやはり選挙の投票用紙です。1986年にユポの投票用紙販売が始まって以降、その評判は口コミで全国の自治体に広がりました。
 
その結果、2021年の衆議院選挙では、全都道府県の投票会場でユポ紙が使われたといいます。このように全国に広まった理由は、もちろんユポ紙特有の強さとしなやかさも理由の一つですが、実はそれだけではありません。
 
公職選挙法第65条によって、国内の選挙は「即時開票」で行うのが基本とされます。しかし、投票用紙が普通の紙の場合、実は即時開票が難しくなってしまうのです。というのも、投票所で投票用紙を投票箱に入れる際、普通は紙を折り曲げて入れます。
 
この時、投票用紙が普通の紙ですと、開票作業者が候補者名を確認する際、折りたたまれた紙を一度広げて伸ばさなければなりません。このひと手間が、速さと正確さが求められる開票作業の大きな妨げになっていたのです。
 
これに対し、ユポ紙には独特のしなやかさがあるため、投票用紙を折りたたんで入れたとしても、用紙が完全に折れ曲がってしまうことはありません。
 
投票箱の中で勝手に開いてくれますので、ユポ紙で選挙を行うと開票作業が非常に楽になるのです。こうした特有の性質によって、全国の投票会場でユポ紙が使われるようになっていったのです。
 

環境保護にも貢献!選挙でユポ紙を実感してみよう

合成樹脂から作られるユポ紙は、もともと森林資源の保護を目的に開発が進められたという経緯があります。実際、製造過程で木材を消費しないため、環境保護の観点から見てもユポ紙は優れた特徴を持つといえます。
 
原料が合成樹脂であるユポ紙を捨てる際は「プラごみ」に分別する必要があります。名刺印刷の用紙としてユポ紙になじみのあるビジネスパーソンもいることでしょう。ユポ紙は普通紙よりかなり割高で、A4サイズ、厚さ約0.25ミリメートル、20枚入りが2000円前後で市販されています。
 
破れにくい特徴と、選挙に「敗れない」というゲン担ぎから、選挙ポスターの用紙に使用する候補者もおり、ユポ紙と選挙の縁は深いものとなっています。次の選挙で投票する際はぜひ、使われている投票用紙にも注目してみてはいかがでしょうか。ユポ紙のしなやかさや、字の書きやすさなどにもきっと気付けるはずです。
 

出典

ユポ・コーポレーション すぐわかる!ユポの強み 紙とフィルムの良さをそなえる機能合成紙
三菱ケミカルホールディングスグループケミカルサイト 合成紙ユポ(R)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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