年収300万です。子どもを私立小学校に通わせたいのですが、国からの補助を受けることはできますか?
配信日: 2022.06.30
私立の高等学校や大学の場合、義務教育ではないことから、奨学金や補助金制度が充実していますが、私立の小学校や中学校ではそのような制度はあるのでしょうか?
国からの補助にどのような制度があるのか、また、自治体独自で行われている補助制度についても紹介します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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私立小学校に通うために必要となる教育費はどのくらい?
文部科学省の調査(平成30年度子供の学習費調査 ※1)によると、私立小学校で保護者が支出した1年間の学習費(子ども1人あたり)は159万8691円です。公立の小学校が32万1281円であることを考えると、実に5倍の費用がかかっていることが分かります。
さらに、小学校は6年間ですので、この6倍(約960万円)の費用がかかることになります。
■私立小学校の授業料は年間約48万円
上記の数字は、学校教育費、学校給食費、そして学校外活動費の合計額ですが、学校給食費については、公立小学校そして私立小学校とそこまでの差はなく、公立小学校だと年間約4万3000円、私立小学校だと、年間約4万7000円です。
もっとも大きな差が生じているのは学校教育費で、公立小学校の場合、年間6万3000円程度であるのに対し、私立小学校だと年間に約90万円が必要となっています。
この差の最大の理由は、授業料にあります。公立小学校は授業料がありませんが、私立小学校だと年間約48万円の授業料が発生します。
そのほかにも、学校納付金が約23万円、通学費も約9万円と、公立小学校と大きく差がついています。
【図表1】
(出典:文部科学省 平成30年度子供の学習費調査の結果について「公立・私立小学校における学校教育費の内訳」)
■学校外活動費も公立小学校の3倍
学校外活動費の中で最も支出が多い項目は「補助学習費」で、具体的には自宅学習や学習塾、家庭教師などの費用になります。
これが公立小学校だと8万2000円程度であるにもかかわらず、私立小学校の場合、34万8000円と、かなりの額を負担していることが分かります。
国が行った実証事業
私立小学校、私立中学校に通う児童や生徒に対する経済的支援に関し、文部科学省は平成29年度~令和3年度の5年間にわたり、実証事業(※2)を行ってきました。
■実証事業の目的
私立の小中学校などに通う児童、もしくは生徒への経済支援に関し、年収が400万円未満の世帯に属する児童および生徒について、授業料負担の軽減を行いました。
併せて、義務教育が用意されているなかで、あえて私立学校を選択している理由や、家庭の経済状況などの実態把握を調査の目的としています。
■事業の内容
1. 毎年7月1日時点で私立の小学校や中学校などに通っている児童もしくは生徒が対象
2. 対象となる世帯は年収400万円未満かつ資産保有額600万円以下(家族の状況によって異なる)
3. 支援額:年間最大10万円(学校側の代理受領)
4. 文部科学省が実施する調査に協力
自治体が行っている補助制度
国の実施する実証事業は令和3年をもって終了しており、今後実施については、まだ方向が発表されていません。しかし、自治体独自で行っている補助制度は存在します
■埼玉県が実施している補助制度
埼玉県では、「私立学校の父母負担軽減事業」を行っており、埼玉県内の私立高等学校などに通う生徒のほか、県内の私立小学校や私立中学校に通う生徒および児童も対象としています。申請は学校を通じて行います。
1. 対象となる学校
埼玉県が認可した私立の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校および高等専修学校
2. 補助要件
生徒および保護者が埼玉県内に居住しており、かつ、所得要件を満たすこと
3. 補助の対象となる学費
授業料、施設費等納付金および入学金。所得の状況により、授業料および施設費等納付金が実質無償化される場合もあり
(出典:埼玉県 私立学校の父母負担軽減事業について <令和4年度> ※3)
■小・中学校に対する補助内容
補助額:年額33万6000円
所得基準:世帯の住民税所得割額が35万4500円未満(新規申請の場合)
(出典:埼玉県 埼玉県父母負担軽減事業 補助金のお知らせ ※4)
まとめ
私立の小学校に通うとなると、年間の授業料ばかりでなく、学校外活動費も6年分必要になるため、6年間で1000万円近くの教育費が必要です。
また、この値は平均値ですので、通う小学校によっては授業料が平均値よりも高いケースが考えられるほか、自宅から遠い学校に通う場合は、その通学費用も考えておかなければなりません。
子どもが希望する進路は、できるだけかなえてあげたいと思うのが親心かもしれません。国の実証事業は昨年で終わりましたが、自治体の中ではまだ補助制度を実施しているところがあります。
自分の住んでいる自治体で補助制度がないか確認し、制度が設けられているなら、ぜひ利用しましょう。その際には、利用条件や申込時期なども忘れずに確認しましょう。
出典
(※1)文部科学省 平成30年度子供の学習費調査の結果について(令和元年12月18日)
(※2)文部科学省 私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業について
(※3)埼玉県 私立学校の父母負担軽減事業について(令和4年度)
(※4)埼玉県 埼玉県父母負担軽減事業 補助金のお知らせ(令和4年度)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員