更新日: 2022.07.15 その他暮らし

雇用者が義務を果たしていない?【労働条件明示】「書面で渡された」は6割届かず

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

雇用者が義務を果たしていない?【労働条件明示】「書面で渡された」は6割届かず
就業場所や給料、勤務時間などは会社によって異なります。実は労働条件を書面で交付することは、雇用形態に関係なく、法律が定めた「雇用者側の義務」です。
 
しかし、調査によると書面で交付していない企業も少なくないことが判明しました。労働条件の明示は、労働者が安心して働けるよう法律によって定められたものです。
 
今回は労働条件明示と会社の問題点について見ていきましょう。
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労働条件を明示することは企業の義務


 
労働条件の明示は必ず行われるもので、特に5つの項目「労働契約の期間」「就業場所と業務内容」「就業時間や休日などについて」「賃金の決定や支給方法」「退職について」は書面を交付して通知しなければなりません(労働基準法15条1項)。この労働条件について交付される書類を、「労働条件通知書」といいます。
 
今回参考にするデータは、連合(日本労働組合総連合会)の「入社前後のトラブルに関する調査2022」の調査結果です。調査は大学卒業後に新卒で正社員として就職した入社2年目~5年目の男女1000人を対象に実施されました。
 
調査結果によると、入社時に労働条件を「書面で渡された」と回答した人は59.9%。前回2016年の調査よりも6.1ポイント低い結果です。これを企業の従業員数別に見てみると、51人以上の企業では60%前後、50人以下の企業では49.4%と半数を切っています。この結果からは組織規模が小さくなると、人員の不足からか入社時の対応が十分でないと推測できます。
 

労働条件明示と会社が抱える問題点の関係


 
同調査によると新卒入社した会社を離職した人は33.2%でした。労働条件の明示方法別に会社の問題点を見てみると、口頭で説明した会社では「仕事に見合わない低賃金である」が42.6%、「募集要項や採用時の説明と実際の雇用条件・待遇が異なっている」が20.4%と全体から10ポイント以上高くなっています。このことから口頭による説明のみの場合、入社後にギャップを感じる人が少なくないことが読み取れます。
 
また、書面の明示・説明がなかったグループでは「精神的に不調になり辞める人が多い」が46.4%、「大量離職と大量採用が繰り返されている」が25.0%で、全体に比べ10ポイント以上高くなっています。労働条件について認識の乖離(かいり)が発生しているだけでなく、厳しい環境であることが推測できます。
 
一方、書面ではなく社内イントラネットなどで掲示されているグループでは、「時間外労働が恒常的である」が15.0%、「仕事に見合わない低賃金である」が16.7%と全体に比べ10ポイント以上低くなっています。デジタル化をはじめとする効率化への取り組みが、残業削減や納得のいく給与額につながっている可能性があります。
 
労働条件について書類が交付されたグループでも、離職率は3割にのぼり全体と大差はありません。しかし調査の結果から、目に見える形で労働条件を示せる企業のほうが、安心して働ける環境である可能性は高いといえます。
 
実際に働いてみなければわからない部分も多いですが、就職活動の際にはきちんと情報を集めて会社を見極めていきましょう。
 

入社時には労働条件をしっかり確認しよう

雇用形態に関わらず、労働条件について書類を交付するのは企業の義務です。労働条件についての書面は雇用契約書を兼ねている場合もあります。説明がない、口頭での説明のみといった場合には、入社後にギャップを感じる可能性があります。
 
安心して働けるよう、勤務地や勤務時間、休日、給与、退職などの詳細は、しっかり確認するようにしましょう。
 

出典

日本労働組合総連合会 入社前後のトラブルに関する調査2022
厚生労働省 採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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