更新日: 2022.07.22 子育て

出産一時金が「大幅に増額」される? 来年度から増額予定の出産一時金の現行制度を解説

出産一時金が「大幅に増額」される? 来年度から増額予定の出産一時金の現行制度を解説
2022年6月に、岸田総理が出産育児一時金(出産一時金)を「大幅に増額する」と表明して注目を集めました。特に都市部では、出産一時金だけでは持ち出しになっているケースも少なくありません。
 
その後の参院選でも争点となった「出産一時金」の現行制度について解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

出産一時金の現行制度を解説


 
出産一時金は、妊娠4ヶ月以上で出産をした人に支給される制度です。支給額は原則、以下の通りで支払われます。
 
・原則42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40万8000円)
※産科医療補償制度とは、出産に関連して重度脳性まひとなった新生児が速やかに補償を受けられる制度
 
出産一時金は健康保険の種類に条件がないので、全ての国民健康保険や全国健康保険協会(協会けんぽ)、総合健康保険組合(組合健保)など全ての保険が対象になります。また、出産の方法も問いません。自然分娩や帝王切開に関わらず支給される点も特徴です。
 

 

出産一時金の申請方法

出産一時金を受け取らず、医療機関への支払いに充てる方法に「直接支払制度」と「受取代理制度」があります。
 

●直接支払制度:出産育児一時金の請求と受取を医療機関等が行う制度
●受取代理制度:出産育児一時金の請求を行う際、健康保険から医療機関等へ直接出産育児一時金が支給される制度

 
どちらも申請にかかる手間や窓口の負担を減らす目的で始まった制度で、医療機関で出産費用の全てを支払う必要がなくなります。ただし、出産にかかった費用が42万円以上になりますと、窓口で差額を負担しないといけません。
 
出産一時金よりも出産費用が少なかった場合は、申請すれば差額分を受け取ることができます。申請の方法は、医療機関から「支給決定通知書」が届く前後で異なりますので図表2で確認しておきましょう。
 

 
出産一時金を急いで受け取る必要がないなら、手間の少ない支給決定通知書類が届いてから申請しましょう。
 
受取代理制度は、出産の2ヶ月前から事前に健康保険へ申請しておく必要があります。受取代理制度は直接支払制度と同じように、出産費用が42万円を越えると差額精算が必要となります。病院によって、直接支払制度と受取代理制度のどちらが使えるか異なりますので、事前に確認をしておきましょう。
 

出産一時金を直接受け取る方法もある

直接支払制度や受取代理制度を利用せず、出産一時金を受け取る方法もあります。まず、出産を予定している病院と合意文書を締結しておきましょう。合意文書とは「直接支払制度や代理受取制度を利用しないことを確認する」書類なので、出産前に取り交わしておかなければなりません。
 
合意文書の締結後、出産にかかった費用を医療機関に支払います。その後、必要な書類を加入している健康保険の窓口へ提出して、出産一時金を受け取ります。申請に必要な書類は以下の通りです。
 

●出産証明書や戸籍謄本など
●合意文書のコピー
●出産費用が記載されている医療機関等の領収・明細書のコピー

 
出産一時金は、直接支払制度や代理受取制度を利用せず受け取る方法もあります。
 

来年度の増額が期待される出産一時金について注目が集まる

 

 
出産一時金について現行制度や申請方法を解説しました。2015年から原則42万円としている出産一時金ですが、都市部では出産費用が足りない事情を受けて「増額の幅は3万円程度」を政府に申し入れています。
 
特に問題視されているのは、出産一時金だけでは費用をカバーしきれない状況です。出産にかかわる費用は全国平均で約46万円となっており、私的病院や都市部は出産費用が高く出産一時金だけではカバーしきれていません。
 
来年度からの増額を検討していますが、今後いくら出産一時金が増額されるか注目が集まります。
 

出典

全国健康保険協会 協会けんぽ 出産育児一時金について
厚生労働省 出産育児一時金の直接支払制度に関してよくあるお問い合わせ(Q&A)
読売新聞 出産一時金「45万円程度に増額を」、自民議連が提言へ…東京で平均支出60万円

厚生労働省 出産育児一時金について

公益財団法人 生命保険文化センター 出産にかかる費用はどれくらい?

 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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