共有名義の不動産が占有された!? 占有された場合の対処方法を解説
配信日: 2022.07.25
共有名義になっている場合、対処できることとできないことがあります。本記事では、共有名義の不動産が占有された場合の対処方法を解説します。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
共有名義人ができることとは
不動産を複数の人たちで所有することを「共有」といい、共有者はそれぞれの持分に応じて共有物の使用ができます。共有持分は、不動産全体に対して権利を持っているもので、不動産の「この部屋」の権利を持っているなどではありません。
保存行為
保存行為は、共有名義人が「単独」でできる行為を指します。具体的には、修繕や法定相続に基づく所有権移転登記などがあります。
また、1人の共有名義人は、不動産全体に対して使用する権利を持っているため、居住したい場合に住むことが可能です。ただし、1人が居住することになるため、他の共有名義人は、持分割合に応じた賃料を支払うことになります。
管理行為
管理行為は、共有名義人の過半数の同意が必要な行為を指します。具体的には、不動産のリフォームや、第三者に賃貸借契約を解除する場合などです。
共有している不動産を賃貸借し、第三者と契約している場合、契約を解除する場合には、共有名義人の過半数の同意が必要です。また、不動産のリフォームやリノベーションについても同様となります。
変更行為
変更行為は、共有名義人全員の同意が必要な行為を指します。具体的には、不動産の売却や、建て替えなどがあります。
共有している不動産を売却する場合、全員の同意が必要です。もし、1人の共有名義人が所有する共有持分を売却する場合は、自由に売却ができますが、買い取る不動産会社などからすると使い勝手が悪いため、買取を拒否されたり、相場よりも低い価格で買い取られたりする場合もあるでしょう。
しかし、全員の同意によって売却ができれば、単独名義で売却する不動産と変わらなくなります。
もし共有名義の不動産を占有された場合
共有名義の賃貸不動産を別の人に占有されて、居座られてしまう場合があります。その場合の対処行動は、共有名義人1人で、無権利者に対して明け渡し請求ができます。もし、明け渡し請求に応じなければ、不動産を管轄する地方裁判所に対して強制執行の申し立てを行って、強制執行することになるでしょう。
無権利者によって不動産が占有された場合、共有名義人は「保存行為」として単独で対処することができます。
共有名義人ができないこと
不動産の共有名義人が、できることは「保存行為」、「管理行為」、「変更行為」となっているため、何ができて何ができないのかを事前に把握しておくと良いでしょう。
共有名義人の1人が本来はできない不動産を売却した場合、別の共有名義人は、売却を差し止めることができ、そこで被った被害額は、勝手に売却した不動産名義人が負うことになるでしょう。また抵当権の設定を1人の共有名義人が行った場合、不動産全体に及ばず、1人の共有持分の範囲内で抵当権が及ぶことになるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所 共有の法律関係の基礎知識
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士