更新日: 2022.07.28 その他暮らし

うちの会社は交通費上限が3万円。これって多い、少ない?

執筆者 : 柘植輝

うちの会社は交通費上限が3万円。これって多い、少ない?
通勤に必要な交通費がどのくらい支給されるのかは会社によって異なっています。実費で支給される会社もあれば1万円まで支給という会社も存在しています。
 
仮に月の交通費の上限が3万円だとしたら、それは全体から見て多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

通勤費の支給は義務ではない

意外に思われるかもしれませんが、従業員の通勤にかかる交通費を支給する義務はありません。求人サイトやハローワークなどで求人票を見ていると多くの会社において交通費が支給されているのを目にしますが、これはあくまでも会社側が福利厚生や諸手当の一つとして支給しているものにすぎないのです。
 
参考までに、独立行政法人労働政策研究研修機構の「企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査」によれば、正社員など期間を定めず雇用されている従業員が1名以上存在する企業において、通勤手当が支給されている割合は89.8%と9割近い会社において通勤手当が支給されているようです。
 

通勤手当の上限額が3万円は少ない? 多い?

通勤手当が支給されるとはいえ、会社の就業規則など規定によって上限額が決定されているため、実際にかかった通勤費全額が通勤手当として受け取れていないという人もいらっしゃるでしょう。
 
独立行政法人労働政策研究研修機構の「企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査」によれば、正社員など期間を定めず雇用されている方に支給される交通費の上限がある会社は39.3%、規定がない会社が56.2%と、交通費の支給上限が就業規則に規定されていない会社が圧倒的に多くなっています。
 
就業規則に交通費の上限が設定されている場合の上限額は平均3万4260円となっています。
 
また、就業規則に上限が定められていない場合に、別途他の規定などで交通費に上限が支給されているかいないかという点について、上限額がある会社はわずか11.5%、ない会社が83.6%と上限額が存在しない会社が圧倒的多数なようです。上限額がある場合は平均2万7583円となっています。
 
上限額が設定されていない会社が大多数であることを考えると、交通費の上限が3万円というのは多いとはいえず、どちらかといえば少ないといえるでしょう。
 

交通費が3万円で足りないなら引っ越しも検討を

会社から支給される交通費が3万円であるため、毎月自費で交通費を出して会社に通勤しているという場合、よほどの理由がない限りは引っ越しを検討してもよいかもしれません。確かに通勤のために支給される交通費は非課税であり、交通費によって所得税や住民税が増えることは原則ありません。
 
しかし、社会保険料は別です。健康保険や厚生年金の保険料は給与に応じて標準報酬月額が決定され、それに基づいて毎月の保険料を支払うことになります。その標準報酬月額には通勤のための交通費が含まれてしまうため、通勤交通費が高いと標準報酬月額が高くなり、毎月の健康保険料や厚生年金保険料が高くなってしまい、手取り金額が減ってしまう可能性があるのです。
 
健康保険料や厚生年金保険料を多く納めることは将来の給付が手厚くなる反面、現在の手取り額が減ってしまい、今の豊かさが犠牲になってしまいます。
 
自費で長い通勤時間を過ごし、その上手取りまで減るという状況を続けるのは日々の負担が大きいと言わざるを得ません。持ち家で引っ越せないなどの状況でない限り、交通費が3万円で足りないのであれば、引っ越しを検討してみてください。
 

交通費の上限が3万円はどちらかといえば少ない

月の交通費がいくらまで出るのかは会社によってさまざまです。通勤にかかる交通費を支給する義務が会社側にないとはいえ、交通費の上限額が定められていない会社が多数であることなどを考えると、月の交通費の上限が3万円というのはどちらかといえば少ないと考えられます。
 
これを機に通勤交通費について考えてみると、働き方に関していつもと違うものが見えてくるかもしれません。
 

出典

独立行政法人労働政策研究研修機構 企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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