取引先が倒産! 経理処理はどうしたらよいの?

配信日: 2022.08.16

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取引先が倒産! 経理処理はどうしたらよいの?
事業をしている方で、取引先が倒産して売掛金や未収金が回収できなくなることは、まったくあり得ない話ではありません。そのような場合には、適切に仕訳対応を行う必要があります。
 
回収不能の場合には貸倒損失を計上しますが、仕訳をするときには一定の条件を満たしていなければなりません。万が一の場合に誤った仕訳処理を行わないよう、適切な対応方法について知っておくべきです。
 
今回は、売掛金が回収不能な場合の仕訳方法や、回収不能時の対応などについてお話しします。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

貸倒損失とは?

貸倒損失とは、売掛金や未収金、貸付金が、取引先の倒産などによって回収不能になったことによる損失のことです。要件を満たした期に損金として計上できますが、計上時期が決まっていますので、もしそのタイミングを逃してしまった場合、貸倒損失とは認められない可能性があります。
 
具体的には、


・売掛金の回収不能
・貸付金の回収不能
・受取手形の回収不能
・未収入金の回収不能
・立替金の回収不能

が該当します。
 

税務上、貸倒損失が計上できるのは?

税務上貸倒損失を損金算入できるのは、(1) 法律上の貸倒れ、(2) 事実上回収不能状態にある貸倒れ、(3) 形式上の貸倒れの3つです。
 

(1) 法律上の貸倒れ

債権の全部または一部が法律上消滅する場合です。


・更生計画認可の決定がされた場合
・再生計画認可の決定がされた場合
・債権者集会の協議決定等で合理的な債権切り捨てがなされた場合
・特別清算にかかる協定認可の決定がされた場合
・債務者の債務超過状態が相当期間続き弁済が受けられず、書面にて債務免除が通知された場合

などが該当します。これらの場合の貸倒損失の計上は、免除額・切捨額を貸倒損失に計上します。
 

(2) 事実上の貸倒れ

債務者の支払い能力(資産状況)からみて、回収が不能であることが明らかになってしまった場合です。この判断は、債務者の資産状況や支払い能力などから判断しなければなりませんので、それなりに回収努力をする必要があり難易度が高いです。
 
その上で、債務者の財務諸表や不動産登記簿、借入状況などの資産状況を証明する書類を集めて税務署に提示し、事実上回収不能である旨を説明できるようにする必要があります。
 
また、この時点でその債権について担保物がある時には、その担保物を処分した後でなければ貸倒損失は計上できません。これらの場合の貸倒損失の計上は、全額を貸倒損失に計上します。
 

(3) 形式上の貸倒れ

売掛債権について取引停止後一定期間弁済がない、もしくは回収費用が債権の額を超えてしまうため、貸倒れとする場合です。この貸倒は売掛金や受取手形等の売掛債権に限られ、貸付金などの貸付債権には適用されません。
 
これらの場合は、備忘価格として1円を残した上で残りを貸倒損失に計上します。
 

決算書(損益計算書)ではどこに区分されるの?

貸倒損失は、損益計算書の「販売費および一般管理費」「営業外費用」「特別損失」のいずれかに区分されます。
 
■販売費および一般管理費」
売掛金など営業上の取引先に対する貸倒損失です。
 
■営業外費用
貸付金など通常の営業以外の取引で生じた貸倒損失です。
 
■特別損失
経営に大きく影響を与えるような、臨時的かつ額が大きい貸倒損失となります。
 

普段からチェックすることが大切

取引先が急に倒産したといっても、実際にはその前から何かしらの前触れがあるものです。少しでも不安があれば、あらかじめ取引を縮小したり、支払サイトを変えてもらったりして、少しでも被害を小さくできるような方法を考えるのがよいでしょう。
 
また、倒産によってご自身にも影響がありそうな場合は、経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入や、日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)の利用なども考えておくとよいでしょう。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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