更新日: 2022.08.23 その他暮らし
「みなし残業代」と「固定残業代」の違いってご存じですか? それぞれのメリット・デメリットを紹介
「固定残業代」や「みなし残業代」などといわれるこれらの制度は、どのようなものなのでしょうか? それぞれの違いも含めて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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みなし残業代とは?
みなし残業代とは、あらかじめ支払う賃金の中に残業代を含ませた賃金体系を採用することで、「みなし労働時間制(※1)」に基づいて定められるものです。
みなし労働時間制には、「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。
■事業場外みなし労働時間制
事業場外で働く場合に適用されるもので、労働時間の算定が難しい場合において、「原則として所定労働時間を行ったものとみなす」制度です。
■専門業務型裁量労働制
デザイナー、システムエンジニアなど、業務を遂行する手段や時間の配分などに関し、使用者が具体的な指示をしない19種類の業務について、実際の労働時間数とは関係なく、労使協定で決めた労働時間を適用する制度です。
ちなみに19種類の業務(※2)とは、以下の業務があてはまります。
1. 新商品もしくは新技術の研究開発、または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
2. 情報処理システムの分析もしくは設計業務
3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材、もしくは編集の業務、または放送番組の制作のための取材、もしくは編集の業務
4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告などデザイン考案業務
5. 放送番組や映画などの制作におけるプロデューサーおよびディレクター業務
6. コピーライター業務
7. システムコンサルタント業務
8. インテリアコーディネイター業務
9. ゲーム用ソフトウエア創作業務
10. 証券アナリスト業務
11. 金融商品開発業務(金融工学などの知識を用いたもの)
12. 大学における教授研究業務
13. 公認会計士
14. 弁護士
15. 建築士
16. 不動産鑑定士
17. 弁理士
18. 税理士
19. 中小企業診断士
■企画業務型裁量労働制
事業運営の企画や立案、調査、分析の業務で、業務遂行の手段や時間配分に関して使用者が具体的な指示を行わない業務に関して、実際の労働時間ではなく、労使委員会で決めた労働時間数を適用する制度です。
固定残業代とは?
固定残業代とは、あらかじめ時間外労働時間を決めておき、それに応じた毎月定額の残業代を支払う方法で、手当や給与などに含めて設定されています。
■残業代と固定残業代は異なる
固定残業代はあくまでも残業代の1つで、残業で行う業務にはあらかじめ決めていたもの以外のものも存在します。
つまり、想定外(あらかじめ決められていた時間外労働時間以外)の時間外労働に該当する部分は固定残業代とはならず、残業代として扱う必要があります。
みなし残業代と固定残業代の違い
みなし残業代とは、みなし労働時間制に基づいて算定されるもので、固定残業代とは、あらかじめ時間外労働時間を決めておき、その時間に該当する残業代を定額で支払うものです。
みなし残業代に該当するためには、それぞれの制度に該当する基準を満たす必要があり、労使協定の締結や労使委員会の設置、さらには労働基準監督署への届け出や、該当する労働者本人の同意も得なければなりません。
また、みなし残業代を採用している場合、深夜割増や休日割増の賃金が支払われない点や、週に40時間を超える残業を行った場合の割増賃金が支払われない点も覚えておきましょう。
就業規則を確認しておこう
あらかじめ残業代が給与に含まれている点は同じですが、その内容はみなし残業代と固定残業代とでは異なります。会社で採用している残業代の制度が、どちらの体系に基づいているのかを確認しておくことが大切です。
そのために必要となるのが、雇用契約書です。雇用契約書は雇用者と従業員との間で交わす契約書の中に、みなし残業時間や、それに該当する賃金が明記されているかどうかを確認しておきましょう。
また、就業規則でも確認できます。就業規則に記載されている「所定労働時間」がどのようになっているかを確認することで、みなし残業制度に基づいたみなし残業代なのか、固定残業代なのかが分かります。
まとめ
事業場外みなし労働時間制については、最近導入する企業が増えたテレワークにも適用されるケースがあります。適用については、「業務が自宅で行われること」など一定の基準を満たす必要がありますが、労働時間の計算が難しいかどうかが適用可否のポイントです。
ただ、みなし残業制を適用するには労働基準監督署への届け出が必要となっており、なかなか導入しにくいといった現状があります。
自分の給与体系が残業代を含むものであれば、それがみなし残業代なのか固定残業代なのか、確認しておきましょう。
また、固定残業代ならば、何時間分として計上しているかを確認し、それを超えた残業については、別途残業代として受け取れることを知っておくとよいでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 労働時間・休日
(※2)厚生労働省 専門業務型裁量労働制
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員