更新日: 2022.08.23 その他暮らし

「残業代込み」の給料は違法? 残業代込みで給与が支払われている場合でも、残業代請求できる?

執筆者 : 新井智美

「残業代込み」の給料は違法? 残業代込みで給与が支払われている場合でも、残業代請求できる?
残業代込みの給与体系を導入している企業がありますが、導入のためには所定の条件を満たしたうえで、事業者は必要な手続きを行わなければなりません。
 
また、残業代込みの給与体系の内容によっては、残業代が請求されるケースもあります。
 
今回は、残業代込みの給与体系について解説するとともに、残業代込みの給与が認められる要件についても併せて紹介します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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残業代込みの給料とは?

残業代込みの給与体系には、「みなし残業制度」に基づくみなし残業代を適用しているものと、あらかじめ残業時間を決めて、それを給与に含めた固定残業代を適用しているものがあります。
 

残業代込みの給与は違法?

残業代込みの給与でも、要件を満たしており、必要な手続きを取っていれば違法にはなりません。
 
ちなみに、みなし残業代を適用するためには、みなし労働時間制(※1)に基づいた内容でなければなりません。
 

■みなし労働時間制とは

「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3つに分かれており、専門業務型裁量労働制は、業務が19種類に限定されているほか、労使協定の締結や労働基準監督署への届け出などが必要です。
 
19の業務に該当しない場合は、適用することができません。また、事業場外みなし労働時間制は、主に事業場外での労働で労働時間の算定が難しい場合に、原則として所定時間労働を行ったものとみなす制度です。
 

■固定残業代とは

固定残業代とは、みなし残業代と異なり、あらかじめ残業するであろう時間を決めておき、それに応じた定額の残業代を給与に含める方法で、業務の制限はありません。
 
ただ、みなし残業代と異なるのは、あらかじめ残業するであろう時間を超えた部分については、残業代として取り扱い、別途労働者に支払わなければならない点です。
 

残業代込みの給与が認められるための要件

残業代込みの給与が認められるための要件とは、どのようなものでしょうか?
 

■設定されている残業時間が月45時間を超えていないこと

時間外労働には上限(※2)が決められており、原則として月45時間、年間360時間となっています。
 
そして、臨時的かつ特別な事情がない限り、これを超えることはできません。そのため、設定する残業時間は月45時間より少なくなければなりません。
 

■みなし残業代、もしくは固定残業代が1時間あたりの賃金の1.25倍以上になっていること

時間外および休日や深夜の割増賃金については、その割増率(※3)が決まっています。
 
法定時間外残業であれば、1時間あたりの賃金の1.25倍となっており、それよりも低い割増率で計算されている場合は違法になります。
 

■残業代込みの給与体系であることを労働者に周知していること

残業代込みの給与体系を採用する場合、会社の従業員にその旨周知することが義務化されています。
 
周知されていない場合は違法となるため、給与規定などに明記、周知するようにしましょう。
 
また、採用の場合も同様です。募集要項に残業代込みの給与体系であることをきちんと示しておかなければなりません。周知する際には、「基本給(固定残業代なし)の額」と「固定残業代に関する労働時間数と割増賃金の計算方法」が分かるようにしておく必要があります(※4)。
 
固定残業代を採用している場合であれば、「設定している残業時間を超えた部分については追加支給する」ことを明記しておかなければなりません。
 

残業代込みの給与体系でも残業代の請求は可能?

前述のとおり、採用している体系が「固定残業代」であれば、設定している残業時間を超えた部分について残業代を請求できます。支払っていない場合、事業者は違法になりますので、必ず請求するようにしましょう。
 
そのためにも、自分たちの給与体系がみなし残業制度に基づく「みなし残業代」を採用しているのか、「固定残業代」を採用しているのかをしっかりと把握しておく必要があります。途中で給与体系が変わった場合などは、規則をしっかりと確認しておきましょう。
 

まとめ

残業代込みの給与は、要件を満たしたものであれば違法ではないため、勤務先の給与形態を事前に確認しておくことが大切です。
 
特に、周知義務を怠っている場合は、早急に周知してもらう必要がありますし、内容についても分かりやすく明記してもらわなければなりません。
 
また、固定残業代の場合は、設定時間を超えた部分について残業代を請求できますので、入退記録やパソコンの利用履歴など、証拠になるものを示して請求するようにしてください。手続きなどが分からない場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 労働時間・休日
(※2)厚生労働省 時間外労働の上限規制
(※3)厚生労働省 福岡労働局 7.時間外、休日及び深夜の割増賃金
(※4)厚生労働省 静岡労働局 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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