更新日: 2022.09.06 子育て

大都市とその他の地域では、教育費にどのくらい差があるの?

執筆者 : 伊藤秀雄

大都市とその他の地域では、教育費にどのくらい差があるの?
教育費は、公立と私立の違いで大きく異なりますが、住んでいる都市の規模とも密接に関係しています。
 
本稿では、公立小学校の教育費について解説します。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

学校への支出は大都市のほうが少ない

全国の教育費調査の結果を市町村の人口規模別にまとめた資料が、文部科学省の「子供の学習費調査」(※)にあります。今回は、この公立小学校のデータを取り上げました。なお、金額は全学年の平均値です。
 
【表1】

図表1

 
指定都市というのは、50万人~300万人規模の都市、例えば横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸といった都市などです。これら大都市と、5万人未満の市町村を比較してみます。
 
学習費総額は「指定都市・特別区」が「5万人未満」の市町村の1.7倍ありますが、義務教育として全員にかかる「学校教育費」は人口規模によらずおおむね近い額です。ここは差が出ないだろうと思いましたが、その中でも指定都市・特別区がもっとも少なくなっています。授業料等に含まれる生徒会費・学級費、学用品・実験実習材料費といった支出が、他の規模の市町村より少ないのです。
 
中でも学用品・実験実習材料費への支出は、5万人未満の市町村が1万9894円でもっとも多く、もっとも少ない指定都市・特別区より約5800円多い結果となっています。生徒が少ないと学校・学級運営にかかる1人あたり費用負担が高い、また実験実習材料費の単価が高くなるといったことが考えられます。
 

学校関係以外の支出の差

大きく差がつくのは「学校外活動費」で、こちらは2.2倍以上あります。特に学習塾への支出額が、指定都市・特別区では5万人未満の市町村の約5倍と、大きく差をつけています。
 
この学習塾を含め、特に差の大きかった3つの支出項目について、青字でパーセント数値を付記しました。各市町村で、この3つの項目に支出があった世帯の割合を示します。
 
この3項目への支出金額と、支出世帯の割合を見比べると、実は金額の差ほどには支出世帯割合に差がないことが分かります。言い換えれば、「学習塾」「スポーツ・レクリエーション活動」「教養・その他」に支出した世帯数の割合に大差がなくても、大都市ではサービス単価が高い、頻度が高い(長時間かける)、複数の習い事に通う、といったことで金額が大きくなっていると考えられます。
 
なお、学習用・教養向けともに、図書への支出は5万円未満の市町村より指定都市・特別区で2倍近くありました。
 

都市的機能の比較

このような違いが生じる背景を探っていきます。もちろん単純ではなく、物価やサービス提供者の数など、多数の要因が関係するのですが、ここでは都市の規模別に確認できるデータから比較してみます。人口規模の人数区分が表1と異なるので、大まかな規模感で重ねてみてください。
 
【表2】

図表2

 
この表からは、人口が10万人以上になると、各都市的機能の立地が6割を超えてくるようです。書籍や学習教材、知的好奇心を惹くさまざまな商品など、大型商業施設の身近さは大都市の教育費支出の多さにも関係あるでしょう。
 
ただ、5万人以上10万人未満の市町村では、他の中心都市と近接する場合ですと、これらの立地が少ないことがわかります。その市町村単独では文化施設を立地せず、近接都市間で相互補完している関係が確認できます。また、移動手段である公共交通機関の利便性は、さまざまな機会を身近なものにするのに有利に働きそうです。
 
5万人未満の市町村も、ネット販売の利用や、学習塾のオンライン・オンデマンド配信を活用することで、地理的な影響はある程度縮小可能です。お金をかけられていない項目を見ると、スポーツを含むさまざまな習い事や文化・芸術に触れる機会を、日常的につくることに難しさがあるようです。
 

まとめ

公立小学校でも、都市人口の規模で学習費総額が大きく異なっていました。その差は、学習塾だけでなく、文化・教養・スポーツなどの体験・体感機会に費やす費用も大きいことがわかりました。教育資金の準備には、居住する市町村規模も参考になりそうなことが読み取れます。
 
公立の小中学校に進学予定の場合、その後の受験や大学の教育資金の準備に、大都市との費用差額を有効に積み立てる考え方もあります。例えば、5万円未満の市町村と指定都市では学習費総額の差が約16万8000円です。月額1万4000円なので児童手当に近いですね。これを小学校卒までの12年間積み立てると、1人約200万円になります。
 
一方、統計や金額に出ない学び、近隣・地域や自然との関わりなども大事な学習対象です。自分の住む街のサイズと環境を子どもの発達に上手に生かしながら、教育資金の準備を進めていきたいものです。
 

出典

(※)文部科学省 子供の学習費調査(平成30年度)
国土交通省 地域生活圏に係るデータ等
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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