更新日: 2022.09.07 子育て
年収1000万円でも、私立高校授業料の実質無償化の対象になるケースとは?
しかし「授業料の無償化」は、高校生全員が対象になっているわけではありません。今回は、年収1000万円の世帯での私立高校の「授業料の実質無償化」は可能なのかについて説明します。
高等学校の現状は
高校進学率は、昭和49年に90%を超え、その後ほぼ100%(全日制・定時制・通信制含む)に近い状態で推移しています(※1)。
学校数は、国・公立高校は3552校、私立高校は1322校の合計4874校あります。少子化による人口減少の影響で、平成2年度をピークに、公立高校は減少していますが、国立・私立高校については、ほぼ平成2年度の学校数を維持しています。
そして学生数は、国・公立高校で213万人、私立高校は117万人の合計330万人です。国・公立高校の生徒が3分の2、私立高校の生徒が3分の1という割合になっており、3人に1人が私立学校の生徒です。
高校授業料の無償化のスタートは
「高等学校等就学支援金」とは、平成22年度から実施された制度で、国からの支援金(返還不要)で授業料が実質無償になる制度です。そして、この制度は令和2年4月の改正までは、次のような形で続きました。
その内容を見てみると、「就学支援額の上限額」は、所得区分により、
(1)年収が270万円未満 29万7000円
(2)年収が270万円から350万円未満 23万7600円
(3)年収が350万円から590万円未満 17万8200円
(4)年収が590万円から910万円未満 11万8800円
となっています。
公立高校の場合は、年間授業料が11万8800円(月額9900円)ですので年収910万円未満の家庭の生徒の授業料は実質無償となります。
この「就学支援金」は、生徒や保護者が受け取るのではなく、学校が生徒に代わり受け取り授業料に充当します。ただ、私立高校の授業料は公立高校より高いので、就学支援金との差額については、個人で負担しなければなりませんでした。
なお、「就学支援金」を受けるには、高校入学後に学校からの案内に従って申請手続きをすることになります。
また生徒を支援する制度は、他に自治体が実施する高校生等奨学給付金などがあり、利用できる場合もあります。
私立高校授業料実質無償化とは
令和2年度の改正で、目安として年収590万円未満の世帯の支援額の上限が39万6000円(私立高校の授業料相当額)になり、それにより年収590万円未満の家庭では支援が手厚くなり、私立高校でも公立高校同様に実質無償化になりました。(※2)
判定基準の計算式(令和2年7月分以降)は、
「市町民税の課税標準額×6%-市町民税の調整控除の額」となります。
その額が、15万4500円未満の場合は、最大39万6000円の支給
その額が、15万4500円~30万4200円未満の場合は、11万8800円の支給
となります。
支援の対象となる世帯の年収目安としては、
(1)高校生(扶養控除対象者)が2人おり、両親の一方が働いている家庭では、
年収が約640万円までは、就学支援金39万6000円の支給
年収が約950万円までは、就学支援金11万8800円の支給
となります。
(2)高校生(扶養控除対象者)が2人おり、両親が共働きの家庭では、
年収が約720万円までは、就学支援金39万6000円の支給
年収が約1070万円までは、就学支援金11万8800円の支給
となります。
※私立学校(全日制)の場合で、給与所得のみ・両親の収入は同額として計算
年収1000万円でも、私立高校授業料の実質無償化に?
令和2年以降の就学支援金の判定基準は、年収区分ではなく「市町民税の課税標準額」(令和2年7月分以降)で判断するため、年収で1000万円を超えても私立高校授業料が実質無償になるケースがあります。
生徒の親が会社員(給与収入のみ)の場合で計算してみると、
「市町村民税の課税標準額」=「給与収入-給与所得控除-所得控除」となります。
なお「給与所得控除」は、会社員が経費として認められた費用であり、「所得控除」には、社会保険料控除・生命保険料控除・医療費控除・扶養控除・小規模企業共済掛金(iDeCoなど)などがあり、経費として算入できます。
年収1000万円以上であっても、この計算式で算出した「市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額」が15万4500万円を下回れば、就学支援金で私立高校授業料は実質無償化になり、15万4500円~30万4200円未満の場合の就学支援金は11万8800円となります。
しかし、現実には年収1000万円を超える家庭では、実質無償化になるにはかなりハードルが高いと思います。
まとめ
高校入学を控える子どもを持つ親は、就学支援金の受給資格の条件や、支援額はどのくらいになるのかをチェックしましょう。
高校卒業をするまでの費用を計算し、授業料は無償化の制度を利用しても、授業料以外にもかかる費用があるので、どのくらい用意する必要があるのか考えておきましょう。
出典
(※1)高等学校教育の現状について-文部科学省
(※2)私立高校授業料実質無料化-文部科学省
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表