更新日: 2019.01.10 その他暮らし
新入社員が初任給で散財する前に、貰った時にするべき事はこれ!
これから働くということは、お金の管理と将来の生活もすべて自分で責任を持つことです。
今回は、初めて給料を受け取る新入社員のために、給与明細の読み方、そしてお金の管理についてお話ししましょう。
Text:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
給与明細をもらってみると総額と手取りってこんなに違う
就職活動をしているときには、給与はいくらになるのかくらいは把握しているでしょうが、給与明細をもらった時、その給与から様々な項目が控除されることにびっくりするでしょう。
私は、以前、高校卒業後に就職する高校生のために何度かお金の話をさせていただいたことがあるのですが、やはり、失業したときや育児休業をするとき、会社を長期間休んだとき、老後の年金などのお金の話は、あまり身近には感じられず、真剣にはなれなかったようです。
大学生でも20歳以上であれば国民年金の対象にはなりますが、ほとんどの学生は免除の手続きを取っていることから、実際に保険料を実感できるのは今回の初任給でしょう。
明細を見て、まずは自分が何の保険に加入し、その保険は何のためなのかを確認してみましょう。
「雇用保険に加入しているから、失業したとき、教育訓練を受けるとき、育児休業をしたときなどに給付が受け取れるんだ」など、一つの保険料と言っても、様々な場面に役立つことがわかるでしょう。
給与はもらったらおしまいなんてもったいない
これから考えていきたいのは、手取りとして残ったお金をどうするのかということです。最初の給与から両親に感謝の気持ちというのはもちろんよいことですが、今後は自分の生活をしっかりと考えられるよう、長期的な資金計画を立てるべきでしょう。
まずは、手取りの中から、食費、被服費、旅費交通費、通信費、交際費、レジャー費など、さらに一人暮らしの方は、プラス住宅費、水道光熱費など、毎月かかる金額を計算し、一体いくら残るのかを確認しましょう。
次に必要なのは、この「残った金額」をどう振り分けていくかということが考えることなのです。何の「目的」のために振り分けるかを決めてください。
例えば、「老後」であれば、会社が厚生年金保険料として給与から引いてくれていますが、じゃあ、老後の生活は厚生年金がすべて守ってくれるかというと、そうではありません。
年金として試算されている数字は、いくつかありますが、年金の所得代替率50%程度が妥当ではないかと思います。
つまり、年金が受け取れる年齢になった時に、不足することを見越したうえで、将来の老後資金は、できるだけ若いときに準備を始めておくことが必要なのです。
若いと、老後資金よりまずは結婚と思う気持ちもあるでしょうが、受け取ることが目前の方に「年金って少ないのね」と言われることの多い社会保険労務士の立場としては、「もっと早く準備しておくとよかったですね」と。心の中でお答えするしかありません。
年金は信用できないというのはよく言われることですが、じゃあ、公的年金なしで生活するかというと、よっぽどのお金持ちでなければ、年金に頼らず1円も受け取らず、生活することは困難でしょう。
金融リテラシーはいつか身につくわけではない!
何かあった時の備えについて考えてみましょう。
まずは公的年金の不足分を補う備えは確定給付年金や確定拠出年金、病気やけがなどの備えは民間の保険で考えましょう。
今年、生命保険料の決定に利用される「標準生命表」が11年ぶりに改定されたということで、死亡保険料が安くなっています。
一方長生きするということは、病気などのリスクが増えたと考えられるので、医療保険に関しては必ずしもお得になったとは言えないということです。
ただ、医療保険に関しては非常に選択の幅が広がっているということです。
例えば、喫煙しない、健康体などの条件を満たせば、より安い保険料にすることは可能な商品もありますので、「人に勧められるまま」保険に加入せず、自分でもちゃんと保険の仕組みをわかっておく必要があります。
若いときには保険なんてと思うかもしれません。私が神奈川県内の病院でがん患者の方たちの就労相談をしていると、若い方もいらっしゃいますし、若い方が仕事も辞めたくないし治療費もかかるという悲壮な叫びは何度もお聞きしました。
特に、まだ結婚されていないシングルの方の場合、自分が会社を辞めると、収入の道が途絶えるという大問題が起こるのです。金融リテラシーに関しては、学校でも教えられることではありますが、新入社員でお給料を始めて受け取れるようになる「今だからこそ」、より実感を伴って勉強できると思うのです。
社会人になるとお金の管理は自己責任です。
もう会社が守ってくれるという時代ではありません。個々のお金の知識に差がつき、それによって将来のライフプランが変わってくるのです。
一時、「老後破産」という言葉も流行りましたが、普通の人にとって1億円貯めるのは容易ではありませんし、そんなに貯めていなくても破産していない方もいらっしゃいます。人は人、自分は自分です。
新入社員の皆さん、初めての給与明細、ぜひじっくりと眺めて、自分なりのお金の管理方法を考えてみてください。
Text:當舎 緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)