「私立高校の無償化」で救われる世帯ってどのくらいいる? 対象となる世帯の年収は?
配信日: 2022.09.26
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
私立高校の無償化とは
よくいわれる私立高校の無償化とは、国による「高等学校等就学支援金制度」(返還不要の授業料支援)で受けられる支援額の引き上げのことです。
従来の高等学校等就学支援金制度は、国公立高校の学費が基準となっていたため、支援額は11万8800円と私立高校の学費が無償となるにはほど遠い金額でした。
制度が改正された令和2年4月からは私立高校授業料実質無償化として、対象となる世帯への支援額が全日制私立高校の授業料相当額となる39万6000円まで引き上げられています。
ただし、実質的な無償化が実現したのはあくまでも授業料に関する部分であり、設備費や教材費、部活動にかかる費用など、授業料以外については別途必要となるのが原則であることに注意が必要です。
私立高校無償化の対象となる世帯年収は?
私立高校の授業料が実質無償化となる39万6000円の支給対象となるかどうかは、世帯の収入や家族構成によって異なります。
両親のうち一方が働き、高校生の子ども1人という世帯の場合、年収約590万円までが対象ですが、子どもの数によっては約650万円程度までとなります。
また、両親が共働きの場合は、高校生の子どもが1人の世帯で年収約660万円までとなり、子どもが2人以上であれば扶養控除対象者・特定扶養控除対象者の数によって、約740万円まで年間の世帯収入があっても支給対象となることもあります。
出典:文部科学省 「年収目安」
なお、上記の年収の金額はあくまでも目安です。実際には、給与所得や事業所得など所得の種類など個別の事情によって、この金額よりも年収が少ないのに対象外となる可能性もある点にご注意ください。
私立高校の無償化で救われる世帯はどれくらいか?
内閣府の「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」によると、保護者の生活状況について、2019年では世帯全員のおおよその年間収入が700万円未満の世帯は全体の56.7%でした。
前述した両親が共働きで子どもが2人以上という世帯では、年収約740万円までが私立高校無償化の対象となる目安ということを踏まえると、全体の6割近くの世帯のうち、条件に該当した世帯では無償化により経済的な負担を軽減されることが想定できます。
支援金の引き上げによって私立高校への進学も選択肢となるケースが増える点も考えると、私立高校の無償化は多くの子育て世帯にとって有意義な制度といえるでしょう。
無償化の適用に申請が必要
私立高校の無償化は、世帯の年収など対象要件に合致した場合に自動的に適用されるわけではありません。新入生は入学時の4月など、在校生であれば保護者の収入状況について届け出を行う7月ごろに、学校からの案内に従って手続きをする必要があります。
原則、さかのぼっての申請は認められていないため、無償化の対象となる場合は忘れずに手続きを行うようにしてください。
子どもの高校進学を控えた世帯は私立高校無償化について確認を
私立高校の実質無償化とは、私立高校の授業料が無償となる制度で、これによって多くの子育て世帯で経済的負担が軽減されることが想定できます。
保護者の働き方や家族構成に応じて、世帯年収が740万円程度までであれば無償化の対象となることを考えると、子どもの選択肢として私立高校への進学を現実的なものとする非常に大きな意義のある制度といえます。
高校進学を控えた子どもがいる世帯では、子どもが希望する進路へ進むことを実現するためにも、私立高校の無償化について制度の詳細をしっかりと知っておくことが必要です。
出典
内閣府 令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書
文部科学省 高校生等への修学支援
文部科学省 年収目安
執筆者:柘植輝
行政書士