社会人ならマストで押さえておきたい! 「時間外手当」と「残業手当」の違いは?
配信日: 2022.09.28
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
時間外手当と残業手当の定義
時間外手当と残業手当、どちらも意味は一緒で呼び方が違うだけ。そう思っている方はいませんか? 実際は、厳密に言うと、それぞれ意味が異なっています。
時間外手当とは
時間外手当とは、労働基準法に定められた労働時間を超えた場合に支払われるべき手当(賃金)のことをいいます。
労働基準法では原則として1日8時間、1週間に40時間を超えて労働者を働かせてはならないとされており、超える場合は通常の賃金の25%以上となる割増賃金を支払う必要があります。この、通常より25%割り増しされた残業代などのことを時間外手当というのです(深夜労働や休日労働の場合は、25%を超える割増賃金が適用されることもあります)。
これにより、例えば時給1000円の人が休憩を除き9時間労働した場合、8時間分については1000円、残りの1時間分は25%割り増しされた割増賃金である1250円の、合計9250円を受け取れることになります。
残業手当とは
残業手当とは、法律ではなく就業規則など会社独自のルールで定められた労働時間を超えた場合に支払われる賃金のことをいいます。多くの会社では就業規則などで1日8時間、週40時間を所定の労働時間としています。この場合は、時間外手当と残業手当とがほぼ同様の意味を持つことになります。
逆に就業規則が1日7時間、週35時間労働となっている場合、1日当たり7時間または週35時間を超えた部分がいわゆる残業扱いとなり、そこで支払われる賃金が残業手当となります。
会社によっては、時間外手当は出ても残業手当が出ないこともある
時間外手当は法律上、支給しなければならないものと定められており、雇用主には支給義務があります。一方、残業手当については法律上の支給義務がないため、就業規則などで規定されていない限り、支払う必要はありません。ただし、その残業が法律でいう時間外となっている部分については、時間外手当を支払う必要があります。
例えば、就業規則で1日7時間労働と定められている会社において、休憩を除き9時間働いた場合、同じ残業でも7時間を超えてから8時間までの部分には残業代(残業手当)が出ず、8時間を超えた部分にのみ残業代(時間外手当)が出る、ということが起こり得ます。
時間外手当と残業手当の最も大きな違いはここにあります。根拠が法律であるか就業規則など会社独自にルールであるかによって、支給義務の度合いが異なるということです。
社会人なら、時間外手当と残業手当の違いについて理解を!
時間外手当と残業手当、どちらも同じようで厳密には異なるものです。時間外手当は根拠が法律にあり、残業手当は根拠が就業規則など会社の規定にあります。両者は同一であることもあれば異なることもあるため、一緒のものだと考えていると、後々思っていたほど残業代がもらえなかった、と戸惑ってしまう可能性もあります。
社会人であれば、時間外手当と残業手当の違いを頭に入れ、自身の賃金がどんなルールで計算されているのか、よく理解しておきましょう。
出典
e-gov 労働基準法
執筆者:柘植輝
行政書士