学生が詐欺に遭わないために、注意すべきこととは?

配信日: 2022.10.05

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学生が詐欺に遭わないために、注意すべきこととは?
コロナ禍で、学生たちは従来とは違った学生生活を送ることを余儀なくされました。
 
特に親元を離れ、慣れない土地でひとり暮らしを始めた学生は、オンライン授業で思ったほど新しい友だちが増えず、サークル活動やアルバイトも積極的にできない環境にあるなど、人と接する機会が少なく、孤独で寂しい思いをすることもありました。
 
こんな時に何かあっても、誰にも相談できず、ひとりで悩み、泣き寝入りする……それだけでは終わりません。借金を背負うかもしれないし、自分が加害者になるかもしれません。
 
取り返しのつかないことになる前に、今どんなことが起きているのか、万が一のときはどうすればよいのか、知っておきましょう。年頃の子どもを持つ親御さんにも、ぜひ知っていただきたい内容です。
黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

学生を対象とする詐欺、「断れない」勧誘の手口とは?

以前から問題視されているのは「マルチ商法」です。マルチ商法は、販売組織の会員となって商品を購入し、その商品を他人に販売しつつ組織に勧誘、加入者を増やしてマージンを得る商法です。
 
商品販売の利益だけでなく、勧誘をして会員を増やすことでマージンが得られるので、勧誘するほうもよかれと思って誘う場合もありますが、組織の下部になればなるほどうまくいくはずはなく、自分がノルマを達成しようとすれば、知人との関係を壊してしまうかもしれないといった構図になっています。
 
「先輩からの勧誘は断れない」「友だち同士の友情を壊したくない」などの学生心理をついているところが厄介です。最近では、「将来の人脈づくりになる」「就活に役立つ」「もうかる」などと組織に勧誘し、投資アプリを売りつける、といったマルチ商法的手法を使った投資詐欺もあります。
 
投資セミナーの参加を促し、「アプリを使えば必ずもうかる」と50~60万円を要求する。「払えない」というとローンを組ませて、「毎月の返済額は投資で得られるリターンで払える」などと安心させます。実際には投資はそううまくいかず、ローンだけが残るといった手法です。
 
「割のよいバイト」と称して、犯罪に加担させられている場合もあります。特殊詐欺の「受け子」「出し子」は代表例です。
 
いずれの場合でも、やりとりはSNSのみで、指南役と顔を合わせていないので、特徴もわからず、「抜けたい」「お金を返してほしい」と言ったところで、すぐ上の指南役をたどっても、なかなか元締めや組織にたどり着けないようになっています。捕まるのは下っぱだけ、許しがたい構図です。
 

「夢」や「あこがれ」、「美への追及」学生心理をつく悪質な業者に注意!

タレントやモデル契約をめぐるトラブルもあります。
 
以前は街でスカウトされ、以前から夢やあこがれがあったので、その気になり「事務所に入ったが仕事がまったくない」「高額なレッスン料や登録料を払えと言われた」といったことがありました。「今契約しないと合格は白紙」とせかされたり、仕事と思って出向いたら不意打ち的に違法な動画を撮影されたりと、悪質な業者もあります。
 
最近では、たまたまサイトで募集記事を見て、自ら応募する形式でのトラブルが増えています。「自分で連絡する」ことで自己責任だと押し付けて、断りにくくしていますが、その場では契約せず、活動内容や費用をよく確認するようにしましょう。
 
また、「美容」の対象は女性とも限りません。脱毛エステのトラブルは男性も増加傾向にあります。
 
「広告の施術をしたかったが、高額なプランを勧められた」「体験をして決めようと思ったが、強引に契約させられてしまった」といった事例は、「契約」といった経験の少ない、「断る」ことに慣れていない若者に多く見られるトラブルです。
 
大人の勧誘の場でも見られることですが、「今日だけ特別価格」「期間限定キャンペーン」「人気なのですぐに枠が埋まってしまう」などせかされることもあります。に高額の契約は、お金を払うのはこちらなのですから、じっくり判断して当然、くらいの気持ちで、慎重によく考えてから契約しましょう。
 
また社会人と比べたら、学生は定期収入がない分、自由になるお金が少ないはずなのですが、「お金がない」と断ろうとしても、ローンでの支払いを勧められます。
 
確かにローン(分割払い)にすると、1回あたりの支払額が小さくなり、楽に払えるような印象を受けます。しかし、今後きちんと返済できる金額であるかはもちろんのこと、トータルでいくら払うことになるのか、ローンに上乗せされる金利(手数料)があることなど、ローンに関する正しい知識がないと、判断が難しいものです。基本は、ローンを組まないと支払えないような契約は、いったん待つ、その場では契約しない、です。
 

「18歳成人」になり、今後懸念されること

PIO-NET※1によると、2020年の消費者トラブル相談件数(平均)は、「20~24歳」は7741件であったのに対し、「18・19歳」は4820件でした。「20~24歳」の方が「18・19歳」よりトラブルが多いのは、当時「18・19歳」は未成年として、未成年者取消権によって守られていた効果ではないかと考えられています。
 
2022年4月の成人年齢引き下げにより、「18・19歳」が親の同意なく契約ができるようになり、「よくわからずに契約してしまった」といった場合に未成年であることを理由に取り消すことができなくなったため、「18・19歳」のトラブルが今後増加するのではと懸念されています。
 
怖いのは、周囲が気づかないこと。ネット世代の若者は、SNSのみで人とつながることに抵抗がありません。親や友人が知らない人とSNS上でつながっても、周りにはほとんどわからず、気づかないうちに詐欺被害に遭うだけでなく、加害者側になっていることもあります。
 
「最近ちょっと変だな」と周りが気づいてあげられるとよいですが、難しいのが現実、悩ましいときは、消費者ホットライン「188」に電話してみましょう。専門家に話を聞いてもらえば、なんらかの解決の糸口が見つかるだけでなく、きっと心も軽くなります。
 
大きな勇気はいりません。ひとりで悩まないで、まず誰かに聞いてみる、同じような悩みを持つ方がいるはずです。
 

出典

国民生活センター 若者の消費者トラブル
(※1)PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターを主体とする消費生活関連の相談情報のデータベース
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士

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