更新日: 2022.10.09 その他暮らし
自分の資産を把握していない人はどれくらいいる? 把握できていない資産があるリスクとは?
しかし、自分の資産を把握できていないことは、大きなリスクをはらんでいます。将来のライフプランを設計できないばかりか、効率的な資産運用もできません。さらに、万一の際の相続リスクまで抱え込んでいるのです。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
実はこんなにあった「もやもや資産」
例えば、内容の把握が不十分な保険契約、固定資産税を払い続けている遊休不動産(企業活動に使用されていないことが多い不動産)、利用せずに会費を払い続けているゴルフ会員権やリゾート会員権は、むしろ負の資産になっている可能性もあります。
株式会社かんぽ生命保険が2022年8月に発表した「資産の把握状況に関する調査」(調査対象:全国の20~70代の男女1329人)によると、資産の把握状況に関して自信の無い人が全体の7割に達し、こうした、内容を正確に把握できていない「もやもや資産」は一世帯あたり1000万円以上、国内総額は600兆円にものぼると推定されます。
比較対象として、日本の2022年度予算の一般会計歳出は107.6兆円であるため、600兆円という額がいかに大きいか分かるのではないでしょうか。
日本にはこれだけの規模の資産が、もやもやのまま眠っているのです。
企業にたとえるとROEが低い状態
日本では多くの企業が設備投資に消極的で、自己資本を社内に貯め込んでいるため、生産性が向上しないと批判されてきました。
これを受けて、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表すROE(Return On Equity)という財務指標が、投資家から重視されるようになりました。これを個人にあてはめるとどうでしょうか?
把握できていない多額の資産を抱えているということは、企業に例えると、ROEが低い状態であるといえます。これでは投資家から高い評価を得られません。
不要な資産を処分し現金化すれば、無駄な住宅ローンを借りる必要はなかった可能性があります。この現金をうまく運用できれば、年間数%の利回りで運用できたかも知れません。
「内容を正確に把握できていない資産」が現金という形で存在すれば、将来のライフプランは大きく変わるはずです。こうした把握できていない資産の存在は、効率的な資産の活用ができていないことの顕(あらわ)れでもあります。
「把握できていない資産」ほどこわい、争族リスク
内容を把握できていない資産のリスクは、相続発生時に顕在化する可能性が高いといえるでしょう。
法人オーナーであれば自社株、地主であれば不動産が、把握できていない資産にあてはまる可能性があります。相続発生時に、相続財産としての評価と遺産分割が問題となります。
法人オーナーの場合は、相続財産の大半が自社株というケースが多く、非上場の自社株は、想像以上に高い評価額となる場合があります。現金化が困難な場合は、相続税の納税に支障をきたす可能性があります。また、地主の場合、土地を売却しなければ相続税を納税できないというケースもあります。
さらに、遺産分割が紛争に発展することもあります。
自社株は経営権の問題に直結し、相続で自社株が分散すれば、会社の経営が不安定になるリスクも懸念されるでしょう。不動産を分割相続すれば、売却や活用が困難になる可能性があります。遺留分の問題をクリアするために、多くの法人オーナーや地主が頭を痛めています。
健康なうちに「もやもや」の解消を
内容を正確に把握できていない資産を、把握しないままにしておくことは、さまざまなリスクがあります。
もしもあなた自身が認知症などで意思能力を失ってしまったら、法定後見制度の対象となり、思うような処分ができなくなってしまうでしょう。
内容を把握できていない資産の存在は、すぐに生活に影響を及ぼすことはありません。だからこそ放置されがちなのですが、これは地雷を放置しているような危険な状態なのです。1日でも早く資産内容を正確に把握し、リスクを取り除くことが大切です。
出典
財務省 1 予算はどのような分野に使われているのか
株式会社かんぽ生命保険 資産の把握状況に関する調査(2022年)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部