更新日: 2022.11.16 その他暮らし
【ホームセキュリティの場合】 一括と分割、支払いはどっちがオトク?
そんなホームセキュリティを戸建てやマンションのマイホームに導入しているお宅も少なくないでしょう。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
ホームセキュリティの費用構成
ホームセキュリティの導入(契約)件数は、業界上位企業の公表値を見ると例えば次のようになっています(2022年3月末、1万件未満を四捨五入)。
●セコム(SECOM) 約150万件(※1)
●綜合警備保障(ALSOK) 約46万件(※2)
月々数千円台くらいの負担で安心・安全を手に入れられる。そんな手軽さもあってか、導入件数は増加傾向にあるようです(一例として※2)。費用負担面では、初期費用(機器類およびその設置工事費)とランニング費用(月々の委託費)で構成されます。
機器類の費用は、買い取り(最初に一括支払い)かレンタル(月々分割払い)を選べ、工事費の支払いも一括か分割を選べるケースが多いようです。
分割払いの実質年率(5年の場合)
具体事例をもとに、一括と分割の違いを見てみましょう。
<A社の費用事例>
【前提】
◇基本契約期間 5年(更新可)
◇機器の保証 10年間無料
◇戸建住宅(3LDK)で機器類は、[コントローラー・開閉センサー・センサー送信機・遠隔非常ボタン・異常発生時に外部へ点滅で知らせるライト ×各1]、[施錠確認センサー・空間センサー ×各3]
◇機器類費用 17万9850円 ①
◇工事費 4万8400円 ②
【月々の費用プラン】
(1)機器類・工事費とも最初に負担
月額3740円
(2)工事費は最初に負担し、機器類は分割払い(機器類はレンタルになる)
月額6853円 ⇒ (1)よりも月々3113円増 ③
(3)機器類・工事費とも分割払い(機器類はレンタルになる)
月額7667円 ⇒ (1)よりも月々3927円増 ④
まずは、基本契約期間の5年(60ヶ月)で考えてみましょう。上記の(3)プランは、初期費用①+②を月々の負担増④で分割返済している形です。60回で計算すると実質年率は約1.26%となります。(2)プランならば同様に①と③から、実質年率は約1.50%です。まあ、それほど高率な印象はないでしょう。
分割払いの実質年率(10年の場合)
今回の事例で、基本契約期間は5年間。しかし、契約を更新するケースも少なくないと思われます。機器の無料保証期間だって10年あるのです。先述の試算を、期間10年(120ヶ月)でやってみるとどうなるのか。実は、(3)が約16.72%、(2)で約16.89%となります。
数値が一挙に10倍以上。一瞬、計算間違いにも思えます。しかし、もともと5年間の分割払いで初期費用を回収(支払い)し終える前提なのです。回収後に会社側は大きくもうかり、利用者側では金利としての負担率が重くなるのは当然でしょう。
この実質年率、表計算ソフトの関数機能などから計算できます。また、簡便な計算ソフトを公開しているサイトもあります。対象金額、返済回数、月々の支払額をインプットするとすぐに計算結果が表示され、とても便利です。
先述の費用プランの事例ですが、それぞれに会社のコメントが次のように添えられています。
(1) 長く利用をお考えの方は、月額費用が安くなるこちらがオススメ
(2) 一定期間のご利用をお考えの場合にオススメ
(3) 初期費用をかけずに、はじめたい方にオススメ
ホームセキュリティに対する利用者の利用期間や費用負担の考え方に応じて使い分けを推奨している点は、フェアだと思います。
まとめ
ホームセキュリティの場合、一括と分割、支払いはどっちがオトクなのか? 今回のテーマの答えは、一律ではありません。
長く住むつもりのマイホーム。日常の安心・安全を確保するためにホームセキュリティも長く使い続けたいのであれば、初期費用は最初に支払ってしまったほうが長い目で見ておトクになるケースが多いです。
逆に、次の転居の可能性も大いにありえる。あるいは取りあえず“お試し”で使ってみたいだけ。そんなスタンスならば、先述の計算事例でも、基本契約期間内での実質年率は決して割高ではないでしょう。
このようにあくまでもケース・バイ・ケースです。しかし、実質年率の面では契約更新後の期間を加えていくと、今回の事例でも最初の10倍などと景色が一変するのです。
契約を更新しても、月々の支払額は今までと変わらない。そんな安心感のような思い込みと現実には、大きな隔たりが隠れている場合だってある。そのことは、要注意だといえるでしょう。
出典
(※1)セコム株式会社(SECOM)「会社概要」~「セコムグループ現況 国内セキュリティ契約件数 家庭(ホームセキュリティ(マンション住戸含む))」
(※2)綜合警備保障株式会社(ALSOK)「契約件数の推移」~「機械警備業務 個人向け」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士