更新日: 2022.11.24 その他暮らし

外国人と社会保障制度、日本はどうなっている?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

外国人と社会保障制度、日本はどうなっている?
日本に限らず、社会保障制度はその国の国民のために考えられ、多くは国民の義務として保険料が定期的かつ長期にわたり徴収されます。ところが、そのような制度がない国から来日して滞在したり、滞在期間が短かったりする外国人は、さまざまな問題に巻き込まれてしまう可能性があります。
 
この記事では、そのような外国人と日本の社会保障制度についての政府の取り組みについて紹介します。
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外国人との共生社会実現検討会議

内閣官房は、日本で生活する外国人との共生社会の実現に向けたさまざまな環境整備について検討を進めています。2012年には、関係する各省庁と連携しながら政府としての取り組みを進めるために「外国人との共生社会実現検討会議」が設置されました。
 
5回の会議が開催され、中間報告として「外国人との共生社会の実現に向けて(中間的整理)」と「外国人との共生社会の実現に向けた主な具体的取組」がまとめられています。この報告書の外国人と社会保障を扱った部分の概略は次のような内容です。
 

・現在の社会保障制度の問題点

現行の社会保障制度では国籍要件がないため、公的年金制度・医療保険制度・介護保険制度などについて原則的に外国人も対象となっています。この点は、日本人も外国人も平等に扱われます。しかしながら、実際にはさまざまな問題が生じているのです。具体的には、保険未加入問題や、年金の「払い損」の問題が挙げられます。
 

・保険未加入問題

外国には日本のような国民皆保険制度がない国もあります。また、医療費の負担がゼロの国もあるのです。そのような国から来た外国人にとっては、日本の保険制度の知識がなければ、公的医療保険への未加入が問題であると認識されない可能性があります。
 
また、未加入状態であると、言葉の壁や生活習慣の違いも重なり、受診行動を控えることになり、病気が重症化する可能性もあります。そうなると医療費が高額になり、未払いが発生するのです。
 

・年金の「払い損」問題

年金を受給するには最低加入期間を満たしている必要があります。2017年7月31日までは25年だったのですが、法改正により2017年8月1日以降は10年に短縮されました。ところが、2016年に成立した「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」では在留資格の一つの目安が5年となっています。
 
そのため、5年で帰国する外国人が年金を払っていた場合には「払い損」になってしまうのです。救済措置として「脱退一時金」とよばれる、年金権を放棄して清算する方法はあるのですが、実際に払い込んだ金額より低くなります。
 

これからの外国人向け社会保障改革の方向性

検討会議の中間報告書「外国人との共生社会の実現に向けた主な具体的取組」には、次のような改革案が掲載されています。
 

・社会保険未加入などの指導監督

管轄する住所地のハローワークによって、外国人を雇用する事業主に対して未加入などがないかどうかを確認したり、在留資格変更申請の際に未加入かどうかを確認したりなどが提案されています。
 

・社会保障協定の締結促進

外国に派遣される日本人、または外国から日本に派遣される外国人の二重加入や払い損などの問題に対応するため、社会保障協定の締結を促進することが提案されています。
 

・社会保障制度についての多言語での情報提供

国民年金制度についての多言語での情報提供を強化することが推奨されています。なお、ポルトガル語やスペイン語が事例として挙げられています。
 

望まれる外国人向けの社会保障制度の拡充


 
少子高齢化によって急激な人口減少を迎える日本社会では、長期滞在してさまざまな業務を担う外国人の存在は不可欠になりつつあります。安心して滞在してもらうには、そのような人たちを社会保障制度の対象にしていく必要があるのです。今回紹介した日本政府の取り組みは、今後ますますニーズが増えて拡大していくことでしょう。
 

出典

出入国在留管理庁 年金・社会保険
内閣官房 「外国人との共生社会」実現検討会議
内閣官房 外国人との共生社会の実現に向けた主な論点、検討課題(例)
厚生労働省 年金を受けとるために必要な期間が10年になりました
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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