奨学金の返済に充てるお金がない…。手取り「18万」でも奨学金用にお金を残すことは可能?
配信日: 2023.01.09
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
奨学金の返済に充てるお金の工面に苦労することは珍しくない
令和2年の新規学卒者の賃金は、大卒で平均22万6000円となっています。各種税金などを差し引いた手取りに換算すると、18万円台となる金額です。
つまり、今現在奨学金を借りて学校に通っている大学生や、これから奨学金を借りて進学を希望する高校生は、手取り18万円の中から奨学金を毎月返済していくことになる可能性が高く、返済について貸与前や在学中から十分に考えておく必要があるということになります。
しかし、実家暮らしならともかく、一人暮らしの方が手取り18万円で奨学金の返還を、というのは非常に困難です。
東京都内での一人暮らしの場合、家賃だけで6万円以上となることも珍しくはなく、手取り18万円の場合、その3割以上が家賃だけで消えてしまい、残り10万円少々で生活していかなければならないことが往々にしてあります。
そこから奨学金の返済を……というのは決して楽ではないでしょう。実際に令和2年度末時点では、奨学金の返済に関して1日以上の延滞者が29万1000人、3ヶ月以上の延滞者は13万2000人にも上っています。
図表1
出典:独立行政法人日本学生支援機構 令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査結果
上図のとおり、奨学金の延滞者においては「年収300万円以下」の比率が69.4%と、無延滞者の比率41.2%と比べてかなり高い割合となっており、手取り18万円での奨学金返済が困難となっていることが分かります。
延滞の理由としても、「本人の低所得」が62.9%と最も多くなっています。
図表2
出典:独立行政法人日本学生支援機構 令和2年度 奨学⾦の返還者に関する属性調査結果(詳細版)
手取り18万円で奨学金の返済をしていくことは可能か
手取り18万円でも工夫次第で奨学金用にお金を残し、返済していくことは可能です。実際に、返済計画に基づいて毎月奨学金を返済している方は多くいらっしゃいます。
現時点で奨学金の返済に充てていくお金がないという場合、収支の見直しをし、収入を増やす、もしくは支出を減らして対応していく必要があります。収入を増やしたい場合は、残業や副業を頑張ってみる、思い切って転職するといった方法を考えてみましょう。
支出を減らしたい場合は、コンビニの利用や外食を控え、スーパーで買い物をして自炊するほか、通信費や加入しているサブスクサービス、保険などを見直すといった方法があります。
どうしても返済ができないときは
どうしても奨学金の返済に充てるお金がない、そんなときは減額返還制度や返還期限猶予制度の利用も検討しましょう。
減額返還制度は、総返済額は減らさず月々の返済額を2分の1または3分の1に減らす制度です。返還期限猶予制度は、返還が一定期間猶予される制度です。
会社員やフリーターなどの場合、減額返還制度については年収325万円以下で、返還期限猶予制度は年収300万円以下で利用できます。賞与の有無や額などにもよりますが、毎月の手取りが18万円であればどちらの制度も利用できる可能性があります。
何も手続きせず奨学金が延滞の状態になっていると、延滞金が課され総返済額が増えてしまったり、自身の信用情報に傷がついて将来行う住宅ローンの借り入れなどに影響したりする恐れがあります。
減額返還制度や返還期限猶予制度は申請しなければ適用されません。詳細については日本学生支援機構にご相談ください。
奨学金の返済に充てるお金の確保は工夫次第で実現できる
手取り18万円と収入が限られていても、収入を増やすことや、支出を減らすよう生活を見直し、工夫していくことで奨学金の返済を続けていくことは可能です。
しかし、どうしてもという場合は月々の返還額を減らすことや返還を猶予してもらうこともできます。奨学金の返済について悩んだときは放置せず、日本学生支援機構に相談してみましょう。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 令和2年度 奨学⾦の返還者に関する属性調査結果(詳細版)
独立行政法人日本学生支援機構 令和2年度 奨学金の返還者に関する属性調査結果
執筆者:柘植輝
行政書士