更新日: 2023.01.17 その他暮らし
「養育費・婚姻費用」は「収入が低いうちに決める」のがお得?
「養育費」や「婚姻費用」という言葉を聞く機会もあるのではないでしょうか。これらの金額は、夫婦の年収によって決まることをご存じですか。支払う側と受け取る側の年収差があるほど、金額も比例して増加または減少する仕組みなのです。
本記事では、養育費と婚姻費用の算定方法について解説します。
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
離婚で発生するのが養育費
「養育費」とは、子どもの監護や教育のために必要になる費用のことをいい、具体的には食費などの生活費、習い事などの教育費、医療費などが該当します。
離婚によって夫婦関係を解消したとしても、2人とも子どもの親であることには変わりありません。子どもを引き取らなかった方の親は、引き取った方の親へ養育費を支払う義務があります。
離婚前に発生するのが婚姻費用
夫婦は「協力して生活費を分担」しなければなりません。離婚が成立するまでは、夫婦のうち収入の高い方が低い方の生活費を負担する義務があります。
これを「婚姻費用」といい、養育費に加え、配偶者の住居費や光熱費といった生活費が含まれます。これは離婚前に別居した場合であっても同様です。
養育費・婚姻費用の金額の決め方
養育費と婚姻費用の金額は、まずは夫婦間での話し合いにて決定します。話し合いで決まらない場合には、裁判所での調停にて調停委員を交えた話し合いを行い、それでも決着できない時は裁判の審判にて金額を決定します。
「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決定する
養育費と婚姻費用の金額に決まりはありません。夫婦間で合意ができればいくらにしようと自由なのですが、ある程度の目安として「養育費・婚姻費用算定表」というものが設けられています。
養育費・婚姻費用算定表は、子どもの人数、子どもの年齢に応じて細かく定められており、調停や裁判の際には、この表をベースに金額が算出されることがほとんどです。
夫婦の年収をもとに算定
図表1は、14歳以下の子どもが2人いる場合の養育費の算定表です。見ていただくと分かるように、表の縦軸は夫婦のうち子どもを引き取らず養育費を支払う「義務者」、横軸は夫婦のうち子どもを引き取って養育費を受け取る「権利者」を表しています。
義務者の年収を示す「行」と、権利者の年収を示す「列」が交差した点が養育費の目安金額となります。自営業と会社員では算定基準が異なっており、同じ年収であっても、自営業の方が稼ぐ力があるとみなされた設定がされています。なお、婚姻費用の算定表も同様です。
例えば、会社員である夫の年収が500万円、子ども2人を引き取る妻は年収0円である場合の養育費は8万~10万円が妥当な金額であるとなります。8万~10万円の枠の上部にあることから、10万円と判断される可能性が高いでしょう。
【図表1】
出典:裁判所 平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告についてより引用
子どもを引き取る親の年収が低いほど高額になる
つまり、子どもを引き取る親の年収が、子どもを引き取らない親の年収より低いほど、養育費や婚姻費用の金額は高くなるということになります。
決して収入がない時の離婚を勧めるわけではありませんが、「養育費や婚姻費用の金額の算定」という面だけを見ると、子どもを引き取る親が専業主婦(夫)の時が最も高額な金額を請求できるということになります。
ただし、特に支払期間が長期に及びやすい養育費については、就職や離職、再婚、病気など養育費を取り決めた時に予測できなかったことが起きた場合、金額が変更になる可能性がある点には留意しておきましょう。
まとめ
養育費と婚姻費用の目安金額は、子どもを引き取る親の年収が引き取らない親の年収より低いほど高額になります。
離婚では最も重要なのは「お金」といっても過言ではありません。養育費や婚姻費用を決定するタイミングにも注意を払うようにしましょう。
出典
法務省 養育費
法務省 離婚を考えている方へ
裁判所 平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士