医療費が「無料」「一部免除」になる場合があるって本当? 病気やけがで働けないときの対処法を解説

配信日: 2023.01.18

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医療費が「無料」「一部免除」になる場合があるって本当? 病気やけがで働けないときの対処法を解説
「失業して医療費が払えない」「病気で仕事ができなくなり生活費だけで精いっぱい」という場合に使えるかもしれない制度が「無料低額診療」です。生活保護を受けるほどではない状態でも、無料低額診療なら適用される可能性があります。
 
今回は、無料低額診療がどのような制度なのか、利用条件や利用方法などについて解説します。
山根厚介

執筆者:山根厚介(やまね こうすけ)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

無料低額診療とは?

無料低額診療とは、低所得者などに医療機関が無料または低額な料金で診療を行うものです。社会福祉法第2条第3項第9号で定められた第二種社会福祉事業により行われています。
 
全国で行われている制度ですが、全ての病院で実施されているわけではありません。2021年の厚生労働省による調査では、社会福祉法人 恩賜財団 済生会や全日本民主医療機関連合会(民医連)の病院など、全国で732の医療機関で無料低額診療が行われています。
 

どのような場合に利用できる?

無料低額診療は、収入が減少して医療費が支払えない場合に利用できます。ただし、具体的にどの程度の収入であれば無料低額診療が受けられるかは、各医療機関によって異なります。
 
例えば北海道勤労者医療協会の基準は、収入が生活保護基準の120%以下なら無料、140%以下なら医療費が一部免除されるというものです。具体的に計算すると、札幌市に住む30代男性の場合、夏季の生活保護費は1ヶ月当たり10万9720円です。この場合、月収が13万1664円以下なら無料、15万3608円以下なら一部免除となります。
 
無料低額診療の対象者としては低所得者、失業者、ネットカフェ難民、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などが想定されています。DV被害者などが着の身着のまま逃げてきて、保険証を持っていないようなケースでも対象です。
 
注意点として、この制度はあくまで一時的なもので、利用期間も限られています。例えば、先ほど紹介した民医連では、利用期間を原則1ヶ月としています。
 
ただし無料の場合は最大3ヶ月まで、一部免除の場合は最大6ヶ月まで延長も可能です。その間に、後述するソーシャルワーカーなどと相談をして、問題の解決を図ります。
 

利用方法は?

無料低額診療の利用方法は2つあります。1つ目の方法は、自治体の福祉事務所または社会福祉協議会へ相談する方法です。もう1つの方法は、無料低額診療を実施している医療機関へ直接問い合わせる方法です。無料低額診療を実施している医療機関には、医療ソーシャルワーカーが在籍しているため、相談に応じてくれます。
 
都道府県によっては、どちらかの方法のみを採用している場合もあります。例えば、埼玉県は福祉事務所などへ相談するのではなく、無料低額診療を実施している医療機関へ直接問い合わせることになっています。
 
相談では、収入や生活状況、健康状態などの確認が行われます。生活状態を明らかにするため、相談へ行く際は給与明細、預金通帳、年金通知書などの資料を持参するとよいでしょう。
 

医療費が払えないほど困っている場合は、まず相談を

医療費を払えないからといって、病気やけがを我慢し続ける必要はありません。無料低額診療はそのような人を救済する制度です。認められるまでに時間がかかる生活保護とは異なり、スピーディーに診療を受けられる点がメリットでしょう。
 
収入状況によっては、無料低額診療の対象外である場合もありますが、相談によって無料低額診療以外の改善策を提案してもらえる可能性もあります。医療費の支払いに困っている場合には、まず無料低額診療が受けられないか相談してみましょう。
 

出典

厚生労働省 無料低額診療事業について
全日本民医連 無料低額診療事業 制度の説明
埼玉県 無料低額診療事業について
厚生労働省 令和3年度無料低額診療事業等に係る実施状況の報告
札幌市 生活保護制度
 
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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