日銀が「金融緩和」を修正。経済や生活への影響は?
配信日: 2023.01.17 更新日: 2023.01.19
今回の修正で、日本経済や私たちの生活にどういった影響が想定されるのかを解説します。
執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
活動拠点は神戸。FP個別相談や、プロスポーツ選手の資産形成サポートも行っております。プロスポーツ選手に保険、資産運用、支出の見直しなど包括的なアドバイスや、帳簿などの面倒な記帳業務を代行し、本業に集中できる環境作りをサポートします。
長期金利の上限を引き上げた理由は?
今回の発表で大きなサプライズとなったのは、これまで抑えてきた長期金利の許容変動幅を、今までの「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に引き上げたことです。
黒田日銀総裁は今回の修正に対して「出口(金融緩和政策の終了)の一歩ということでは全くない」と利上げを否定しています。長期国債の買入れ額を大幅に増額するうえで、修正はあくまでも債券市場の機能回復が目的であり、企業の社債発行などの円滑化を図る狙いだとしています。
引き上げ発表後に起こったこと
黒田総裁は「利上げではない」と明言しましたが、金融市場は事実上の「利上げ」と判断し、今まで0.25%に抑え込んでいた長期金利は一気に0.46%まで上昇、日経平均株価は大幅安となり、一時800円以上下落しました。為替相場は1ドル=131円台まで大幅に円高が推移し、2022年8月以来4ヶ月ぶりの円高水準となりました。
今回の円高や、日経平均の大幅下落が起こった流れは以下の通りと考えられます。
1. 日本銀行が金融緩和政策を修正したことにより、長期金利が上昇
2. 米国との金利差が縮小して円高が進んだ
3. 円高は輸出を中心とする企業が多い日本において株価下落の要因になるので、日経平均が下落
今後どのような影響があるか
ここからは、日本経済や私たちの生活にどのような影響が想定されるかについて解説します。
住宅ローン金利への影響は?
住宅ローン金利については、大手銀行では2023年1月適用分から10年固定金利を0.1%から0.3%ほど引き上げており、すでに影響がではじめています。変動金利については、短期金利市場で資金を調達してくるので、基準となる短期金利(日銀の政策金利)が依然マイナス金利で適用されているため、影響は出ていません。
しかし、さらにインフレが続けば、日本銀行も政策金利を引き上げる可能性もあり、変動金利が上昇することも考えられます。
現在、すでに固定金利で住宅を購入している人は「繰上げ返済する」、いつでも繰上げ返済できるように「日頃から貯蓄しておく」などの対策を検討してみてもよいでしょう。住宅購入を検討している人は、住宅ローン金利が上昇すれば、毎月の返済額に大きく影響が出ますので、今後の日本銀行の金融政策や住宅ローン金利の動向を今まで以上に注視し、購入プランを立ててください。
株式市場への影響は?
円高や、金融緩和策の修正による先行き不透明感から、多くの企業の株価は下落局面に入る可能性があります。一方で金利が上がれば、貸出金利も上がります。「銀行業界の株」には追い風になるでしょう。実際に日本銀行が修正発表をして以降、銀行業界の株価は大幅に上昇しました。
今後、マイナス金利政策の解除や、増収・増益の決算発表があれば、さらに株価は上昇局面に向かうことも考えられます。「輸出企業の株」も円高はコスト削減になり、収益の改善が期待できます。
今後も「円高」や「長期金利の上昇」などで、株式市場に大きな影響が出てくると考えられており、資産運用をしている人はポートフォリオの見直しが必要になるでしょう。
今後の動向に注意し、柔軟に対応できるよう準備しよう
今回の金融緩和策の修正により、長期金利は一気に0.46%まで上昇、日経平均株価は大幅安、為替市場は急激な円高となり、株式市場や為替市場に大きな影響を与えました。
住宅ローンについては、すでに10年固定金利が0.1%から0.3%ほど引き上げられており、特に新規で住宅購入を検討している人の中には、購入プランに影響が出ている人も多いでしょう。
住宅ローンの金利が大きく変われば、日々の生活の負担アップにも直結するので、今後の金利動向に注意して、プランを再検討する必要があります。今後、住宅ローン金利について、変動・固定いずれの金利もここからさらに上昇するかどうかは予想できません。
もし上がった場合でも「繰上げ返済する」「日頃から貯蓄しておく」など、落ち着いて対応できるよう事前に準備しておきましょう。株式市場は、先行き不透明ではありますが潮目が変わるタイミングかもしれないので、資産運用をしている人はポートフォリオの見直しをしておくとよいでしょう。
出典
日本銀行 当面の金融政策運営について
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種