更新日: 2023.02.09 その他暮らし
【“ボーナス”最高額は「教育、学習支援業」】産業別、就業形態別に賃金を比較【毎月勤労統計調査(22年12月分速報)より】
本記事では額面の名目賃金が前年同月と比べてどのように変化したのか、産業別、就業形態別にみていきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
“ボーナス効果”で総額は前年同月比プラスも、きまって支給する給与の実質はマイナス
厚労省のまとめでは、1人当たり「現金給与総額」は前年同月比4.8%増となる57万2008円でした。このうち「きまって支給する給与」は26万9740円(同1.9%増)、ボーナス等に当たる「特別に支払われた給与」は30万2268円(同7.6%増)でした。
就業形態別では、一般労働者が78万6024円(同5.0%増)、パートタイム労働者が11万4941円(同2.6%増)でした。このうち、「特別に支払われた給与」は一般労働者が43万7045円(同7.6%増)でパートタイム労働者は1万4430円(同10.0%増)でした。
実質賃金は全体では0.1%と、9ヶ月ぶりにプラスに転じましたが、「きまって支給する給与」だけでみるとマイナス2.8%、これをさらに就業形態別にみると、一般労働者がマイナス2.7%、パートタイム労働者がマイナス3.1%となります。
ボーナス支給により実質賃金が上向いた12月特有の状況が明らかになる一方、「きまって支給する給与」の実質賃金は依然マイナスで推移しています。
前年同月比の伸び率トップは「運輸業、郵便業」
現金給与総額の「伸び率」を産業別、就業形態別にまとめたものが図表1です。
【図表1】前年同月と比べた現金給与総額の伸び率(単位=%)
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年12月分結果速報」を基に編集部が作成
産業別の現金給与総額は「運輸業、郵便業」が全産業トップの16.7%、「生活関連サービス業」が11.8%で二桁の伸びとなり、11月のトップだった飲食サービス業を上回る結果となりました。最下位は電気・ガス業でマイナス3.6%の落ち込みとなりました。
さらに、就業形態別にみていくと、一般労働者では「運輸業、郵便業」「飲食サービス業等」「生活関連サービス業」が16%台で4位以下を引き離しています。パートタイム労働者では79.8%の「鉱業、採石業等」が突出していますが、労働者数が少ないため(図表2参照)、全体への影響は限定的です。
一方、伸び率がマイナスだった産業は11月の4産業から2産業に減りました。11月は「教育、学習支援業」「製造業」「卸売業、小売業」「学術研究等」の4産業でしたが、12月は「複合サービス事業」と「電気・ガス業」と顔ぶれが入れ替わっています。
就業形態別にみると、一般労働者では全体と同じ2産業がマイナスですが、パートタイム労働者では「電気・ガス業」はプラスですが、「建設業」(6.1%減)、「複合サービス事業」(4.3%減)、「金融業、小売業」(0.7%減)、「学術研究等」(0.6%減)の4産業がマイナスでした。
労働者総数の多い3産業は低調で推移
各産業の現金給与の変動を踏まえ、実際に金額はいくらでどれほどの人口に分配されているのか、産業別の労働人口とともにまとめたものが図表2です。図表2では、労働者総数の多い順にパートタイム労働者比率、就業形態ごとの「きまって支給する給与」と「特別に支払われた給与」を示しました。
労働者数が700万人を超える産業は「卸売業、小売業」「医療、福祉」「製造業」の3産業です。パートタイム労働者の比率が最高なのは飲食サービス業の78.59%です。11月は「卸売業、小売業」と「製造業」は前年同月比の伸び率がマイナスでしたが、12月は図表1のとおり3産業とも一般労働者、パートタイム労働者ともプラスの伸び率です。しかし、現金給与総額の順位では全産業の中盤以下です。
【図表2】産業・就業形態別にみた月間現金給与総額
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年12月分結果速報」を基に編集部が作成
「教育、学習支援業」の“冬のボーナス”が「電気・ガス業」抜いてトップ
伸び率が4位の「飲食サービス業」は、金額ベースでは最下位であり、パートタイム労働者および一般労働者の「きまって支給する給与」「特別に支払われた給与」の全項目が最下位でした。
また、「伸び率」全産業で最低のマイナス3.6%だった電気・ガス業は、現金給与総額(就業形態計)、一般労働者の「特別に支払われた給与」を除く4項目が首位でした。電気・ガス業の一般労働者の「特別に支払われて給与」を上回ったのは「教育、学習支援業」でした。
光熱費や教育費など物価上昇が家計や補助金行政を圧迫する中、実質賃金の上昇が進むのか、各産業の動向の対策に注目が集まります。
出典
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年12月分結果速報
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部