なぜ北海道のニセコが日本で一番地価上昇率が高いのか?

配信日: 2018.06.16 更新日: 2019.01.07

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なぜ北海道のニセコが日本で一番地価上昇率が高いのか?
みなさんは「ニセコ」という地域を知っていますか?ニセコは北海道の倶知安(くっちゃん)町やニセコ町、そして蘭越町にまたがる山岳丘陵地域の総称です。
 
自治体名称としてのニセコ町と地域総称である「ニセコ」を区分するためにニセコエリアと呼ばれることも多いです(以下、ニセコエリアのことをニセコと記す)。
 
ニセコの中心にあるニセコアンヌプリ山麓には4つの大きなスキー場があり、それぞれ外国人スキーヤーに人気です。その最大の売りは「パウダースノー(粉雪)」。
 
世界でもまれなこの雪質を目当てに、ニセコへの外国人観光客数は2009年に20万人を突破。東日本大震災があった2011年には10万人台に揺り戻したものの、翌年からは30万人台に回復しています。
 
FINANCIAL FIELD編集部

Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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今、このニセコエリアが注目を集めています。

平成30年地下公示の概要によると、日本全国の住宅地の平均変動率が10年ぶりに上昇し、商業地および全用途平均は3年連続で上昇しました。
 
変動率上位順位(全国)では、住宅地、商業地ともに、北海道の倶知安町が1位となっているのです。
 
倶知安町はニセコの中でも観光の中心となっているニセコひらふ地区を擁する町です。
 
今、なぜニセコの地価が上昇しているのでしょうか。その理由について、小樽商科大学 大学院商学研究科の内田純一教授(観光経営学)にお話を伺いました。
 
平成30年地価公示の概要/国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001227285.pdf
 
世界が選ぶニセコ-ニセコ観光圏整備計画-/国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/001049628.pdf
 

もともとオーストラリア人に人気だったニセコ。訪日ブームでアジア資本に

ニセコには多くのオーストラリア人がスキーに来ています。その理由は、パウダースノーと呼ばれるように雪質が良い点と、オーストラリアから距離がさほど遠くなく、時差も少ない点にあります。
 
もともとオーストラリア人は南半球が夏季にあたる時期になると、雪質の良いカナダまでスキーのために足を運ぶことも多かったのですが、2001年の米国同時多発テロの発生などの影響で北米への旅行を避けるようになりました。
 
北海道のニセコなら渡航時間も滞在費もカナダの半分程度ですませることができ、しかも雪質はカナダのウィスラーにもひけを取らないということがオーストラリア人に知れ渡るようになると、スノーリゾートとしてのニセコが好まれるようになりました。
 
その後、訪日ブームで、オーストラリア人だけでなく、多くのアジア人がニセコを訪れるようになりました。
 
そのため、ニセコのホテルやコンドミニアムの資本はオーストラリアだけではなく、香港、シンガポール、マレーシアなどのアジア資本が多くなってきました。
 
また、それまで日本の資本であったスキー場も外資が買収するなどして取得するようになり、現在ニセコアンヌプリにある四大スキー場のうち二つが外資系になっています。
 
そのうちのひとつであるマレーシア資本のYTLコーポレーションは、かつて西武グループが開発したニセコ東山スキー場と、現在はヒルトンにリブランドされたニセコ東山プリンスホテルの建つ「ニセコビレッジ」全体を買収し、2020年にはリッツ・カールトンを開業させる予定です。
 
また、「ニセコHANAZONOリゾート」を運営する香港資本の日本ハーモニー・リゾートは、敷地内にパークハイアットを2019年に開業させる準備をしています。
 

ニセコの地価が上昇する理由。訪日外国人によってゲレンデ周辺の土地が取り合いに

ニセコが他の観光地と違うのは、外国人が不動産を取得しようと動いている点です。
 
それまで国内スキーヤーを対象にしていたペンションやホテルにそのまま外国人スキーヤーが宿泊する形態では飽き足らず、自ら宿泊施設や飲食店・商店を開業しようという動きが活発化していったのです。
 
とりわけニセコひらふ地区の開発は先行して進み、ゲレンデにほど近いひらふ坂やそこから徒歩圏の泉郷というエリアに至る場所にはロングステイ型のコンドミニアムやコテージ風のアパートメントが立ち並んでいます。
 
その様子はさながら「外国人の町」です。
 
ちなみにコンドミニアムは、自分がステイするときは自分が利用し、いないときは誰かに貸し出すという形で所有されています。
 
所有したままでもリターンがあるコンドミニアムは、投資物件としても最適で、値上がり後に売却して利益を出すことも見込まれています。外国人に人気が高い不動産取得スタイルは主にこのコンドミニアムです。
 
しかし、当然ゲレンデの周りに土地がたくさんあるわけではありません。かつてのペンションは外国資本の不動産事業者によってかなりの数がコテージ風のアパートメントに置き換わっています。
 
限られた土地・建物を外国人が取り合うことによって、ニセコの地価は上昇しているのです。
 
ニセコ全体の地価が上がっているわけではありませんが、一部のゲレンデ周辺では開発が止まらず、土地も少なくなってきているために、このような現象が起こっています。
 
また、外国人の住民や長期滞在者が増えたことで生活のための買い物ニーズや外食ニーズが高まり、その結果ゲレンデから遠い倶知安駅付近の地価までが上昇しています。
 
ちなみに平成30年地下公示の変動率1位になったのは、住宅地、商業地とも倶知安駅に近い場所でした(住宅地の2位は泉郷エリア)。
 
ところで、外国人の富裕層が取得するようなニセコの不動産の相場は一体いくらなのでしょうか。
 
今、ニセコでコンドミニアムを一部屋(!)所有しようとしたら、だいたい2億円くらいは必要になると言われています。
 
例えば、2016年12月に東急リゾートサービスが開業させた高級コンドミニアム「綾ニセコ」の場合、最も広い374平方メートルのペントハウスは6億円の売値がつけられましたが、海外の富裕層があっさり購入したようです。
 
ちなみに、このペントハウスに宿泊する場合の料金は冬場の最も高い時期では一泊72万円もするそう。
 

2030年には北海道新幹線が倶知安へ。ニセコの繁栄は続く

2030年度末には北海道新幹線が現在の新函館北斗から、札幌まで延びる予定です。そのとき、倶知安駅にも新幹線が停車予定です。
 
また、高速道路も今は小樽までですが、来年は余市まで延び、2025年度中には倶知安にまで自動車専用道路が開通することになります。
 
これらもニセコが開発されている理由のひとつです。アクセスがしやすくなることで、さらに多くの人がニセコを訪れるようになるのではないでしょうか。
 
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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