【引越しトラブル】非喫煙者なのに「喫煙の形跡があった」とクリーニング代を請求される!?「原状回復」のトラブル事例と予防策を紹介
配信日: 2023.02.24
いったい原状回復トラブルにはどのようなものがあるのか、どのように対策すればいいのかなど、独立行政法人国民生活センターの発表から読み取っていきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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いつか自分の身に降りかかるかも? 原状回復のトラブル事例
決してひとごととはいえない原状回復トラブル。具体的にどのようなトラブルがあるのか、独立行政法人国民生活センターが公表している事例をいくつか見てみましょう。
【10万円超の原状回復費用を請求された】
●家賃5万円
●いわゆるゼロゼロ物件(マンションやアパートを借りる時に支払う敷金・礼金がそれぞれゼロの物件のことです)
●ハウスクリーニング代約5万円、鍵交換代約1万円、クロス修復代約1万円、そしてフローリング修復代約2万円などを含む原状回復費用が合計で10万円を超える請求
契約書にハウスクリーニング代の負担については明記されているものの、エアコンの清掃代は「室内に喫煙の形跡が残っている場合のみ」との記載。しかし、請求されたハウスクリーニング代にはエアコンの清掃代が含まれていたのだとか(契約者は非喫煙者)。
さらにフローリングには入居時にすでに複数のキズがあったというケース。敷金がゼロだったとはいえ、退去時に10万円以上の請求がくるとかなり厳しいものがありますね。
【通常損耗だと思う箇所の修繕費用や、契約書に記載のない費用を請求された】
●家賃約7万円
●敷金22万円
●床の張り替え、建具の塗り替え、畳表替え、クロス塗装、ハウスクリーニングなどの費用総額約19万円を敷金から差し引いて返金
退去前に立ち会いでチェックをし、破損させた箇所もなく、通常消耗の範囲内と考えられるケース。また、契約書には畳の表替えに関しては記載されているものの、ハウスクリーニング費用に関する記載はなかったとのこと。
修繕については、貸主側の負担になるものと、借りた側の負担になるものがあります。ハウスクリーニング費用については「借りた側が全額負担」といった記載が結んだ契約書にない限りは、貸主側と相談して費用負担を見直してもらうのも手です。
【入居時から不具合のあったシャワーヘッドの交換費用を請求された】
●家賃約6万円
●ゼロゼロ物件
●ハウスクリーニング代が約4万円、クロス補修代が約1万円、床補修代として約1万円、そしてシャワーヘッド交換代約1万円の合計約7万円
委託業者に費用の詳細を聞いたところ、「これ以上の詳細は伝えられない」と言われてしまったケース。シャワーヘッドは入居した当初から水漏れしていたものの、特に記録がなかったため根拠なしとして認められなかったのだとか。
これはほんの一例ですが、トラブルになるケースには共通して「なぜこれを自分が負担しないといけないのか納得がいかない」「高額すぎる」といった要素を含んでいることがわかります。
特に入居前からのキズや汚れについては、記録をとっていない限り証明ができないというのももどかしいところですね。
通常、入居時に請求される敷金は、入居者が部屋を汚損したり傷つけたりした場合にあてられるものです。礼金はまさにお礼です。ゼロゼロ物件が生まれる理由は、立地が悪い、築年数が古いなど入居者を集める魅力に欠けるため、入居時の負担を軽くすることで入居者を集めようというものです。
ゼロゼロ物件は、入居時に出費が少ないというメリットもありますが、退去時に原状回復費用がまるごと請求されるため、負担に感じやすいこともありそうです。
若い世代に集中! 原状回復トラブルの相談件数と年代割合
こういった原状回復トラブルの相談はどれくらい発生しているのでしょうか。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)では、以下のようになっているようです。
【PIO-NETにみる原状回復に関する相談の年度別件数(過去3年)】
・2019年:1万2880件
・2020年:1万3364件
・2021年:1万4109件
毎年同程度の相談件数があるようです。ひょっとしたらこのまま増えていくことも考えられそうです。月別の相談件数(2012~2021年度の合計)は、3月と4月がピークとのこと。やはり引っ越しシーズンにあわせて、原状回復トラブルの相談が増えるようです。
ちなみに、原状回復トラブルに遭遇した人の年代割合は以下のとおり。
【原状回復に関する契約当事者の年代割合(2021年度受付分)TOP3】
1位:30代 29.6%
2位:20代 23.5%
3位:40代 19.9%
上位3つは20代~40代という若い世代となりました。賃貸住宅という性質上、利用者も比較的若い世代が中心なのかもしれません。
原状回復でトラブルにならないために
最後に、原状回復でトラブルにならないためにはどのようなことに注意すればいいのかを知っておきましょう。
・契約前に契約書の内容をしっかり確認する
入居時のこと、入居中の内容はもちろん、退去時に何をどれだけ負担する必要があるのかの記載をしっかり確認しておきましょう。契約後に「?」と思う点を見つけても手遅れのため、契約前に不明点を解消しておくことが大切です。
当たり前のことですが、交わした契約書は大事に保管しておくべきですね。部屋を借りてから日時が過ぎると、「あれ? どこにやったっけ」なんて人もいるかもしれません。
・入居時になるべく貸主側と一緒に現在の状況を確認する
退去時に「これは入居前からあったキズ」と主張しても、それを証明するものが残っていないと厳しいもの。そのため、入居時に貸主側と一緒にキズや汚れなどがないか、備品がきちんと動くかなどをチェックしましょう。
そして記録に残しておくことが大切です。キズなどがある場所はもちろん、キズや汚れのないところも写真をしっかり撮っておきましょう。これらの写真や記録は、契約書と一緒にひとつのファイルにまとめておくと便利です。
また住みはじめると意外に備品の不具合などに気がつくこともあります。面倒がらずに貸主に連絡し、そのメモも残しておくようにしたいものです。
「ちょっと面倒」と思われるかも知れませんが、退去時に「言った言わない」でもめる方がより面倒になるはずです。「書いたもの」や「記録」「写真」などを残しておいて、不要なトラブルは防ぎたいものですね。
・入居中のトラブルは必ず貸主側に相談する
気をつけて生活していても、入居中にキズや汚れがついてしまったり備品が壊れたりすることはあります。そんな場合は、自己判断で修繕せず、貸主側にすぐ相談を。勝手に修繕したりすると、これも退去時にトラブルになるもとになります。
いざ退去する時に納得のいかない原状回復費用を請求された時は、貸主側に説明を求めて費用負担について話し合うのがポイント。それでも解決しない場合やトラブルに発展した場合は、消費者生活センターなどに相談するようにしましょう。この場合でも、契約書は当然ですが、記録などが残っていれば、よりスムーズに相談が進むと思われます。
これからの季節は引っ越しシーズン。新しい生活を気持ちよくスタートさせるためにも、原状回復トラブルはできる限り避けたいものですね。
出典
独立行政法人国民生活センター 住みはじめる時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部