更新日: 2023.03.02 その他暮らし
ホストのため固定費を削り…家賃「3万9000円」の告知事項あり物件とは?
本記事では、推しのホストに貢ぐため自ら告知事項あり物件に住んだAさん(21歳)の話をもとに、告知事項あり物件の種類と入居するメリット、デメリットについてまとめています。
執筆者:新川優香(あらかわ ゆうか)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
「告知事項あり」物件は家賃が安い
「推しのホストに振り向いてもらうには、ありったけのお金を貢ぐしかなかったんです」
そう話すAさんは、当時飲食店の従業員として月40万円を稼ぎながらも、そのすべてをお気に入りのホストにつぎ込んでいたと振り返ります。
しかし、ホストにはAさん以外にも複数の女性客がついており、推しのホストを指名するには高額シャンパンを注文して、少しでもホストの気を引く必要があったといいます。
「毎月40万円ほど稼いでいましたが、そのほとんどをホストに使っていたので、生活費に困るようになりました。そこで告知事項ありの家賃3万9000円の物件があると聞き、住むことにしたんです」
Aさんが住むことにした物件は、「隣人が夜中に音楽を大音量で流す」環境的瑕疵のある物件でしたが、夜は基本的に家に居なかったので気にならなかったそうです。Aさんは家賃を抑えられたおかげで、よりホストに貢ぐことができたのです。
極端な例になりますが、告知事項ありの物件は家賃が相場よりも安く、固定費を抑えたい人にとって、メリットになることもあります。しかし注意点もあるので、見ていきましょう。
そもそも「告知事項あり」とは?
告知事項ありに該当するのは、次の項目です。
●心理的瑕疵
●物理的瑕疵
●法的瑕疵
●環境的瑕疵
それぞれ見ていきましょう。
・心理的瑕疵
殺人、自殺、事故など、借りる側が心理的に住みたくないと思うような事実を心理的瑕疵といい、「告知事項あり」と表記されます。事故や事件が対象となり、自然死の場合は日常で起こり得るものとして、告知義務に該当しません。
ただし、自然死の発見が遅れてしまった結果、特殊清掃(原状回復のために消臭・消毒などを行うもの)が必要になった物件は、告知義務があります。
・物理的瑕疵
建物や設備そのものに物理的な欠陥があることを、物理的瑕疵といいます。具体的には、雨漏りやシロアリ被害、水道管の破損や壁のひび割れなどです。物理的瑕疵は、将来的に重大なリスクを被るおそれがあり、長期的に住む物件としてはおすすめできません。
・法的瑕疵
建築基準法や都市計画法などの法律によって、物件の使用方法に制限があることを法的瑕疵といいます。売買物件には大きく関係してきますが、賃貸物件にはあまり関係ありません。
・環境的瑕疵
周辺環境によって暮らしに支障が生じるおそれがあることを、環境的瑕疵といいます。具体的には、周辺に墓地や工場、鉄道や暴力団事務所などがある物件のことです。ただし、環境によるストレスには個人差があるので、不動産会社に聞いたり自分で調べたりしましょう。
告知事項ありの物件に住む場合のデメリット
事件性がなくとも、物件の安全性が長期間見込めないものや、周辺施設による異臭や騒音に耐えられない可能性も考えられます。相場よりも家賃が安くなりやすい点とは別に、精神的な負荷がかかることがあるという点も念頭に置いておきましょう。
告知事項あり物件への入居は慎重に検討を
「告知事項あり」とは、一概に事件や事故が起きた物件とはいえません。しかし、これらの心理的瑕疵以外にも、精神的負荷となる物理的瑕疵、法的瑕疵、環境的瑕疵の計4つの瑕疵があります。家計への負担を抑えたい場合や、瑕疵を気にしない場合でも、十分検討したうえで入居するかどうかを決めましょう。
出典
国土交通省 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
執筆者:新川優香
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士