レジで「お釣り」を多くもらいました。返さないと「詐欺罪」になりますか…?
配信日: 2023.03.03
今回は、レジで多く受け取ってしまった「お釣り」を返さないと、どのような罪になるのかについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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その場で気づいたのに返さなかった場合
レジで「お釣り」を多くもらってしまった際に、もし、その場で気づいたにもかかわらず返さなかったのであれば「詐欺罪」が成立する可能性があります。刑法246条1項には、「人を欺いて財物を引き渡させてはいけない」といった趣旨の記載があります。
また、同条2項には、前項の方法により、財産上不法の利益を得たり、他人に得させたりしてもいけないといった趣旨の記載があり、この点も重要です。店側が客に多く渡してしまった現金は、厳密には「お釣り」とはいえません。本来は店側の財物であり、しかも、店側は客に、その財物を渡す意思はなかったと考えるのが自然です。
店側が誤って財物を渡してしまったにもかかわらず、客がそのまま返さないケースでは「人を欺いて、財産上不法の利益を得た」ことになると解釈できるでしょう。よって、詐欺罪となる可能性があります。
言葉巧みにだまして相手の財産を奪わなければ詐欺罪は成立しない、とは限りません。その場で「お釣り」が多いと気づいたのに黙ったままであれば、告知しないことにより店側を欺き、不作為に現金をだまし取ろうとしたとみなされるケースがあります。結果、詐欺罪が成立する可能性が高いため注意が必要です。
後から気づいたのに返さなかった場合
その場では気づかなかったものの、帰宅後などに「お釣り」が多かったことに気づいた場合はどうでしょう。相手がいる場所では気づかなかったため、詐欺罪が成立する可能性は高くはありません。
しかし「占有離脱物横領罪」が成立する可能性が生じます。いわゆる「遺失物等横領罪」です。刑法254条には、遺失物や漂流物、そのほか占有を離れた他人の物を横領した場合には罰せられるといった趣旨の記載があります。
「お釣り」は店側が客に渡したものですが、店側は必要以上の現金を渡す意思があったとはいえません。本来は店側の所有物であり、それを客がそのまま自分のものとしようという意思が生じた場合は、その時点で「占有離脱物横領罪」が成立する可能性が出てきます。
横領は、他人のものや公共物を不法に自分のものにすることを指す表現です。店側の所有物である「多い分のお釣り」を意図的に返さない行為は、まさに横領に当たるといえるでしょう。
詐欺罪や占有離脱物横領罪の刑罰は?
詐欺罪は「10年以下の懲役」に処されることが刑法によって定められています。罰金による刑罰がないことを考慮しても、非常に重い罪といえるでしょう。一方の占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」に処されることが定められています。詐欺罪よりは軽いものの、犯罪には違いありません。
お釣りが多いと気づいた時点で店側に返さなければ犯罪行為となる
現金で買い物をした際、多く受け取ってしまった「お釣り」。その場で気づいたにもかかわらず店側に返さなければ「詐欺罪」が成立する可能性があります。あとで気づいたのに返さなければ「占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)」が成立する可能性があるでしょう。いずれにしても犯罪です。「お釣り」が正しい金額より多いと気づいたら、すぐに店側に申し出た上で差額分は返しましょう!
出典
e-Gov 刑法 第246条、第254条
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部